第6話 レベル0のスキルを使おう

母上からの許可が出たよ。


レベル0のスキルは、自分もみんなも危険がない。

ということでひとつずつ、練習してみる。


顔を洗う桶に向かって


【パラレル】【常温水】 


じょばじょば。


出た~。出たよ。うれしいよ。 

感慨に耽りながら、1,2、3、4と60まで数える。


数える練習にもなる。

レベル0の時は5リットル/1分 

ステータスボードを開いてカウントに合わせて声を出す。


役に立つ場面があるかな?

朝顔を洗う時

食事のあと、歯を磨く時

剣のお稽古のあと、汗をかいたあとにも使えるかな?

寒い日だとシャワー代わりには無理かな。


重たい水袋を持たなくてもいいから便利だよね。

森の中を冒険する自分を想像する。楽しい。



【そよ風】


音は出ない。

色も見えない。


自分に向けてみた。

髪の毛がふわ~となるね。 

首にかけていた手拭の端がはたはたと揺れている。


風速 5メートル/1秒 


なるほど これはスライムやゴブリンは倒せないな。

濡れた髪が乾かないかな。

干してあるシーツを乾かせられるかな。


魔獣図鑑の最弱のカテゴリーのページを思い浮かべ、自分の目を天井に向け妄想。



【プロテス】


目の前の柱に 頭をぶつけてみた。


ゴツン。 痛っ。


不意打ちでぶつけた時よりは、かなりましかも。

でもこれ、オークに殴られる自分を想像した。死ねる。


うっかり転んでしまう時

すぐに発動できるかな?


スキルの効果が目、体、色とかでイメージできるようになったら

心の中でスキル名を念じるだけで発動するようだ。母上談。


《プロテス》


目の前の柱に 頭をぶつけてみた。


ゴツン。 うわ 痛っ。 当社比2倍。


発動しなかったようだ。 失敗しても楽しい。



【3D地図】


掌がオレンジ色に一瞬光った。

体内の魔力を瞬間的に高出力にしたときのエフェクトらしい。


ステータスボードに部屋の地図が立体的に描かれている。


これベッドの上で飛び跳ねたときに見える景色に似ている。

レベルが上がってもっと広い地図がみえたらダンジョンで使うのかな?


地図ばかり見ていたら、うしろから一角ウサギに突撃される自分。

そんなシーンを想像した。 『プロテス』と組み合わせが必要だよね。


安全確保。冒険の基本。とても大事。


保存機能があるようだ。

屋敷や敷地の地図が作れそうだ。 うん。楽しみだ。



【回転】


桶にたまった水に向かって、【回転】を使ってみた。

ぐるぐる渦が巻き始めた。 見ているだけで楽しい。


洗濯に使えないかな?


【回転】【ヘイスト】


ぐるぐるが早くなった。

桶の端から、水が飛び散った。 あわわ。



【スロー】


世界がゆっくりに見えたけど、飛び散る水は止められなかった。


なるほど。

雑巾がけしたほうが早いな。 これ。


見つかる前に、拭いておこう。


ふきふき。ふきふき。


水を絞って、雑巾を広げて、桶のふちにかけた。


そよ風で乾かせないかな?



【そよ風】


雑巾は、桶の中に舞い、沈んだ。


あらら。


冒険中だったら、大惨事だ。


今日の『冒険日記』に書いておこう。 

僕の冒険は、今日から始まったんだ。



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