第4話 はじめてのステータス・オープン

翌朝 


「朝食が終わったら、みんなレオナルドの部屋に移動して」


母上が、朝食の席に着いた全員に確認をとるように声をかけた。


公爵家の朝食は、いつものメンバーだ。

母上と僕。茜さんとアオイちゃん。七海さんとルナちゃん、ヒナタちゃんだ。

今朝は、賢太さんも一緒だ。


僕の部屋で話をする。または、僕をレオナルドと呼んだ時。

これは、使用人たちに聞かせたくない話をするときの合言葉のようなもの。


3家族間の秘密話の共有作業あり。



この屋敷の個人の部屋では、僕の部屋が一番広い、らしい。

公爵家の跡継ぎで、同居3人の女の子との婚約が予定ではなく、確定だから。

賢太さんからそんな説明を聞いたことがある。


この屋敷は大きい。全体でどれくらいの部屋があるのか、僕はまだ知らない。

使用人がどれくらいいるかも知らない。


この国では公爵家は通常、城のような家に住むらしい。

しかも公爵が4人、3家族8人が住んでいる。


父上ふたりはカウントされたことがない。


「一緒に住むなら3倍で。」

国王様が云った。とか、これも賢太さん情報だ。



僕の部屋


入口に子ども部屋、左側にトイレ。その隣にシャワールーム。さらに顔を洗う部屋。

右側に応接セットのある部屋。10人くらい座れる。テーブルはかなり広い。

服がたくさんある部屋。数えたことがない。あまり入らないから。

ベッドルーム。窓際にテーブルとイス。一人用。一人の時はほとんどここ。読書用。

あとは勉強部屋。8人くらい座れそう。本棚がたくさん。本はあまりない。


みんな集まったよ。 


いつも集まるベッドルームではなく、一番広い応接室だ。

ソファーに各々が座る。


「それで、今朝はどんなニュースなんだい?」


賢太さんが母上に問う。



「実は昨晩、


――――こんなことがあったの。」


母上が、魔力の絆の話を―みんなの理解を確認しながら―説明を終えた。


賢太さんはあごに指をあてて黙っている。

茜さんは足を組み替えた。

七海さんは双子ちゃんに視線を送っている。


いつもは元気な――誰かの口が必ず開いている――子どもたちの顔は、僕と母上と自分の親の間を行ったり来たりしている。



「まずは、ひとつずつクリアしていきましょう。」

母上が、僕を膝に乗せた。


「レオ君、私の真似をしてみてね。」

「はい」


「ステータス、オープン」

「ステータス、オープン」


縦30㎝横50㎝くらいの半透明のが目の前に現れた。


「レオ君、読むのはあとでね。みんな見えている?」


母上には、見えているようだ。 

他のみんなは首を横に振っている。

魔力の絆のおかげかな? 母上だけ見えるのは。



「パーティ登録してみよう。レオ君、右上の(公開/詳細/共有)共有を開いて」


インストールが完了したからなのか、使い方が理解できる自分に驚いた。

母上の声で、視線を動かすと、画面がスライドした。


「パーティ申請を送る。(はい/いいえ)はい、を選んでね。」


部屋にいる全員の『名前と顔』がある。

『全員を選択して申請を送る』を見た。


すごいな。承認待ちです。と表示された。


刹那 画面が切り替わった。

母上、賢太さん夫婦。茜さんは承認済み。

パーティに参加済み。と表示された。


アオイちゃん、双子ちゃんは、

『申請相手のパーティ参加権限が満たされていません』

『未承認理由:ステータス未取得』


落胆している。すごく残念そうに見える。少しの同情を感じた。

でも、彼女たちならすぐだよね。根拠のない信頼感が勝っている。頑張って。





「よし、私からみんなにみっつ提案があります」

母上がみんなの反応を待たずに、声をかけた。今度は柔らかい笑顔で。悪い顔。


ひとつめは、僕の予想が当たった。

「それでね。茜はアオイちゃんに魔力循環をしてみて。賢太はルナちゃんに。七海はヒナタちゃんに。うん。たぶん1~2年でいける。はず。うんうん。」


ふたつ目は、

「あなたたちの子どもにステータスが現れたら教えてね、早い子順に毎晩、レオと魔力循環してみよう。うん。レオもそのつもりでね。」


驚きの提案だ。


子どもたちの目が見開いた。我こそ一番乗りだと。落胆ぶりがぶっ飛んだ。早っ。

親の目は、ジト目に近いかな。口角が上がっている。自信あり。という感じ。


みっつめ。

「信頼できる子どもの使用人を8人~10人くらい。レオ専属。手配するわ。手伝って。これは、商業ギルドね。レオが依頼人。私たち大人が探す。以上」


母上が珍しく興奮した口調、思い付きのまま口にしたようにみえる。個人の感想だ。

貴族にあるまじき、うかつさ。誰か『ツッコむ』かな? などと考えていた僕。



大人たちはうなずいた。話が早いな、この人たち。

子どもたちは、僕と遊ぼうか、親たちとさっそく魔力循環を始めるか。

葛藤しているようだ。これも珍しい。


この子たちの表情は見ているだけでほっこりする。とても可愛い。

早く魔力循環、自分から流せるようになりたい。強い決意、うん、頑張る。





「では、解散。さあ、レオ。今日から正式に『師匠』と呼びなさい」



「イエッサー。マム」


僕は大げさに敬礼した。










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