第4話 はじめてのステータス・オープン
翌朝
「朝食が終わったら、みんなレオナルドの部屋に移動して」
母上が、朝食の席に着いた全員に確認をとるように声をかけた。
公爵家の朝食は、いつものメンバーだ。
母上と僕。茜さんとアオイちゃん。七海さんとルナちゃん、ヒナタちゃんだ。
今朝は、賢太さんも一緒だ。
僕の部屋で話をする。または、僕をレオナルドと呼んだ時。
これは、使用人たちに聞かせたくない話をするときの合言葉のようなもの。
3家族間の秘密話の共有作業あり。
この屋敷の個人の部屋では、僕の部屋が一番広い、らしい。
公爵家の跡継ぎで、同居3人の女の子との婚約が予定ではなく、確定だから。
賢太さんからそんな説明を聞いたことがある。
この屋敷は大きい。全体でどれくらいの部屋があるのか、僕はまだ知らない。
使用人がどれくらいいるかも知らない。
この国では公爵家は通常、城のような家に住むらしい。
しかも公爵が4人、3家族8人が住んでいる。
父上ふたりはカウントされたことがない。
「一緒に住むなら3倍で。」
国王様が云った。とか、これも賢太さん情報だ。
◇
僕の部屋
入口に子ども部屋、左側にトイレ。その隣にシャワールーム。さらに顔を洗う部屋。
右側に応接セットのある部屋。10人くらい座れる。テーブルはかなり広い。
服がたくさんある部屋。数えたことがない。あまり入らないから。
ベッドルーム。窓際にテーブルとイス。一人用。一人の時はほとんどここ。読書用。
あとは勉強部屋。8人くらい座れそう。本棚がたくさん。本はあまりない。
みんな集まったよ。
いつも集まるベッドルームではなく、一番広い応接室だ。
ソファーに各々が座る。
「それで、今朝はどんなニュースなんだい?」
賢太さんが母上に問う。
「実は昨晩、
――――こんなことがあったの。」
母上が、魔力の絆の話を―みんなの理解を確認しながら―説明を終えた。
賢太さんはあごに指をあてて黙っている。
茜さんは足を組み替えた。
七海さんは双子ちゃんに視線を送っている。
いつもは元気な――誰かの口が必ず開いている――子どもたちの顔は、僕と母上と自分の親の間を行ったり来たりしている。
「まずは、ひとつずつクリアしていきましょう。」
母上が、僕を膝に乗せた。
「レオ君、私の真似をしてみてね。」
「はい」
「ステータス、オープン」
「ステータス、オープン」
縦30㎝横50㎝くらいの半透明のなにかが目の前に現れた。
「レオ君、読むのはあとでね。みんな見えている?」
母上には、見えているようだ。
他のみんなは首を横に振っている。
魔力の絆のおかげかな? 母上だけ見えるのは。
「パーティ登録してみよう。レオ君、右上の(公開/詳細/共有)共有を開いて」
インストールが完了したからなのか、使い方が理解できる自分に驚いた。
母上の声で、視線を動かすと、画面がスライドした。
「パーティ申請を送る。(はい/いいえ)はい、を選んでね。」
部屋にいる全員の『名前と顔』がある。
『全員を選択して申請を送る』を見た。
すごいな。承認待ちです。と表示された。
刹那 画面が切り替わった。
母上、賢太さん夫婦。茜さんは承認済み。
パーティに参加済み。と表示された。
アオイちゃん、双子ちゃんは、
『申請相手のパーティ参加権限が満たされていません』
『未承認理由:ステータス未取得』
落胆している。すごく残念そうに見える。少しの同情を感じた。
でも、彼女たちならすぐだよね。根拠のない信頼感が勝っている。頑張って。
◇
「よし、私からみんなにみっつ提案があります」
母上がみんなの反応を待たずに、声をかけた。今度は柔らかい笑顔で。悪い顔。
ひとつめは、僕の予想が当たった。
「それでね。茜はアオイちゃんに魔力循環をしてみて。賢太はルナちゃんに。七海はヒナタちゃんに。うん。たぶん1~2年でいける。はず。うんうん。」
ふたつ目は、
「あなたたちの子どもにステータスが現れたら教えてね、早い子順に毎晩、レオと魔力循環してみよう。うん。レオもそのつもりでね。」
驚きの提案だ。
子どもたちの目が見開いた。我こそ一番乗りだと。落胆ぶりがぶっ飛んだ。早っ。
親の目は、ジト目に近いかな。口角が上がっている。自信あり。という感じ。
みっつめ。
「信頼できる子どもの使用人を8人~10人くらい。レオ専属。手配するわ。手伝って。これは、商業ギルドね。レオが依頼人。私たち大人が探す。以上」
母上が珍しく興奮した口調、思い付きのまま口にしたようにみえる。個人の感想だ。
貴族にあるまじき、うかつさ。誰か『ツッコむ』かな? などと考えていた僕。
大人たちはうなずいた。話が早いな、この人たち。
子どもたちは、僕と遊ぼうか、親たちとさっそく魔力循環を始めるか。
葛藤しているようだ。これも珍しい。
この子たちの表情は見ているだけでほっこりする。とても可愛い。
早く魔力循環、自分から流せるようになりたい。強い決意、うん、頑張る。
◇
「では、解散。さあ、レオ。今日から正式に『師匠』と呼びなさい」
「イエッサー。マム」
僕は大げさに敬礼した。
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