夏場から始まった訓練も、秋中頃には終盤へと差し掛かっていた。この頃になると寒さも徐々に増してくる。各自が訓練の合間に実践を兼ねて獲物を捕り備蓄し、その食料で来春まで巣穴で過ごさなければならない。

他の仲間も越冬のための準備に余念がなかった。それと合わせ外敵や菊地らの攻撃に備え、攻撃策の検討や防御策検討に熱を帯びていた。結局、菊地らへの弔い合戦は、来年の春に行なうことで仲間内の了解事項となった。

冬場の時期に、これまで集めた彼らの情報を分析し、対応策を立てることとした。だが、持ち寄る情報で策定することは生易しくない。菊地の弱点は把握できても、平松を中心に進める軍力の強化は、日増しに強くなるばかりだったからだ。

果たして我らの戦力で、平松の軍隊を打ち破ることが出来るのか。奴らが攻めてきた時、防御出来るのか?

真正面から戦うのであれば、勝てると俊介は踏んだ。

冷酷無比な菊地らだ、正攻法で挑んでくるとは思えない。むしろ奇襲、謀略策で攻められでもしたら、にわか仕立ての我が軍では勝てる自信がない。そのためには奇襲を駆けられる前に菊地軍の統制を崩し、一気に畳み込み倒す。戦いが長引けば百戦錬磨の奴らに反撃を喰らう。これもまともな攻撃であれば耐え得るかもしれないが、横から攻められたら一度も実戦経験のない國分らでは脆く、打ち破られるだろう。

それでは、どのように戦略を立て戦力を組み臨むか。よしんば、もし菊地らが先に攻め来たとしたら如何対処すべきか。両面から綿密に計画していかなければならない。いずれにしても、互いに冬場の戦いは避けたいところだ。されば年明け春先、三月頃に戦いの火蓋を切ることになるやもしれぬ。それまでに仮想訓練をすませ、国分ら全員に習得させておかなければならない。ただ気がかりなのは、実戦が未経験なことだ。それでも統制が取れている間は攻撃力は弱まらない。けれど奴らの奇襲によりそれが崩れた時、戦力は半分以下に落ちる。一旦そうなれば、実戦経験のなさが致命傷になるのだ。

こればかりは、現状では如何にも解決出来ない我が軍の弱点だった。

万が一、菊地軍の平松にこの弱点が漏れれば、それは致命傷になりかねない。それでは悟られぬようにするには、如何したらよいのか…。

俊介にとって、冬場での戦略練りは更に重要性が増すと思えた。その時期に久美子のことで翻弄され、戦略作りが疎かになることがどれだけ危険なことか、十分心得ていたのである。

やがて、巣穴近くの木々の葉が色づく頃には、寒い冬の足音が近くに感じられるようになった。近いうちに長い冬がやってくる。そして木枯らしの吹く頃には、俊介らの巣穴仲間すべてが地上から姿を消して行くのだ。

ところが、そんなある日のこと。

冷たい風が吹きつける野原を、弱々しく獲物を探し回る働き蟻がいた。食料の確保を怠っていた菊地らの仲間である。彼らとて冬場は巣穴に篭もり生活をしなければ生きて行けない。

それが、強権で命じられていた食料備蓄が完了せず、そのことが耳に入った時騒動が持ち上がった。食料係が菊地の下に呼ばれ、拷問に遭い殺されてしまった。彼の逆鱗に触れたのだ。

今、ふらふらと弱った蟻が息絶え絶えに歩いているのは、獲物獲得の命令を受けた働き蟻だった。当然、仲田も呼ばれ平松も菊地の下へと呼び出された。現状の食糧備蓄では来年の春までに尽きてしまう。その対応策を求められていたのだ。激しい叱責の中、結局何の有効策も打てず、菊地を納得させることが出来なかった。挙句の果て、罵声と鉄拳を受け、如何にもならぬところまで追い詰められていた。

菊地から出された命令は、次のようなものである。

一つは、限られた食料でこの冬を越すために、弱き仲間を少なくすること。すなわち巣穴から追い出すことだ。それは獲物を捕りに、即出掛けさせることである。当然、下知された蟻たちは死への旅立ちとなる。もう一つの選択技は、兼ねてからせっつかれていた俊介たちへの奇襲攻撃により、備蓄食料を奪い取ることであった。

菊地曰く。

「どちらかによって、絶対君主であるわしの命を守れ」との下知である。

その回答を明日中に持って来いと、平松らに命じていたのである。平松は直感的に感じた。

とうとう、来るところまで来たか…、と。

当然、反論の余地など与えられない。

「は、はっ。賜りましてございます。将軍様!」

二人が深々と頭を下げ引き下がろうとした時、呼び止める。

「平松だけ残れ。後の者は即刻獲物探しに出立させろ!」

目を吊り上げ怒鳴った。

「へっ、へへいっ!」

皆頭を垂れ、後退りし霧散するように消えて行った。平松は頭を下げじっとしていた。

「うっほん!」

咳払いして、おもむろに菊地が喋り出す。

「平松、如何する心算だ。お前の首がかかっているのだぞ。追い出し組みに入るか、それとも俊介の巣穴を攻め、貴奴らを血祭りに上げ備蓄食料を奪い取るか。申してみよ!」

「は、はい。私めは…、決めかねております。いや、私の命はすでに将軍様にお預けしております。ご命令を頂きますれば、どのようにでも行動致します」

頭を下げたまま、そのように答えた。

「うむ、なかなか狡賢いことを言うな、平松。そのように答えれば、お前を外すとでも思っているのか」

「いいえ、大意はございません。私めは将軍様のご命令に従うだけでございます」

「そうか、そこまで言うか。それなればわしの言うことが分かっているわけだな。分かった。いずれにしても、明日までじっくりと考えて来い。それから意見を聞こうじゃないか。のう、平松…」

「は、はっ。かしこまりましたす!それでは、私めはこれにて失礼致します…」

「待て平松。そう急ぐこともあるまい。ところでだ。お前が差し出した万里子。なかなかいい味を出しておるぞ。近頃はめっきり女らしくなってな、色気もたっぷりだ」

「それでだ、平松。また生娘を連れて来い。それも初々しいのをな。万里子のように、また、甚振り女にして行くために必要なんだ。如何だ心当たりは…。ないことはないな。分かっておろう、平松。これも明日までに連れて来い、分かったな」

「ええっ…」

「何を馬鹿なことを言っている」と洩れそうになるが、ぐっと飲み込んだ。そして、それには触れず挨拶し下がる。

「…それでは将軍様、失礼致します」

その場から苦虫を噛み殺す表情で姿を消した。

その夜、まんじりともせず考え込む。迷った挙句、意を決しすくっと立ち上がった。その時、一つの秘策を心に秘めていた。

「これ以上の理不尽は許せん。ここまで俺を追い詰めたのは、自ら種を蒔いた貴奴だ。やむ負えまい…」

鋭く呟いた。そして、真一文字に口を結び、巣穴の一角を睨みつけた。

そうとも知らず菊地は、自らの権力を誇示し、己が部下に発した言葉に酔い自己満足に陥っていた。

わしに逆らい、逆鱗に触れたら如何なるか、奴らは身体に染みついておろう。恐怖心となってな。それ故わしの命令に逆う者はいない。すべて言いなりだ。如何にでもなる。まあ、平松も明日までには結論を持て来よう。それもわしの意に沿う生娘もな。それまでゆっくり待とうか。さすれば越冬用の食料も確保出来るし、また抱けるというものだ。うむ、うむ、これでよい。

満足気に頷き、平松の陰謀など露知らず、万里子相手に酒乱に酔いしれた。

瞬く間に、翌日の遅い朝が来た。

菊地は昨夜の酔いから抜け切れずにいた。それでもむっくりと起き、平松の来るのを待つ。

うむ、奴め。どんな結論を持ってくるか楽しみだ。まあ、わしの意に背くことはせんだろうが。それにしても、頼んだ生娘の方は如何かのう。越冬のための食料など力ずくで奪えば、それでこと足りる。だがもう一方は、この冬一番の楽しみだからな。

どんな娘を連れてくることやら。考えただけで下半身がむずむずしてくるぞ。それにしてもわしのこれは元気だな。昨夜あれだけ万里子を弄んだのに。

にやつき、一物をぎゅっと握り締めた。

菊地は、平松の来るのを憮然として待つ。

「うむ、遅いな。平松の奴、何をやっている。早く来んか!」

痺れを切らすそこへ、ひょこんと仲田が顔を出す。

「将軍様、ご無沙汰しております」

「何だ、急に。お前が来るなんて、何事だ!」

期待外れの如く、不機嫌な口調で怒鳴った。

「はい、実は耳寄りな話がございまして、参上させて頂きました」

もったい振りし、己を売り込むネタを携える素振りで得意気に告げた。すると、怪訝な顔になる。

「何だ。またお前のことだ。ろくでもない情報を持って来たのではあるまいな…」

「いいえ、滅相もございません。今日に限って、そのようなことはございません」

へつらうように頭を下げた。すると、多少興味湧く目となる。

「して、どんな情報か!」

「はっ、はい。実は、いい女が見つかりましたので将軍様がお気に召すのではと、いち早くご報告に馳せ参じたのでございます。すこぶるべっぴんで、身体の方も抜群で申し分ございません」

すると、鼻の下を長くする。

「うむ、わしに女とな…。そうか、そうか。それで何処におる、その生娘は?」

「は、はい。本日は連れてはおりません。とりあえず、ご一報をお耳にと存じまして」

「な、なんだと、連れて来ないだと。報告だけとな。何を戯げたことをほざいておる、この馬鹿者!」

期待が外れ、烈火の如く雷を落とした。

「うへえっ、申し訳ありません!」

地面に頭を擦りつけ謝った。

「この阿呆が!とっとと連れて来んか。何がべっぴんだ。このど阿呆。そんな情報など如何でもよい。貢ぎ物なら持って来て言うもんだ。間抜けめ!」

平伏す仲田に、容赦なく罵声が飛んだ。更に激高する。

「何をぐずぐずそこにおる。とっとと行かんか。直ぐに連れて来い!」

「は、はい。申し訳ございません!」

後退りして、「ひっ!」と発し、飛び跳ね消え去った。

「何だ、あの阿呆が。調子のいいことを抜かしおって、まったくろくでもない奴だ。仲田の馬鹿は…。生娘二人を抱けるかと期待し、損したわい。ああ、忌々しい。仲田の奴め、今度来てくだらんことほざいたら、ただではすまさぬ。痛い目に遭わせてやる」

ぶつぶつと呟いた。そして、不機嫌になる。

それにしても、平松の奴は遅いな。一体何をしておるのだ、早く来んか!どいつもこいつもぐずぐずしおって。わしを舐めているんか。甘やかすと図に乗りおって、少し灸を据えてやるか。そうでもしないと直らん。

それこそこんな時は、痛い目に合わせるのが一番だ。わしの怖さを身体に染み込ませんと、何をしでかすか分からんからな。絶対的存在と意識づけさせ忠誠心を持たすには、恐怖心を抱かせるに限るわい。

更に陰鬱な目つきとなる。

そのために無理難題を押しつける。それを達せない者は見せしめに処罰する。それが怖くて、遮二無二従うのだ。仲田にしても痛い目に合いたくないし、死にたくはねえだろうからな。平松が音頭とりして、俊介打倒の策を練り上げてくるだろうて。

端からそうなると分かっているから、もう一つ宿題を出したまでのこと。むしろ、そっちの方がわしにとって何倍も待ち遠しいわい。万里子の時のように、女へと調教して行く楽しみは応えられないからな。早う取り掛かりたいものよの。うふふふ…。

陰な含み笑いが出ていた。

それにしても、平松は遅いな。そうか、奴のことだ。わしの思惑を見抜いておるな。少々焦らそうという魂胆か。奴はなかなかの切れ者だ。こと女のことは、あまりすんなりと貢がれたんでは楽しみが半減する。むしろ焦らされた方が、情欲が増しむしゃぶりつきたくなるものだ。これがまたたまらん。奴が遅らせるのも、それを計算してのことか。

勝手な妄想に耽るが、徐々に苛立ち始める。

それにしても遅いぞ。早く来いんかい。わしの息子も、ほれこのようにいきり立っているではないか。まったく何をしておる。焦らすのも程があるぞ。

こめかみを引き攣らせていた。

そうこうしているうちに、平松がやっと来た。

「将軍様、遅くなりましてございます」

挨拶を制し、待ち兼ねたように強請る。

「おお、平松か。遅かったではないか、待っていたぞ。…して、生娘の方は如何した。どこにおる。早く出さんか!」

「は、ははっ。それよりも昨日頂きました宿題につきまして、ご報告させて頂きます」

「あいや待て。それは後でよい。それより生娘が先じゃ。お前も分かっておろう、そう焦らすでない。早く召し出さんか!」

「お言葉ではございますが、我が菊地軍にとりまして、越冬に関する議題が最も重要であり、結論を急がねばなりません。それ故、こちらを優先させて頂きます」

「うう、分かった。そう厳しく言うな。分かったから、早く説明せい。出来るだけ手短にな。そして、もうひとつの宿題を召し出すのだぞ。待ち切れんからの…」

「はっ、それでは述べさせて頂きます。軍力から考えますと…赫々云々。越冬のために要員を削減することは、絶対にあってはならないことだと考えます」

「分かった。そう、長ったらしい理屈は如何でもよい。早く結論を言わんか!」

「将軍、ある情報によりますと、俊介らは密かに軍力を整えつつあるようでございます。奴らをあなどり兵力を削減し、万が一攻められたら致命傷になりかねません。それに何時攻めてくるやも知れず。もしかしたら、明日にでも…」

「何と、平松。今、何と言った。俊介らが攻め込んで来るのか!」

「いいえ、まだそうと決まってはおりません。そのようになった時と申したまでのことでございます」

「それは、如何いうことだ…」

「実のところ、定かではありませんが弔い合戦とか掲げ、野口らの仇を取るとかで軍力を備えつつあるということです」

「何っ、仇を取る?如何いうことだ!」

「将軍様、覚えはございませんか?野口とかいう雑兵を」

「うむ、野口…。そんな奴、わしは知らんな」

「さようでございますか。記憶にございませんか」

「ううん、待てよ、そうか奴だ。この前、わしに逆らい死んだ馬鹿な野郎だ」

「さようです。将軍様が手にかけましたあの雑兵めでございます」

「何、その野口の敵討ちに…、我らに攻め入るとでもいうのか。こしゃくな奴らだ。そんなへなちょこ野郎らなど蹴散らし、返り討ちにしてくれるわ!」

青筋立て息巻く。

「まだ、確かな情報とはいえませんが、如何も俊介が部下をたぶらかしているようで。そんな噂がありまして…」

平松の挑発に、目玉を引き攣らす。

「俊介め、またも画策しておるな。奴が煽り立てているのか。わしに立ち向かおうなどと、貴奴が唆さなければ出来るわけがない。奴が張本人だ。わしに歯向かうなど、とんでもない野郎だ。血祭りに挙げてやるわ。おい、平松。如何だ、如何する心算だ!」

「将軍、そこで我々は一週間後に一斉攻撃を仕掛ける計画でございます。従ってそれにより奴らを殲滅させ、そのついでにこの冬の越冬食料を確保します」

「何を、そんな暢気なことを言っておる。今直ぐにでも出撃せんか。あんなへなちょこ野郎どもなど、一挙で捻り潰してしまえ!」

「あいや暫らく、俊介を侮ってはなりません。奴らは弔い合戦などと一致団結し、相当士気が上がっております。そう簡単に倒せるものではありません。そのため充分な戦力を整え、攻撃しなければ不覚をとります。そのために一週間程の時間が必要なのです。その日まで将軍、充分気を引き締め備えて頂きたいのです。女どころの話ではありません」

「そちらの方は、奴らを倒してからでも遅くはございません。戦利品として連れてきた女どもから選べばよいではないですか」

「平松、ちょっと待て。もしや、わしから女を取り上げるというのか?」

「いいえ、そのようなことは申しておりません。今が重要な時期なのです。我が軍においても、俊介らに優る士気を高める必要があるのです。そのためには、少しの時間我慢をして貰い、攻撃時には将軍自ら先頭に立ち戦意を高めて頂かなければなりません」

「何と、わしが前面に出ろとな。ま、待て、平松。わしはこの巣穴で一番偉いのだぞ。そのわしを敵前に晒すと申すのか。そんな必要はない。そんなことをしなくても、お前が軍を統率して奴らを蹴散らせばよいではないか。先頭に立つなど、とんでもない…」

「いいか、平松。命ずる。お前が先頭に立ち、我が軍を奮い立たせ奴らを壊滅させるのだ。分かったな。まあ、今日とは言わぬ。お前の言うように一週間だけ待ってやる。必ず俊介らを叩きのめし、食料を奪い取って来い。分かったな!」

「はっ、承知致しました。それではこれから、その準備に入らせて頂きます。取り急ぎ失礼致します」

一礼して踵を返そうとした。が、菊地が呼び止める。

「平松、ちょっと待て。それでだ、俊介らを攻撃する時若い女子供は殺すな。捕虜にして連れて来い。わしへの戦利品として献上するのだ。分かったな、頼むぞ。それまで万里子で我慢しているから。忘れるでないぞ」

「…」

平松は無言で頭を下げ、あることを秘めその場から立ち去った。後姿を見送る菊地が嘆く。

「しかし参ったぞ。俊介らがわしに歯向かうなどと、平松が抜かしたが…。それも強力な軍事力を備えつつあるとは。如何する奴らが攻めてきたら。頼むぞ平松、蹴散らしてくれ。そしてわしを守るのだ」

己に都合よく解し、恩を売るように口走る。

「そのために、我が軍の分隊長に任命しておるんだ。何がなんでも奴らをやっつけてくれ。一週間後にはな。そうでないと、おちおち女と戯れていられなくなる。それにしても俊介の奴め、我らが攻めると思ってはいまい。まあ、普通なら来年の春になり新芽が吹き出る頃に戦うのが常識だからな。一週間後とはいえ、今攻められたら慌てふためくだろうて。ここで一気に叩き潰してくれる」

「それまでおとなしく待つとするか。あんな腰抜けらなど、平松が上手く片づけてくれるわい。さすれば奪い取った生娘と食料で、越冬期間は充分楽しめるわい…」

にやけ顔で口走ったが、ふと脳裏を駆ける。

しかし、平松の奴。わしに軍勢の先頭に立てなどと偉そうにほざきおって、何たる態度だ。ちょっと甘やかすと、直ぐにつけあがる。今度来た時は雷を落としておくか。灸をすえなきゃ分かるまいて。それにしても生娘というのはいいものよの…。

直ぐにまた思い直してにやけ出し、密かな企みを持つ平松の態度など忘れた。安心しきっていたのである。

それ故、立ち去った平松の秘策が何であるか、まったく知ることなく暢気に構えていた。後になり、己の命の灯火が激しく揺れ動くことなど、予想だにしていなかったのだ。



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