五
菊地との約束日がやってきた。と言っても翌朝だが。
昨日から池田や国分らと周到に策を練り、貢物も準備した。とにかくこの晩秋の季節では、仲間にとって大切な越冬用の備蓄食料から工面して貰ったものだ。結局、今回の対応は、俊介とも相談したが考えは同じだった。そう思うと野口は、受けた暴行の痛みを新たに感じていた。一夜の中仲間に感謝すると同時に、改めて菊地に対する憤りを感じ、まんじりともせず朝を迎えた。
約束を反故にすれば、奴は何をしでかすか分からない。それを阻止するには、まず要求された獲物を持っていかざろうえない。それとて、これで終わる保証はないのだ。更に無理難題を押し付けてくるやもしれぬ。そのことは俊介さんも言っていた。昨日の今日では奴を説得する時間もない。これからこの後の策を考えるにしろ、とりあえず時間を稼げとのことだった。
野口自身も思っていた。
俺もそうしよう…。まずは我慢だ。
そう決心する。そして、
奴に服従するかのように見せかけ油断させる。次の要求に対しても、少し時間をくれと引き延ばす。殴られるかもしれない。逆らう者は容赦しないと、徹底的に暴行を振るう可能性もある。それは充分有り得る。…ただ、要求通り持っていけば、奴にとり絶好の貢ぎ者と映るだろう。その俺を殺せば元も子もなくなる。無に帰するからだ。そのため半殺しに合わせ、更に強い恐怖心を与え、屈服させるよう仕向けるはずだ。
そこがポイントだと俊介さんが言っていた。と、野口は回想する。
だから次の要求を素直に受けるのではなく、出来るだけ時間を稼ぐ。勿論、その引き伸ばし方も細心の注意を払う。さもないと直情型の奴だ。本当に殺られるかもしれないから。この作戦も俊介さんの塾考した策が入っている。奴は昨日の要求とて、俺には無理だろうと考えているはずだ。常識的にも、僅か一日で集められる量ではない。それを分かっていて、過酷な要求をしているのだ。そして、我らの仲間にも難題さを見せつけ恐怖心を煽ろうとしている。
要求以下の獲物を持って行き、激怒し暴力を受ければ命を落としそれで終わる。何とか命を繋いでも徹底的に恐怖心を煽り、絶対的服従心を持たせ脅迫する。いずれ命を落とすまでこき使われる。そう計算しての脅かしだ。その第一弾が、今日の約束期限となる。
奴はそこまで考え俺や池田に暴力を振い、力を持って屈服させようとしているのだ。池田は気を失ったが、奴は殺したと思っている。そこはやり過ぎたと考えているだろう。それでは元も子もなくなるからだ。そこで見せしめとして、池田の現状を利用する。絶対服従させるためにな。奴はそう目論んでいるんだ。
確かに、奴にしてみれば池田の死は予想外だったに違いない。だがその死を、約束を違えればこのようになると吹聴する。それが奴の手口だ。だから逆手をとって、無理と思われている要求通り持って行く。菊地は慌てるだろう。顔に出さずとも内心そのようになる。そうさ、不可能と思われていることをやるんだからな。
でも、池田のようになりたくないという恐怖心から、俺が掻き集めてきたと解釈するかも知れない。ここに俺を殺さない理由がある。
驚きの反面、こやつに徹底的に貢がせようとするだろう。従ってこれで終わることはない。更に大きな要求をしてくる。そこで、長くて一週間の引き伸ばしを計る。その間に体制を整え反撃に出る。そのための準備期間を何としても稼がねばならないのだ。
俊介さんが言っていた。「頑張ってくれ」と。そして「奴の仕打ちに耐えてくれ」と。俺もその心算でいる。池田だって他の連中もそうだ。何時まで奴の言いなりにはならない。反撃し改心させなければ、我らの住む巣穴のためにならない。俊介さんが推し進めることは、「自分だけが良ければいいというものではない。改革とは皆のためになるものこそ求められるものだ」と、常々説いていた。「それが、今回の出来事を象徴している」とな。
…奴は己のことしか考えず、自らの利益のみに走っている。そのために他人が犠牲になることなど意に返さない。これでは共存共栄の巣穴作りにはならず、許されるものではない。とも俊介さんは言っていた。
俺は今回のことで当事者として、昨日菊地から痛い目に遭った。そして一人では解決できない過大な要求を突きつけられ、それを仲間のかけがえのない協力で、如何にか乗り切れそうだ。本当に感謝している。だから、このように導いてくれた俊介さんには礼のしようがない。
心から野口は思った。そして反芻する。
それにしても昨日はひどい目に遭った。あれだけ殴られれば、殺されるのではと恐怖心に覆われ、無理難題を断れなかった。おまけに池田が隣で動かなかったんだ。間違いなく殺されたと思った。だから次は俺の番かと慄いた。今回は皆に助けられ、食料を確保することが出来た。皆の協力を無にするわけにはいかない。これから無理難題を要求され暴力を振るわれようと耐え、今日の作戦を成功させねばならない。
拳を握り、決意を新たにする。
よし、菊地のところへ乗り込むぞ。絶対負けられない。これから厳しく長い道のりの勝負になる。まずは、その一歩だからな。少々痛めつけられてもへこたれん。負けてなるものか。俺には仲間がいる。そして、俊介さんがついているんだ!
仲間に見送られ、貢物を持ち出掛けて行った。誰しもが野口の無事を祈り、帰えることに疑いを持つ者はいなかった。
だがしかし、菊地の考えが野口らの思惑に応えるほど思慮に富むものでなく、直情的で長期的な展望を持って計画されたものではなかった。漠然とした野望だけが大きく、それとて思いつきの域を脱せず、戦略的に練られたものとは程遠い代物である。野口らは、彼の野望が短略的思考の下に成り立つことを、それほど深く考えていなかった。
確かに池田に瀕死の重傷を負わせ、野口にも恐怖心を与えるほど暴力をふるい、法外な要求を課した。それとて綿密な考えで決めたわけではない。その場の思いつきで放ったまでのことだ。いわば君主専制の阿呆な独裁者のやり方である。
そんな脅迫は出来なければ暴力をふるい、要求した量まで貢がせようとする。更に終わっても次の要求が待っており断ることが出来ない。絶対的なものとなり永遠に続く。一度毒牙にかかれば逃げることが不可能になる。それが菊地のやり方であり、搾るだけ搾り取り抜け殻になったところで始末されるのだ。考えと行動が思慮もなく短略的に行われることに、俊介を含め野口らは的確に見抜けなかった。
戦略を練った心算で、野口は菊地の巣穴へ向かった。
そして会い、緊張気味に告げる。
「菊地様、昨日の約束物をお届けに参りました…」
すると意外という顔で窺う。そして、傲慢に告げる。
「持ってきたか、ご苦労。わしの言うことを聞いたか。それでいいんだ。これからも忠義を尽くせ、さすれば命だけは助けてやる。昨日のような痛いめに遭いたくなかろう。逆らうと損をするし、命をちじめることになるからな。お前もその点は分かったようだな。そうだろう、野口。ところで昨日、わしの制裁鉄拳を受け死んだ奴は手厚く葬ってやったか。あ奴も馬鹿な男だ。わしに逆らうからあんな目に遭ったのだ。いや、今頃説教しても遅いがのう」
野口は黙って聞いていた。腹の中で、昨日らい皆と練った策を反芻していた。
こいつは、これで済まそうとは考えていまい。その証拠にこれで終わりだとは言っていない…。忠義を尽くせといい、これからも従順であれ逆らえば痛い目に遭うと、暗に脅かしているではないか。それに、恐怖心を植え付けようと池田みたいに死にたくないだろうと脅迫している。昨日、池田が死んだと思っているのだ。
…こいつは俺に寄生虫のように取り付き、一生喰らいつく魂胆だ。とんでもない奴だ!
そう巡らせていると、不意に声が飛んでくる。
「おい、野口。辛気臭い顔をしているが、何か言いたいことでもあるのか!」
はっとして、咄嗟に応じる。
「いいえ、とんでもございません。菊地様、昨日は大変失礼なことを致しまして。あなた様の愛のムチを頂き、しかと目が覚めました。それでご用命頂きました獲物を、お詫びの証にと参上致した次第でございます。如何ぞお受け取り下さいまし…」
深々と頭を下げた。
「おおそうか。お前も昨日の今日とは言いえ改心し、持参するとは見上げたものだ。まあ、今日のところはこれで許してやろう。その代わり誓うのだ。これからわしに絶対服従するとな。それが出来るか。のう、野口!」
「…」
頭を下げたまま黙っていた。
「おい、黙っていては分からん。それとも不服か。わしに従うことが嫌か?」
「いいえ、滅相もございません。私みたいな者にお声を掛けて下さり有難いものを、それにもまして部下になどもったいないことであり、感謝しております」
「おお、そうか。わしの意に沿わぬかと思ったぞ。それならばよい。それはそうだ。持参した貢物で、昨日の不埒は帳消しにしてやったんだからな。有難いと思わなければ、罰があたるぞ!」
「はい、その通りでございます。菊地様!」
「うむ…」
菊地は唸った。そして続ける。
「今日、反省し謝罪に来た。と言うことで、お前も部下になったわけだ。その菊地様という言い方は止めろ。これからは、将軍様と言うのだ。分かったな!」
「は、はい…!」
「そうだろう、野口。言ってみればわしは、これからずっと君主になるんだからな」
「は、はい。分かりました。菊地様。いや、将軍様!」
地面に額を擦り付け、かしこまった。それを見下し、菊地が満足気に頷く。
「うむ、それでいいんだ。それでな」
野口は内心呆れていた。と同時にこの雲行きに疑問を持ち、次の要求を待ち緊張しつつ、めざとく思考を巡らせる。
こいつは俺を完全に支配下に置いたと思っている。甚振ればされるほど反発するものさ。今に見ておれ。いずれこの仕返しは必ずしてやる。この虚け者め…。
地面を睨み内心叫んでいた。
すると、やおら菊地が口を開く。
「そう言えば、野口…」
何を思ったか、猫なで声となる。
「それにしても、よくこれだけの量を集めたな…」
不可解気に呟いた。心内で叫ぶ。
おっ、来たぞ。とうとう本性を表したな!
そして、昨夜打ち合わせた筋書き通りに話し始める。
「はい、昨日戻りましてから懸命に集めたのです。なかには他の虫たちが集めたものを、奪ったものもございます。勿論、一人の力では将軍様が要望された量には届きません。そこで仲間に助けを乞い。三人の働き蟻に事情を話し、獲物採りを助けて貰ったのです」
顔色を覗いながら、作り話を続ける。
「私のみならず、彼らも一睡もせず駆けずり廻って確保してくれました。ところが、一人大怪我をしてしまいました。つい、蟷螂の獲物を横取りしようとしたからです。蟷螂の強力な鎌を喰らい、辛くも逃げ帰ってきました。これも将軍様に献上するために、仕方のないことだと思っております。それで、何とかこれだけの量をお持ち出来た次第でございます」
聞かれもしないことを、平伏しながら一気に喋った。昨日、仲間が協力してくれたこととは異なる話である。すると、それを菊地が頷きながら、妖しく眼が光るのに気づかなかった。伏していれば分かろうはずもない。案の定、
「そうか、それはご苦労であった。ところで、その怪我をした奴の具合は如何だ?」
腹にもなく尋ねてきた。
「はい、何とか命だけは取り留めましたが、以前のように働くことは出来なくなり、彼には本当に気の毒だと思っています。それも、将軍様のためなれば致し方ありません」
打ち合わせ通り結んだ。
「うむ、そうか…」
満足気に触角をしごき、しきりに鼻を動かす。
「わしのために、そこまで仲間らは協力しておるのか?」
「はい、私が将軍様の偉大さを説教し、それに応えるためには、必要なことだと諭したからでございます」
菊地は何も言わなかった。踏ん反り返る様は、野口が明らかに己の軍門に下ったような顔をしていた。自信に満ちる言葉で告げる。
「そうか、それでよいのだ。野口、お前の仲間らにも礼を言っておけ」
そして、意外なことを口にする。
「野口、お前もこれだけのことをしたんだ。今日は帰ってゆっくりと休むがよい。充分養生し、一週間後にまた来い。それまでに処遇を考えておく。悪いようにはせんからな」
何やら企む眼差しで告げた。が平伏す野口には、その狡っからい目の輝きが分らなかった。
「あいや、野口。今度来る時は貢物はいらんぞ」
意味深長な言い回しで、含み笑いをした。
野口の意に反して、と言うか、仲間との打ち合わせ通りにならず耳を疑う。
あれ…?こいつは、何故こんなことを言うのか。昨夜推論した内容と違うではないか…。ううん、如何いうことだ。何でこんなわざとらしいことを言うのか?
思案が乱れた。尚も考え続ける。
作戦通り、如何して不当な要求をしない。何故だ。それとも、これだけの量を持ってきたので満足したか。俺を許そうとしているのか。如何なんだ…?
更に頭の中がこんがらかってきた。
いや、待て。こいつは何を企んでいるのか。こんなはずがない。うむ…。
分からなくなっていた。だが、菊地の思惑など考えも及ばず、それでも繕うよう返す。
「…はい、有り難うございます。帰りまして、早速仲間たちに将軍様の有難いお言葉を伝えさせて頂きます。何と喜ぶでしょうか、目に浮かぶようでございます」
そして、誇張し繰り返す。
「戻りしだい、将軍様から頂きましたご薫陶を伝えさせて頂きます」
深々とお辞儀し、渇ききった喉で後退りする。
「それでは失礼致します!」
反転して姿を消した。菊地は満足していた。ただその猜疑な目の輝きは、納まるどころか更に増していた。
昨日の今日で、これだけの獲物を持ってくるとは。何と合理的なことか。しごきの鉄拳が効いたとみえる。やはりこのやり方がいい。わしの偉大さを見せつけることが手っ取り早いわ。
うむ、うむ、奴からはこれからも搾り取れるだけ取ってやる…。
ほくそえみ、今後のことを考えると自然に笑いが出るのだった。そして満足気に呟く。
「こんな美味しい策略話はないぞ…。ちょっと脅かしただけで、びっくりこき言い成りになって、要求した通りの獲物が手に入った。思いもよらんことだ。奴を痛めつければ、幾らでも貢がせられる。それに話を聞けば、仲間がいるじゃないか。それも馬鹿みたいに協力する間抜けな奴らがよ。
こんな脅かし甲斐のある奴はそうはおらん。ここは少し手を緩めてやるか。端から強引に脅かしては長続きせん。奴の話によれば、仲間の一人は蟷螂に襲われ廃物になったという。これも間抜けな野郎だ。まんまとわしの術中に陥ったとも知らずによ。
笑いを抑え、嘘ぶく。
「わしも多少短略的になり過ぎて損をすることがある。ここのところは奴らから搾り取るために、強弱つけて脅かしていかねばな…」
更に胸中で邪推する。
それに野口だけでなく、仲間の奴らもいずれ引っ張り込んで支配下に置いてやる。そしてこき使い役に立たなくなれば、ぼろ雑巾のように捨ててやるさ。野口の奴は、多分今日もまた、法外な要求をされるだろうと思って来たに違いない。「今度は、これよりもっと多い獲物を持って来い」と、告げられることを覚悟してきたはずだ。あの平伏し動揺した様子を見ればよく分かるぞ。
それをすんなり帰してやった。聞きもしないことをべらべらと喋りやがって。うふふふ…、奴らの仲間で練り上げた愚策の手の内を明かすようなものだ。それをわざとらしく仲間の協力だと、愚かな奴だ。そうか、餌食になる仲間がおるわい。ちょうどいい按配になってきた。更なる要求をしなかったことに安心するだろう。今日のところは油断させるために黙って帰した。それもゆっくりと身体を休めて一週間後に何も持たずに来いとな。
そして反芻する。
ここが大切なところだ。奴らの思惑を逆手に取り、動揺する野口をまず今日は、こちらの要求を突きつけずに帰す。奴も当てが外れるだろう。そうさ、仲間と打ち合わせた思惑が違ってはな。これで奴は見方も変わるに違いない。さすれば、警戒心から尊敬心に変わってくる。
更に掘り下げる。
それを貴奴は仲間に話し、仲間らも当初は困惑するが、いずれわしに対する警戒心を緩めるに違いない。いや、待てよ。仲間らはそうはなるまい。奴らはわしの鉄拳を聞いただけだ。受けて恐怖心を植え付けたわけではない。それならば、そうか。野口の言うことにむしろ不信感を抱くだろう。
奴の仲間は、そんなわしの言い分を信用しないだろう。すると仲間らは、その矛先を野口へと向ける。備蓄食料をわしのところへ持って来ず、奴が猫糞したのではないかと疑うのだ。
内部分裂か…。
そうだ、あまりにも奴らが考える思惑と違ったわしの行為を見れば、間違いなくそうなるだろう。それに、何も持たずに一週間後に来いと告げてある。野口が仲間に伝えれば、奴らの間では相当混乱するぞ。そうなれば、野口に対する不信感が幅し、間違いなく仲間外れにされるだろう。さすれば野口めには、それなりの処遇を考えると言ってあるから、尚更わしに対する警戒心が薄れ、策略に嵌まり込むはずだ。
ううん、これは旨くいきそうだ。貴奴もとんだ毒牙にかかったものよ。とことん搾り取ってやる。ついでに、奴の仲間らも毒牙の餌食にしてやるわい…。
そこまで邪推し自己満足に浸りながら、ついと別のことを思い起こす。
そう言えば昨夜は燃えたな。生娘を抱くというのは、こんなにいいものか。そのツキが今日の野口と言うことか。万里子を昼間に犯し、更に如何にも我慢できず夜も抱いた。何度抱いてもいいものだ。こりゃ病み付きになりそうだわい。
目がくぼむどころか、寝不足など感じず脂ぎる。
いよいよわしの時代が来るというものだ。着実に勢力を拡大し、まずは俊介の巣穴を牛耳る。それが成し得た後、更に我が陣営を拡大して行き、いずれ別の巣穴へと侵略する。そのための第一歩が阿呆野口であり、その仲間の攻略と言うことだ。このやり方であれば逆らう奴は出てこない。万が一邪魔する者がいれば、見せしめとして百叩きか縛り首にしてやる。わしの恐ろしさ、しいては偉大さを示し強権政治を敷けば磐石な体制となろう。
菊地はあたかも己を中心に、ことが運ぶ邪推にほくそむ。
「それにしても出足は順調だ…。こんなに旨く行っていいものか。これも、わしの頭脳の明晰さゆえに、可能といっても過言ではあるまいて。それと、力ずくによる統制がものを言っている。平松や仲田の使い方も、絶妙な采配を持ってコントロールできているからな。まあ、ここは睨みが効いているのが、大きな要因であるのは間違えないようだ」
触覚を摩り嘯いた。そしておもむろに呟く。
「ああ、それにしてもまたやりたくなってきたぞ。昨日二度も抱いたのに、下半身がむずむずしてきた。あの豊満な胸、むっちりとした尻。うむ、たまらんわい…。いずれあいつも、苦痛から快感を感じ出し甘えるだろう」
更に卑猥な体位を思い浮かべては、しきりに触角を前足で擦る。
「うむむ…。考えただけでぞくぞくしてくるわい」
身震いした。
それにしても、ここのところ考えている以上に上手く行き過ぎてはいないか。天下取りの野望も、野口を脅かし奴の仲間を混乱させ、その隙を突いて一斉攻撃をかければ、元住む巣穴だ。簡単に落とせる。それに万里子の方も、俊介らと同様にいろいろと攻め概があると言うものだ。
胆略的な邪推を膨らませていた。
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