第百十話 勇22 そんな事って


「えっと。じゃあ、あなたは誰から聞いたわけでもなく、ふと魔王の復活を知ったと?」


「あぁ。自分でそういうと、不思議なもんだな。ふと思いつくなんて」


 私は愕然とする。だって、予想できる答えではなかったから。忘れたでもなければ、誰々から聞いたでもない。1人目から不思議な人に聞いてしまったなと思いながら、一応お礼を言ってその人とは別れる。


「変な人だったね」


「えぇ、そうですね。誰からも聞いてないんだったら、あなたは預言者なんですか?って話ですもんね。いや、この場合は予言じゃなくて第六感の冴えておられる方なんでしょうか」


「だよね。まぁ、あの人の意見は参考にならなかったと言う事で、気を取り直して次いこう!」


「はい、そうですね。次はあんな人に当たらないように気をつけていきましょう」


 メアナと話して、あの人の意見は参考にならないと揃って決定したところで、私たちは次の人に声をかけていくことにした。


 しかし、私たちは最初の意見がどれだけのものだったかをこの時は知らなかったのだ。


「えっ、俺か?俺はいつも通り家に帰ってる時にふと思ったかな。そのまま、家に帰って妻に聞いたら私もって話になったよ」


「魔王の噂ですか。私は買い物に行く途中でしたよ。誰から聞いたわけでもないですけど、思いつくもんなんですね。不思議です」


「僕はね!知ってたよ!お父さんとかお母さんにも教えてもらってないもん!」


「私は近所の婆友と話しておった時にな、みんな同じタイミングでハッとしたような顔をしたんよ。長く生きとるけど不思議な事もあるもんじゃな」


 私たちが聞いたどんな人でも、全員が全員おんなじような答えだったのだ。いや、あり得ないと思う。でも、こうなってしまったことは認めるしかない。魔王の噂の出どころは調べることは出来ない。だって、みんな知らないんだから。


 でも、そんな不思議な状態だからこそ分かる事もあるのだ。私がそれを踏まえて考えを整理しようとしていると、隣からメアナが声をかけてくる。


「どうしますか?私としてはこれ以上聞いても意味が無ような気がしてきましたけど。なんか、この街の人みんな洗脳でもされてしまったんでしょうか?」


 なんか、私の考えているところと絶妙に惜しいところをついてくる。


「いや、多分これは女神様が関わってるんじゃないかな。私本人から聞いたんだけど、女神って意識を変える事ができるらしいから」


「えぇー!なんですか!その話。私にも詳しく教えてください」


 メアナの質問に答えようとした時に私は護くんたちを発見する。


「護くーん。聞き込み終わったよ〜」


「あっ、結笑。待ってください」

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