第百五話 事情聴取


「ただいま、、、、」


「はあ、やっぱりそうなったんだね」


「お兄ちゃん、大丈夫?」


 結笑が、ボロボロになって帰ってきた俺を見て、苦笑いのような顔で言う。真央は俺のことを心配していくれている。やっぱりこの子は魔王じゃなくて、天使じゃなかろうか。


 そんなことを思うと同時に、俺は一緒に帰ってきたアイリスたちに事情を聞く事にした。


「俺こうなるの嫌だから、俺たちが帰ってくまで宿出ないでねってお願いしましたよね。それなのになんで、串焼き屋なんて行ってるんですか」


「すみません。私ちゃんと見ていたはずなんですけど、アイリス様もアテナ様も気づいた時にはもう居られなくなっていたんですよ。宿の出口付近で発見したけど、そのまま逃げられてしまって。なんか、言い訳みたいになってますけど、信じてください」


 メアナがこれまでの経緯と共に教えてくれる。メアナは信じてくれと言っているが、信じるも何もまるきり、さっき女神様方と話していた事なので、多分メアナが言っていることが事実なのだろうと俺は思う。


 そして、メアナが事実を言っているとなると問題はアイリスとアテナという事になるが、、、、。俺は口の周りにタレをつけているアイリスと、それに呆れたような顔をしているアテナに問う。まぁ、なんとなく予想はついてるんだけど、、。


「アイリスとアテナは、なんで宿の外に出たんだ?」


「お腹が空いて串焼きを食べたくなったからです。あと、ずっと宿にいるのもする事がなくて退屈でしたし」


 アイリスが悪びれもなく言う。俺の状態をちゃんと見ていってほしいものだが、退屈という意見も分かってしまったので、強くは言えない。


「私は気を抜いた隙に逃げられたアイリスを追いかけてました。メアナに伝えるのを忘れていたことは反省してます」


 こちらも巻き込まれた感がある返事だった。アテナは女神だからアイリスの意識改変の力も弱かったんだろう。メアナよりも早く気づいて追いかけたから、メアナが気づいた時には1人だったと。


 状況の理解が終わり、俺は取り敢えず欲望に忠実に従ったアイリスに全ての非を押し付ける事にした。


 暇だったと言う言い分は分かるのだが、俺が帰ってきてから串焼きは頼めば良いじゃないか。俺をボロボロにしてまで、串焼きが食べたかったのか。という念も込めて、明日の串焼きをなしにするとしよう。


「仕方ないじゃないですか〜。これも護さんのせいですよ。私のせいじゃありません!」


 ここで俺は、明日はアイリスの串焼きなしという意志を強く持つのだった。

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