第百四話 制限時間


「たぶん、もう少しですね」


 天照様とウンディーネ様との話も深まった頃、天照様がそう俺たちに言う。それはこっちにいられる時間のことだろう。最初にも言っていたが、体が取り残されているなら、俺たちがずっとこの場所にいるのも危なくなってくる。


「本当に今回も話聞いてくれて、ありがとうございました。私あっちに戻ってからは、噂の原点探してみたいと思います。それが分かったら、また来ますんでよろしくお願いします」


「俺もアイリスの対処法ありがとうございました。本当に感謝してます」


 俺たちは女神様たちに今回のことに対する感謝を述べる。それに女神様たちも返してくれる。


「いえ、結笑たちと話せてこちらにも発見がありましたし良かったです。あと話を聞くなら、ミロナン王国以外にも赴いてみたらどうですか?美味しい料理もあるかもですし」


「私も魔王のことは考えてみるわ。こっちで何かわかったことがあったら、メアナに伝えるから。その時はよろしくね」


「はい、よろしくお願いします」


 結笑の声と共に意識が遠くなっていく。そして、俺たちが次に目を開けた時には、もう教会に戻っており、天照様とウンディーネ様の姿はなかった。


 俺は周りを見て、結笑も真央もちゃんと起きているのを確認する。教会の外もうす暗くなっており、結構な時間向こうにいたことがわかった。


「今日は、もう日も暮れかけてるしそのまま帰ろうか」


「わかった。街の人たちへの聞き込みは明日からだね。天照様の言ってた、他の国に行くってもの明日考えよう」


「そうだね」


 俺は、眠たそうに目を擦っている真央をおんぶして、宿に向かって帰り始める。女神様たちといる時から、真央はずっと寝てるけど夜寝れるのかな。


 そんなことを考えていると、何かに引っ張られるような感覚に襲われる。


 そして、俺は悟る。これは前回の道を辿ってはいけないやつだと。しかし、今回はちゃんと宿に居てもらうようにお願いしているはずだし、急いで宿まで帰れば大丈夫なはずだ。


「結笑、ちょっと走るよ。流石に2回目はさせたいし」


「えっ。じゃあ、急がないとね」


 俺は結笑の返事を聞いてから、走り始める。俺の背中で眠っている真央にあまり振動がいかないように、細心の注意を払いながら走る。


 これまた前回と同じように、どんどん引っ張られる感覚が強くなっていく。それに耐えながら俺はやっとの思いで、宿に辿り着きアイリスたちがいるはずの部屋のドアを開いた。


 そこには、誰もいなかった。


 俺は急いでエクストラスキル【【親心】】でアイリスの位置を調べてため息をつく。


「はぁ。なんで、串焼き屋にいるんだよ」


 その後、俺の体がどうなったかは言うまでもない。

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