第八十話 出会ったのは


 俺は洞窟で拘束されていた男の子と会話を開始する。最初は当たり障りなく、でもずっと気になっている事について聞いてみる。


「ここがどこで、なんで、こんな所に繋がれていたのか分かるかな?」


「分からない」


 男の子からはっきりとした答えが返ってくる。しかし、ここがどこか分からないのは分かるが、なんで繋がれていたのか分からないっていうのはおかしくないか?


 だって、忘れた。とか、言いたくないだったら、まだ何か理由があったからだと思うが、分からないは、まず根本的に理由がない可能性があるからだ。そこに疑問を感じた俺はさらに聞いてみる事にした。


「じゃあ、なんでここにいるの?お兄ちゃんは教会でお祈りをして、気づいたらここにいたんだけど」


「分からない。僕も気づいたらここにいて、縛られてた」


 俺は男の子の話を聞いて、不思議な話だと思う。だって、気づいたらここにいて、さらに縛られてた?本当にそんなことがあったら、ヤバすぎる。


「じゃあ、ここにくる前のことは覚えてるかな?どこに住んでたとか、何をしていたとか」


「知らない」


 俺の質問に対して、短く簡潔に答える男の子。またしても、不思議な答えだ。覚えてない。分からない。じゃなくて、知らないなんて言われたら、今までの情報と合わせるととんでもない仮説が立つ。


 それは、この男の子が人から生まれた人間ではなく、何者かによってここで作られたということだ。


 自分でも否定したくなるような話だが、これまでも情報と、女神様がこっちにくる時にスキルである【神物創造】みたいなのがあれば出来なくもないのではないかと思えてしまう。


 だって、下界に降りて力が落ちているであろうあのポンコツ、アイリスだって【神物創造】使えちゃうんだよ。これが神界にいる、ちゃんとした力を持った女神様だと、人間ですら作れてしっまったって不思議ではない。


 そこまで考えたところで、俺は考える事をやめた。だって、これ以上考えたって答えは出ないし、今ここにいる男の子が何者であろうとも、俺の寂しさを紛らわせてくれているのは事実だからだ。


「お兄ちゃんは、どこからきたの?」


 すると、これまでずっと答えるだけだった男の子が自分から俺に質問してくる。これは少し心の距離が詰まったと考えていいのかな。


 そう思いながら、俺はどこから答えようか考える。異世界に来てからのことだけ話すのがいいのか、それもと日本にいた頃からの話をすればいいのかの2択あるのだ。


 そして、俺は少し考えてから日本にいた頃からの話をする事にした。だって、こっちの方がより長く話せて、少しでも時間を忘れられるからだ。


 俺は結笑のところに無事に帰れたらいいな、と思いながら男の子に俺が日本にいた頃の話を始めるのだった。

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