第七十五話 勇16 秘策


 護くんがそんな空気の中、話を元の方向に戻してくれる。本当にありがたかった。あのままだと、普段どうりにいられなくなる可能性があったから。あっ、今まで以上にね。


 そして、切り替わった気持ちで、護くんの質問に答える。


「いや、聞いてないよ。普通に私だけだと思ってたし、何も知らないかな。けど、その話は私も気になるから、明日一緒に出かける時に話聞いてみようか?」


「うん、そうだね。そうしよっか、うん?一緒に?」


「うん!一緒に」


「ちなみに、誰と誰が?」


 私との会話の中でとぼける護くん。可愛いとは思うのだが、本当にそう言う所は直して欲しいと思う。私だって決意決めてやってんだよ、、。


 そんな意味も込めて、私は少しきつめに護くんに言葉を返す。言われる側の気持ちだってあるだろうが、言う側の気持ちだってあることに気づいて欲しい。


「それ、わかってて言ってるよね。当然、私と護くんだよ」


「いやいや、俺アイリスと離れられないから」


 護くんがアイリスさんを言い訳のように使う。本来なら、言い訳じゃん!で、済ませられるのだが、護くん達の場合そうでも行かないのだ。


 だがしかし、そんな事は言い訳にできてしまう、秘策が私にはあるのだよ。そんなはっきりと、確認したわけではなかったのだが、ぱっと見できそうな感じがしたのだ。


「じゃあ、その時だけアイリスさんの神童を代わって貰えばいいよ」


「そっか、そっか。代わって貰えばいいのか〜。それは名案だなあ」


「うん!名案でしょ!」


「って、代わってもらう?そんなことできんの?」


 良いね!護くんのノリツッコミ。いつまででも見れられる。ノリツッコミはいつまでも見れるのんじゃないのが、残念だけど。


 そんな、護くんは私の言葉に凄く驚いたような顔をしている。てか、反応をしている。見てて面白いほどに。アイリスさんには私の知らないところでも、苦労をかけられているんだな。


 こっちにきてからだと、まだ少ししか一緒にいないけど、そんな私でも、アイリスさんに迷惑をかけられてる所は多く見たぐらいなのに。


 そんな、護くんにすこし残念なお知らせと共に、私は護くんに秘策を説明する。


「うん、一時的にだけどね」


「うん?一時的に?」


「うん、私のスキルで【身代わり】って言うのがあるのは知ってるよね」


「うん、知ってるよ。でも、それがどうかしたの?」


「私もこの事を知った時にびっくりしたし、まだ誰にも伝えてないとこなんだけど、それのスキルレベルが10になって、エキストラスキルって言うのが獲得できたの」


 そう、私のスキルレベルがカンストした事だ。

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