第七十四話 勇15 2人きり


 私は護くんの手を引いて、宿の部屋に向かう。少しでも長く2人で過ごしたいしね。


 2人になるために、わざわざ女神様達をメアナに押し付けたのだから、私が楽しまないと損、損。


 メアナのことなんて、今はどうでも良いのだ。けど、少しかわいそうな気もするので、後から謝っておこうと思うのだった。でも、今はそんな考えを排除する。謝る文面などは後から考えることにしよう。


 部屋について、辺りを見回す。思ってたより綺麗な部屋だ。ベットが2つ。あとはほとんど何もない。ただ、泊まることだけを意識しているようだ。


 なんて今の私たちに都合のいい部屋なんだろう。もう2人でいるしかないような。2人で何かして時間を潰すしかないような。そんな部屋だ。


 私たちは、まず荷物を置いて、2人でベットに座って一息ついた。


「さぁ、なにしよっか?」


 私の一言に、護くんは困ったような顔をしている。あれは多分「本当になにしよう、」って考えてる顔だ。ここにくるまでで、大分何を考えているか、分かるようになってきた。


「明日の話でもしよっか。メナさんたちも呼んでみんなでどうするか」


「いや、護くん明日は自由行動にするって言ってたじゃん。それなら、メアナたち呼ばなくても、2人でできるでしょ」


 護くんのおどおととした発言に、私は事実を返す。流石に話題がヘタクソすぎるよね。しかも、みんなを呼ぶって。そんなことしたら私の苦労が無駄になってしまうじゃないか。


 まぁ、そんなに苦労なんてしてないけどね。護くんは私の発言を受けてやられた、みたいな顔をしていたが、すぐに何か閃いた!とでも言いそうな顔をしてこちらを向いた。


「そういえば、この世界の勇者って、結笑さん1人じゃないらしいよ。この世界の各国が召喚してるみたい。結笑さん知ってた?」


 護くんのその話の内容より、私は気に食わない事があるのだ。2人きりだし、私たち同級生だよ。しかも、私はちゃんと読んでるのに。めんどくさいと思われるかもしれないが、気づいてほしいと思った。


「どうしたの、そんな顔して」


 しかし、護くんは本当にわからないと言った顔で質問してくる。


「いい加減、その結笑さんって言うのをやめてほしいなぁ。と思いまして。私だけ護くんって言うのも違う気がするんですよねぇ」


 気づいてくれなかったことに対して、不満を抱きながらも、私は護くんに要求を伝える。


「結笑、、、はい!これでいい?」


「、、、、うん」


 護くんが、恥ずかしがりながらも、素直に呼んでくれたので、私も嬉しくなって、でも恥ずかしくもあって、返事が小さくなってしまった。


「それで、結笑、、、はその勇者の話知ってた?」


 私の嬉し、恥ずかしの気持ちも、話を戻した護くんの言葉で、切り替わるのだった。

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