第七十一話 国の需要
「ちょちょちょちょ、何てことこんな場所で言ってんだい」
俺がアイテムボックスに入れてるって言っただけなのに、この慌てよう。何かあるのだろうか。そういえば、門番さんもおんなじ反応してたよな。
「えっと、なんか悪いとこでもありました?アイテムボックス使ったらダメとか」
気になって、俺は店員さんに聞き返す。すると、周りを見渡してから出店の奥に入れてくれた。
「いいかい、アイテムボックスってのは、とってもこの国では重宝されるんだ。重さはない、時間経過もない、スペースを取らないなんて、いい事尽くめらしいからね」
「そうですね、いいですよこれ」
「ふんっ!自慢かい。まぁ、そうだよ。だから、アイテムボックスを使えるなんて大声で言ってたら、誘拐されることもある。言えば、いいようにこき使われるんだよ」
恐ろしい事を教えてくれる。これは、門番さんも焦るわけだ。無自覚に自分が誘拐される、危険がある事を喋る奴がいるなんて、思わないだろうからな。
「賃金はいいが、それを使う暇もないほど、色んなところに行ったり来たりらしいしね。本当に気をつけた方がいいよ。他の国はどうか知らないが、この国では危ないからね」
「わかりました、気をつけます。本当に教えてもらえてよかったです。これで俺も誘拐されずに済みますね」
「あぁ、気をつけな。そういえば、ここには肉を買いに来たんだったな。嬢ちゃん、どれがいい?」
話が終わると、店員さんの空気は一変し、出会った頃のように結笑に肉を選ばせている。
「これにします!」
「おっ、いいのを選んだな。じゃあ、大きめの袋だしな。それに入れてやるから」
そう言って、店員さんは肉を袋に入れてくれる。といっても、俺たちはまだ、店の奥にいるので、袋にいえるフリをして、アイテムボックスインなのだが。
これからは、こんなカムフラージュも必要になるのか、と思いながら、良くしてくれた店員さんにお礼を言って、店を離れる。
「スキルって国ごとによっても、重宝させるものって違うんだね。護くん、運がいいのかも知れないね。クリスさんの件もだし」
「まぁ、そうなのかも知れないな。クリスさんの件は報酬の件が大きい気がするが」
「ははは、そうだね。じゃあこれからの護くんに期待だね。直近はこれからの聞き込みという事で、よろしく!」
結笑が笑顔で、こちらの手を引いてくる。そうだ、俺たちの今日の目的は各国に召喚された勇者の聞き込みだったな。さっきの件で、忘れそうになっていた目的を思い出す。
「あぁ、期待せずにお願いされるよ、」
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