第六十話 ロミオン商会


「でっけー、、、」


 クリスさんの案内で、ロミオン商会に着いた俺たちの感想はただこれだけだった。各々の反応は少しずつは違っているのだが、本質的な事はこれに限る。


 そう、みんなの感想が一致するほどにデカかったのだ。俺と結笑さんの地球みたいな高層ビルはなくて当たり前なのだが、この世界に来ていろんな建物を見てきたが、こんなところがあるなんて思わなかった。


 流石に王城とかレベルではないにしろ、マンション10階分ぐらいある。しかもこれは本店で、各地に支店があるらしい。ミロナン王国自体が建物が多く、店も多いんだがそんなところで、こんなに大きくできるのはすごいな。


「困っていたところを助けていただいて、本当にありがとうございました。護さんに持ってもらっている荷物を受け取りたいので、どうぞ中にお入りください」


 ロミオン商会の外見に驚いていると、店の入り口付近でクリスさんが俺を呼んできた。


「わかりました。馬車とかどうすればいいですかね」


「店の前に停めといてもらえれば大丈夫ですよ」


「わかりました。ありがたく停めさせてもらいます」


 俺たちはクリスさんに言われた通り、店の前に馬車を止めて、店内に入る。


「すげぇー、、、」


 店内もそんな感想しか出なかった。気づけばアイリスが消えているほど、多くの商品があるのに対して、清潔感があり売り場を見渡しやすくなっている。本当に客のことを考えているいいお店だと思う。


「アテナさん、ちょっとアイリス探してきてもらって良いですか?荷物出し終わったら帰りに合流できるように」


 俺は消えたアイリスのお守りをアテナさんに頼むことにした。結笑さんにもメナさんにも頼めないからな。


「がってん、承知したわ。じゃあアイリスを発見したら、そのままお買い物でしてれば良いのね」


「そうですね。あっ、でも買いすぎはやめてくださいね」


 俺がこれを言い終わる前には、アテナさんは消えていた。大丈夫かと不安になっていると隣から結笑さんが声をかけてきた。


「護くん、私たちも店内見てきて良いかな?良いものが見つかるかもしれないし」


 口では冷静に言っているが、顔は正直だ。興奮が隠しきてないように、聞いてきた結笑さんのことを可愛らしいなと思いながら、俺は返事を返した。


「結笑さんも買い過ぎには気をつけてね。メナさんもよろしくお願いします」


「分かってます。この状態の結笑は何をするかわからないですから」


 そう言った、メナさんの顔もワクワクが溢れている気がするしたが、天照様とウンディーネ様にちゃんと見てもらうことにしよう。


「話はまとまりましたかな?」


 すっかり、のけものになっていたクリスさんが俺に聞いてくる。


「あぁ、すみませんでした。もう大丈夫です」


 俺はそう答え、クリスさんの背中についていくのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る