第五十六話 やってしまった、、、


 道で困っていた人を助けて、早1日。俺は既に声をかけてしまったことを後悔していた。


 荷物を増やしてからと言うもの、こっちの馬車の車軸は折れるわ、アイリスの汚物を絶対にかけてはいけないので、休憩の回数は増えるわ、アテナさんが自分の持っていた荷物落としてしまうわで、全然前に進めないのだ。


 それなのに、何故か結笑さんは嬉しそうだしもう訳がわからない。そんな不満たらたらの状態で、未だミロナン王国に向かっているわけだが、道で助けた人のことも分かってきた。


 名前はクリスさんと言うらしい。第商業都市であるミロナン王国に、買った商品を持って帰る途中に馬車が荷物の重さに耐えられずに、車軸が折れてしまったらしい。


 結構行き来しているのだが、こんな事は初めてだと言っていた。原因として商品を増やしたからだろうと言っていた。


 いや、それしかあり得ないと思うが、、。


バキン!


 またもや、大きな音がする。


 それと同時に馬車が大きく揺れて、それ以上動かなくなってしまった。


 そう。また、車軸が折れたのだ。これで何度目の馬車交換だろう。新しい馬車をアテナさんに出してもらう。アイリスはグロッキーで使い物にならない。


 そして、壊れた馬車から荷物を移し替える。壊れた馬車は自然に優しくないのは分かっているが、残しておくのもなので、火をつけて燃やしておく。


 ごめんなさい、地球さん。あっ、ここ地球じゃないか。


 そんな、悲しいネタが思い浮かぶくらい俺は疲れているのだ。許して欲しい。


 俺たちは一旦休憩を取ることにした。アイテムボックスから、みんな分の飲み物を出して渡していく。


「ありがとうございますぅ」

「ありがとう!」

「ありがたく」


 みんながお礼を言って受け取っていく。繰り返しの荷物の移し替えにも疲れているのだろう。


「クリスさんも、よかったらどうぞ」


 俺はクリスさんの分も出して渡す。クリスさんは少しびっくりしていたが、お礼を言って受け取ってくれた。そして、そのまま飲んでいたので、喉が渇いていたのも事実だろう。


 渡してよかった。


 俺は、最後に焼け残った馬車を始末してくれていたメナさんにも、飲み物を出して渡す。


 すると、メナさんはじっとこちらを見て、何か考える様な顔をしていた。


「どうしたんですか?飲み物入りませんでしたか?」


「いやいや、ありがたくいただきます」


 俺が声をかけると、メナさんは飲み物を受け取る。そして、俺にさっき考えていたであろう言葉を口にした。


「今思ったんですけど、馬車の荷物って、護さんのアイテムボックスに入らないのですか?」

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