第五十五話 テンプレ?


 ラト国出発から4日が経った。後1日2日でミロナン王国に到着する予定だ。


 たが、ここまでいろいろなことがあった。アテナが忘れ物をしたとか言い始めたり(結局、違う鞄にあった)、結笑さんが夜に迫ってきたりなど、本当にあったのだ。


 まぁ、悪いことばかりじゃなく、俺が馬を扱えるようになったり、都度都度休憩を取ることによって、アイリスが馬車の中で吐かなくなった。進歩もあったのだ。悪いことだらけなら、嘆きたくもなるがこれが普通のことだろう。


 今も今とて、休憩が終わり再出発した状態だ。


「護くん、もう完全に馬を扱えてるね!すごいよ!私にも引き続き教えて欲しいな」


「あぁ、そう言う約束だったな。はい、じゃあ、この紐持って」


 そう、俺が馬が扱えるようになって変わったとこは、こうして前の席で結笑さんと2人になる事が増えたのだ。馬車の中に他のメンバーがいるので、正確に二人ってわけでは無いが、それでも隣にいる時間が増えたのだ。


「確か、こう持ってこうしてっと」


 結笑さんはスイスイと馬車を走らせていく。俺が馬の扱いを教え始めてから、まだ、少ししか経ってないと言うのにこれだ。


 なんか、すごいと言う感想しかないな。これも、なんかのスキルとかの影響だったりするのかな。


 そんなふうにして、馬車に揺られていると、ふと目に映る小さな人影を発見する。何やら、道に止まってしまっている。


「あれ、どうしたんだろうな?」


「どうしたんだろうね?」


 俺たちが、そんなことしか言えずにいると馬車の中から、メアナさんが顔を出してきて、俺たちが進んでいる方を見る。


「あれは、馬車の車軸が折れてるみたいね。流石にあの状態じゃ、馬車は動かせないから困ってるんじゃなかろうか?」


 語尾がおかしいがメアナさんが言っていたことが正しいようだ。少しずつ近づいていくにつれて、はっきり見える様になるので、俺たちも状況を理解することができる。


 なんか、新しい国に行く途中に困っている人に出会うとか、漫画や小説の世界だけ、じゃないんだな。なんて思いながら、結笑さんに馬車を止めてもらって、困っている人に声をけた。


「すみませーん、何か手伝える事はありますか?」


「あぁ、馬車の車軸が折れてしまってね。荷物が運べなくて困ってたんだよ」


「じゃあ、この馬車で運んだらどうですか?馬を貸してもらえれば多分大丈夫ですよ」


「ありがとう。じゃあ、お願いしょうかな」


 酔ってフラフラになっているアイリス含めアテナさんとメナさんを一旦馬車から下ろして、荷物を乗せる。結構な量があったが馬二頭なら大丈夫だろう。


 荷物を乗せた事で馬車の中はみちみちになってしまったが、まぁゆっくり行けば大丈夫でしょ。


 この時の俺は軽い気持ちで、声をかけて人助けをしたのだった。

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