第五十話 俺、除け者?


 突然結笑さんの雰囲気が変わった。


「少しだけお時間よろしいでしょうか?」


 突然のことで驚くが、断る理由もないので話してもらう。


「ありがとうございます。まず最初に自己紹介ですね。私は天照。この世界の世界神兼、勇者である結笑に加護を授けている者です。今は、結笑の体を借りてしゃべらしてもらってます」


 そんな事を言う結笑さん、じゃなかった、天照様。メナさん、じゃなかった、メアナ様から聞いてたけど、加護で女神様が体を使うってこんな感じなんだな。体は結笑さん、中身は天照様。みたいに考える事にしよう。


 俺が1人で納得していると、天照様は俺を名指しして話してきた。


「新堂護さん。本当にアイリスが迷惑をかけているみたいですみません。これから、しっかり言おうと思いますので、足りないところがありましたら補足をお願いしますね」


 そう言うと天照様はアイリスに話始める。初めましてのはずなのに、アイリスに苦労かけられてるってなんで知っているんだろう。


「お久しぶりですね。本当にあなたは、何をやってるんですか。自分のミスで神童にしておいて帰り方は分からない。ギルドの依頼も自分ではせずに護さん頼み。全部、ウンディーネから聞いてるんですからね」


 天照様が静かに怒る。女神様特有なのか威圧的な何かが出てて、すごく怖い。目を合わせられているアイリスなんてガクガクである。けど、自業自得だからね。


 そういえば、ウンディーネ様からの告げ口だったとは。いつか、メアナ様とは女神様の愚痴を言い合ったことがあったけど、こんな事になるなんて。


 そんな事を思いながら、ふとメアナ様を見ると、こっちに気づいてウインクしてきた。俺は不意打ちを食う。本当に攻撃力が強いのでやめてほしい。


 こちらを見て、ニコニコするメアナ様から目を逸らすと、天照様の説教もひと段落ついたようで、一息ついている。もちろんアイリスは、コッテリ絞られていた。


「そういえば、なぜここにアテナがいるのですか?」


 天照様の話題がアテナさんに変わった。話しかけられたアテナさんは、あまり普段と変わらないように話始める。


「いや、神界で普通に生活してたら、急にアイリスちゃんに連れてこられてしまって、私まで帰られなくなってしまいましたの」


 アテナさんがそんな事を言うと、天照様の目がゆっくりとアイリスに向いていく。アイリスはその目線だけでKOだ。


 そこからは、女神様達による、女神様方の報告会及びお茶会になった。途中まで俺と同じように、沈黙を貫いていたはずのメアナ様にウンディーネ様が入って、会話を始めた時は俺1人になってしまった。


 そのまま、俺は長い間空気として静かに過ごすのであった。


 ねぇ、これ俺いる?


 この場にもう1人、可哀想な人がいたのだが、それに気づいたのは部屋を出た時だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る