第四十五話 勇9 1人と1柱


 私はあの日から天照様との生活が始まった。まぁ、現実世界におられるってわけじゃなくて、私を上の世界から見てる感じなんだけどね。


 天照様の声が聞こえるようになった日に、経緯やメアナさんが知っていた理由を聞いた。


 なんでこれまで話しかけられなかったかと言うと、私のチャンネルみたいなのと合わせるのが難しかったらしい。元から異世界の人なら普通に合わせられるけど、私みたいなのは初めてだったようだ。だから、時間がかかってしまったみたい。あとは、私のレベルが低かったのもあるのかなぁ、、、。


 もう一つ、1番気になっていた事である、メアナさんがなぜ知っていたかと言うと、メアナさんも水の女神様であるウンディーネ様からの加護を受けているらしい。


 これって前に聞いたっけ?メアナさんがごく当たり前かのように言うのでそう思ってしまう。


 私はそれならと、メアナさんに加護ってどんなものなのか聞いてみることにした。


「すみません、加護ってどんなものなんですか?」


「簡単に言うと女神様に守って貰えますね。自分がピンチになった時や何かに、巻き込まれた時に女神様の力で守ってくださいます。さらに、女神様は加護を授けている人を見守っているので、話しかけてくださったり、こちらの言葉にも返してくれたりしますよ」


 メアナさんが分かりやすく丁寧に教えてくれる。


「まぁ、女神様も性格はそれぞれらしくて、ウンディーネ様はすごく過保護ですね。あと私の知っている女神様は、自堕落で何もしてくれないって言う人もいましたね」


 メアナさんが追加情報をくれる。へぇー、そんな女神様もいるんだ。てか、何もしてくれないって言うのはどうゆう事なんだろう。


 そんな事を考えていると、その質問に答えるように頭の中から声が聞こえた。


『それは多分、私の子ですね』


 私はまだ慣れてないのでびっくりしてしまうが、天照様はそんな事を気にしてないように話を続ける。


『あの子ったら、そんなことになってるんですか。本当に迷惑ばかりかけているようで申し訳ないですね』


 天照様が誰かに謝っている。誰に謝っているのだろうか?


『あぁ、実験体の子にですよ。こちらの都合で異世界転移してもらったと言うのに、こちら側が迷惑かけているなんて、、、』


 そんなに不運な人がいるんだなと思いながら天照様の話を聞く。だって、死ぬかもしれない実験が終わった後も自由にできてないって事でしょ。主に女神様のせいで。


 私は心の中で、その人に手を合わせる。


『会ったら、ちゃんと注意しときましょうか』


 私はその声を聞いて、少しホッとした。しかし、天照様がその人に会うためには、私が実験体の人に合わないといけない。だから、出来るだけ早く会ってあげたいな、と思うのだった。


 しかし、私は知らなかった。女神様に苦労をかけさせられている実験体の人の方が、私にとっては重要だということに。

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