第四話 なんでいるの?
目を開くとそこは、森の中であった。
「どこだここ?」
「あれ?転送する場所、間違えちゃいましたかね?最初は、もっとわかりやすいところのはずなんですけど」
「そうだよな、やっぱりおかしいよな。絶対あの女神のせいだ。転送位置間違えるとかありえないだろ」
「すみませーん。確認忘れてました」
「本当、しっかりしてくれよ」
んっ?ちょっと待て。俺、1人のはずだよな?誰と会話してんだ?すごく嫌な予感がするんだが。
少し落ち着いてから声がした方に身を向けてみた。やっぱりと思う反面、間違えて欲しかったと思った。
やっぱり奴がいた。
「なんで、お前もここにいるんだ!」
それを聞いた奴こと、アイリスは、こう答えやがった。
「なんでいるのでしょう?」
「こっちが聞いてんのに、質問を質問で返すな!お前は女神で、俺は実験体。普通の女神は、現実世界に来ちゃダメだろ」
「そうなんですよねぇ、来れないはずなんです。何ででしょう?」
ずっとボケている様子もないし、アイリスは、本当に自分がここにいるわけがわからないという顔をしている。
「もういい!早く帰ってくれ!」
「すみません、、、。来たことがないもんですから、帰り方もわからないんですぅ」
なんだって!こいつ帰れないだと。じゃあ、本当にどうしてついて来やがったんだ。そこまで考えて、俺はいい案を思いついた。
「じゃあ、もうついて来んなよ。俺は行くからな」
そう、置いていけばいいのだ。これから俺はどうなるか、分からないがこいつと一緒に行動するよりは、マシだろう。そう思って行動を開始した。
「嫌ですー。置いていかないで下さーい」
何か言っているが放置だ、放置。
「待って下さーい」
チッ、どこまでもついて来やがる。どうかできないだろうか、、、。そういえば、お腹が空いてたな。よし、いい事を思いついたぞ。今日は冴えてるな。
「わかった。そこまでいうなら食いもんをとってこい。取ってこれるまで戻ってくるんじゃないぞ」
よし、これで奴が探しに行っている隙に逃げるんだ。そんなことを考えていると、奴はこんなことを言いやがった。
「そんなことなら、探しにいかなくても私、出せますよ」
なんだって、女神を舐めていた。そんなことがでいるのか。これなら、ポンコツでも連れて行く価値が生まれるぞ。
「じゃあ、おにぎり出してくれないか?具は、梅干しで」
「わかりました。梅干しおにぎりですね。はい!」
威勢の良い返事の割に、差し出された手には何ものっていなかった。
「おい、おにぎりは?」
「あれ?出てないですね」
俺は無言で歩き始めた。こいつは、やっぱりダメだ。後ろで何か言っているのが聞こえるが放っておこう。
そう思って歩き始めたのに100メートル進んだぐらいの所で足が動かなくなった。
疲れているわけでもない。怪我をしたわけでもないのに足が動かないのだ。どれだけ前に出そうとしても、動かない。そう、まるで金縛りに遭っているかのように。
そこまで考えて俺は、こんな仮説に思い至った。本当は、こんなこと考えたくもないのだが、これまでの事を踏まえるとその可能性が高い。
こっちに来れないはずの女神、アイリスがこっちに来てしまったこと。
その女神が、ポンコツで仕事が出来ないこと。
そんな女神が、俺をこっちに送る前の仕事を焦ってやっていたこと。
まさか俺は、
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