第6話 演技上手
「…………」
「…………」
側に居る教頭先生や他の先生達も、結花の姿を見て、言葉を掛けられない状態だ。
だが、僕だけは……
(孝太郎…。即死じゃ無かったか…)
「……」
(さて、どうやって、結花に声を掛けようかな?)
(周りに教頭達が居るから、上手に演技をしないと怪しまれるな…!)
「えぐっ、ひぐっ、―――///」
結花は僕を抱きしめながら、
此処は、子どもらしい演技が求められる。
だが、ドラマ通りやっては駄目だ。あくまで自然体で無いと……
「ゆっ……じゃなく、お母さん!///」
「お父さんは……そんな簡単に……死なないよ!///」
僕は悲しい表情を成るべく作って、もっともらしいことを言う。
これで、僕が涙を流せば完璧なんだが、嫌いな人間に涙を流すことは出来ない。
「陽向!//////」
「私だって……それを願っているわ!//////」
「でも……、でも……陽向~~//////」
結花は、涙を流しながら泣き顔で僕に言う。
美人はどんな表情でも絵に成るが、此処まで泣き顔に成ると、少し罪悪感を感じてしまう。
「おっ、お母さん!///」
「早く、病院に行こうよ!!///」
「もしかしたら、お父さん。意識が戻っているかも知れないよ!!//////」
僕は頬を染めて、希望を持った表情で結花へ言う。
そんなこと微塵も感じていないが、そう言わないといけない。
職員室で結花が泣いていても、僕はどうすることも出来ない。
これが家で有ったら、結花へ慰めのキスなどが出来るのだが、この場所では出来ない。
「……そうだね!///」
「……陽向の言う通りだ!//////」
「病院へ向かいましょう……//////」
僕の言葉で冷静さを取り戻した結花は、頬を染めながら真面目な表情で僕に言う。
結花は僕を抱きしめるのを止めて、恥ずかしそうな表情で教頭先生に言い始める。
「……お見苦しい所をお見せして、申し訳ありませんでした!///」
結花は言葉の後。教頭先生へ頭を下げる。
教頭先生は困った笑顔で、結花へ言い始める。
「いっ、いえ……事態が事態ですから!///(汗)」
「ご無事だと良いですね……新居浜さんのお父さん…///」
「……はい。無事だと信じたいです!//////」
「ありがとうございます……教頭先生///」
結花は頬を染めて、顔を
結花は教頭先生への言葉の後。僕に顔を向けて、頬を染めた真面目な表情で言い始める。
「陽向……今から、お父さんが居る、病院に向かうから!///」
「うん……///」
僕は余計なことを言わずに、静かに真面目な表情で頷く。
……
僕は結花と職員室を出た後。小学校の駐車場に待機させていたタクシーに乗り込んで、孝太郎がいると思われる病院に向かう。
結花は普通自動車免許を持っているが、結花専用の自動車は持っていない。
結花は自宅から僕の小学校までタクシーで来て、そのタクシーで病院に向かっている。
「…………//////」
「…………」
タクシーの車内はとても重苦しい空気で有り、結花は泣いてないこそ、頬を染めた涙顔で有り、時々ハンカチで涙を拭っている。
中年男性タクシー運転手も事情を理解してしまうので、どうしようもない表情で運転をしている。
(事故の状況が分からないが、周りに被害が出ていないと良いな……)
(単独事故なら、警察も甘めの捜査をするが、他人を巻き込むとめちゃ真剣に調べ始めるからな!///)
……
僕の小学校からタクシーに乗車してから、約30分後……
タクシーは、とある総合病院に到着する。
僕と結花はタクシーから降りて、総合病院の正面玄関から入ると……フロアに男性警察官が二人いる。
一人の男性警察官は若く、もう一人の男性警察官は階級を持っている警察官だろう。
そして、孝太郎の職場上司だと思われる男性も、僕と結花の方を見る。
僕はランドセルを背負っているから、僕達を見て、当事者だと判断したのだろう。
一人の若い男性警察官が、僕と結花の方へ近付いて来て、真面目な表情で声を掛けてくる。
「新居浜さんの……ご家族の方ですか…?」
流石、警察だな!
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