第47話
傾国の美女(または魔女)は、魔の王を倒した聖女の末裔だったんですって。私が調べるようにお願いしてから3年以上かけて、大魔道士ファレス様が調べてくださったんです。
なんでも大魔道士様は、伝説の魔法使いの子孫だったらしくって、過去に記された古文書みたいなものを読み解いて、ようやく、世の中を破滅へ導く美しいピンクローズの髪の女が何なのかを知ることが出来たみたい。
何度も繰り返すループの中で、アリサは何度も殺される事になったんだけど、殺された後の呪いの発動が、それはそれは口にするのも憚られるような物なのですって。
殺さず、世の中を呪わずに、うまいことやるにはどうやったら良いのかなぁと考えたそうなんだけど、愛憎で拗れまくった聖女は元彼のもとへ、つまりは勇者の子孫が住み暮らす地へと送ってみたらどうだろうかと考えたみたい。(そもそも、東の果てにあるサガルマータ山脈は追放の地とされているらしい)
そんな訳で、アリサを雪山の中に放置してファレス様は帰って来たそうなんだけど、雪の山に放置っていう所に、自分の所の皇帝が愛する皇妃を害した、それに対する恨みと怨念みたいなものを感じるわね。
それで無事に勇者の末裔に回収されて、二人は仲良く暮らしているみたい。
今は勇者の直系は最後の一人になっていて、山の中でも一番高い場所に住んでいるそうなの。集落の端も端、みたいな場所で、兄妹みたいにして暮らしていたんだけど、この度、アリサが15歳を迎えて成人をしたのを機に、二人は結婚をしたみたい。
わざわざアリサの結婚の報告をしに、スヴェン皇子がヴァルカウス王国まで来てくれたんだけど、
「俺は客人だよな?客人を前にして、お前のその態度は一体なんなんだ?」
と、お怒りの様子。
それもそのはず、私は今、アルヴァ殿下の膝の上に乗ったままの状態で、
「妊婦には果物がいいんだって、はい、酸っぱいの、あーーん!」
と言われて、あーんしてもらっているの。
殿下はギリギリのところで私を救い出す事に成功したものの、
「もう無理!心配で心配で!とてもじゃないけどイスヤラと離れていられないよ!」
ギロチンを破壊しまくったというのに、最後に残った一台のギロチンで刑に処させる所だった私に対して、色々と思うところがあったようで、私が成人するのと同時に結婚。
殿下16歳、私15歳、ループ中であれば、この一年後にはアリサが現れて、私たちの仲を引き裂いていく事になるんだけど、その前に結婚。
「早いよ!早い!早すぎるだろう!」
と、お父様は泣いて悔しがったけれど、
「生きているうちに何があるかわからないんだから、結婚したいという時にさせてあげるのが私たち親の役目でしょう?」
という母の意見に流された。
その一年後には子供を妊娠して、デロデロに甘やかされている所に現れたスヴェン皇子は砂を吐きそうな顔をしている。
ギロチン刑から私が救い出された少し前の事、殿下の侍従で護衛で影の番人のミッコの案内で王都へと侵入した殿下は、
「王城広場で処刑があるらしいよ!」
という道行く人の話を聞いて、急遽、一人だけ離脱して王城広場を目指そうとして止められた。(当たり前だけど)今から敵を倒して王城を解放しようという時に、何で王城広場なんだと、そっちは他の人間を送るから任せておけと言われたらしい。
諜報に長けたミッコでも、まさか私が王城広場で処刑をされる等とは思いも寄らなかったようで、自分の部下に対応させるから任せておけとまで言い出したそうなんだけど、
「王太子権限を発令する!」
と、殿下は言い出して、王城内で待機する元黒龍騎兵団の副官であるヤスペル・パロと騎兵団長のグスタフの連携に期待して、後は任せると言い切った。
そうして一人で向かおうとする殿下にカピア族がついていこうとしたんだけど、そこでスヴェン皇子が、
「我らがアルヴァ王子と同道するから、カピアは王城解放のために尽力願いたい」
と、言い出した。
教会派の人間はスヴェン王子が自分たちの後ろ盾だと考えているから、油断してこちらの言う通りに動いてくれるだろうという事で、アルヴァ殿下はスヴェン皇子と親衛隊の方々と共に王城前広場に移動、そうして私を助けてくれたという事になるわけだ。
殿下が王城を解放するために動くことはすでにお父様も知っていた為、公爵領の領主軍や王国所属の部隊を使って王都全体を包囲。
隠密理に活躍するミッコと黒龍騎兵団、ヤスペル・パロ率いる近衛兵団が共同戦線を組めば、あっという間に寄せ集めの部隊は瓦解する。
王都から逃げ出そうとする『聖騎士』と名乗る輩どもはお父様たちが無事に捕縛、裁判の末、一部は死刑、その他大勢は鉱山送りとなったのだった。
神殿に監禁されていたスーリヤ姫と聖女イザベラはすぐに解放されたのだけれど、
「黒龍騎兵団が西に向かうと言うのならば、私たちも指揮向上、傷病兵の看護、治療のために共に向かう事にする!」
と、何かに目覚めた様子の二人が言い出した。
十歳の王女と八歳の聖女に一体なにが出来るのかと疑問に思うだろうけれど、戦地では意外なほどに活躍したらしい。
王都では演説をするだけで、あまり活躍はみられなかったスヴェン皇子も、親衛隊百騎を引き連れて共に移動。
アテネウムとの戦いは『黒の祝福』という特殊な麻薬を使用した発狂兵団との戦いが壮絶を極めたそうなんだけれども、テンペリアウキオ首長連合の騎馬部隊とカピア族との共闘が大きな打撃を与え、殲滅に成功。
ここではスヴェン皇子もがむしゃらに戦って活躍したらしい(自分の所為で広がった麻薬に対する後悔と責任感から戦ったんだろうと思うけど)
発狂集団が消滅してからはアテネウム軍はなし崩し的に崩れていって、最後には王都でクーデターが起こり、王位が順位の低い継承者へと移譲されて、戦争はアテネウム国土の切り売りによって(賠償金を用意出来なかったらしい)終結する事になった。
アテネウムを抑えるためにやってきたテンペリアウキオの天才軍師、ジナイダ・アブドゥマルクは、
「うちの鉱石も適正価格で売買にしてもらえるようになるし(異常な安値で卸している事には最初から気づいていた)王国だけでなく帝国にも鉄鉱石をおろせるようになったし、アテネウムの農地を手に入れる事が出来たし、黒龍騎兵団が来るまで、4万の部隊を抑えるのは骨が折れたけど、見返りがそれ以上だったから全然いいです〜」
と言って、るんるん気分で帰って行ったらしい。
アルヴァ殿下は帝国に向かう前に、ジナイダ様にアテネウム軍の阻止を願い出ていたのだそうで、
「鉄鉱石が高くなるのは国として痛いけど、滅びる事を考えたら別にねぇ・・・」
という事らしい。
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