第5話 パターン化
僻地の学校ではいじめがないかと言われれば、すぐ簡単に「はい、そうです」とは答えられない。
僻地の学校でも、うわさ好きな人間は一定の割合でいるし、陰湿なシカトもある。
ただ大きな学校と違うのは、人数がいないから、いやでも嫌いな相手と接しなければいけないから、表面上では仲良くしないといけないだけだ。
だから、都会の学校からはいじめがないように見えるだけだ。
地元生は小学校のときからの顔なじみだからお互いの性格がわかるというのもある。
パターン化できるのだ。
このときはこうすればあの人は怒らない、こうすれば機嫌が良くなるとか、いろいろな複雑なパターンを身体で沁みついているのだ。
「悠馬はその転校生と仲良くしたいよな?」
宗佑の期待が混じった声にびっくりした。
まだ、顔も知らない人間と仲良くしたいなんて何でそんな軽々しく言えるのだろう。
もしかしたら、すぐにキレてばかりで性格が最低なやつかもしれないのに。
まあ、鵜戸中では人数が少ないからめったに来ない、留学生以外の転校生の存在に期待を寄せたいんだ。
「うん……。でも、傲慢なら付き合いたくないな」
「ああ、私立中から転校してくるから? でも、どこのお家の人間なんだろうね。戸高さんの里親の友輝じいちゃんのお孫さんかな」
友輝じいちゃんのお孫さんは東京にいるんだろう。
しかも、息子の義輝さんの子どもさんは女の子だし、まだ小さいと思うんだけど。
それに多くの元住民と同じく帰って来ないのだ。
悠馬はそのまま気だるい様相をした校舎の中に入って行った。
どこの人間なのか知らなくてもいい。
どうせ、どこの集落の人間なのかはすぐにばれるのだから。
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