第4話 カップル


「いいよ、いい! 悠馬、マジ、それいい!」


「そうかも、冷めきった社会をとらえているよ。黒木君」


 ふたりはすっかり意気投合している。


 案外このふたりは仲がいいかもしれない。


 そのうちお付き合いを始めて高校卒業と同時に結婚してラブラブ新婚カップルになりそうだ。


 そして、子どもを五人くらい作って宗佑は浮気も絶対しない子煩悩パパになる。


 最近、宗佑と戸高さんがよく話にくっついているのを見て不審に思ったのだ。


 


 鵜戸中は生徒が少ないからカップル誕生はなかなか生まれない。


 女子の人数が男子よりも少ないのもある。


 地元出身の女子は全校生徒では一人だけだし、三年生と一年生に一人ずついる女子はみんな留学生だ。


 しかも、留学生で来る子たちはいじめられて来たケースがほとんどだから、華さやかがなくしかも超がつくほど暗い。


 新学期の頃は話しかけただけで泣く人もいるくらいだ。


 だから、戸高さんみたいにテンションが高い人の方が珍しい。




 今年の春に悠馬の家のやって来た留学生の森木春汰君は元ネット中毒だったらしく、オタク特有の人を寄せ付けない暗さの臭気を、悠馬と共同で使っている部屋中に年季の入ったに漂わせ、忍びよせて持ってきたスマートフォンを常にいじっていた。


 だが、そのスマートフォンも取り上げられてしまった。


 規則なのだ。


 留学生はパソコンやスマートフォンを使ってはいけないっていう厳しい規則。


 春汰君は同じ年齢なのだがかなり幼いところがあって社会性は過少に等しい。


 挨拶もろくそこ出来ず、茶碗を片付ける、自分のものは洗濯して物干しで干すなどの基本動作が全然出来ていない。


 悠馬と話すときも一方的に好きなアニメの話をして困らせた。


 いつもブスってしていて母を困らせている。


 夕食はよく残すは、風呂に入った後は、よく泡で汚すは、だらしなくテレビを占拠してチャンネルを変えただけでも怒るは、で大変だ。


 そう言えば春汰も戸高さんと同様、前の学校でいじめられたって聞いた。


 いじめられるタイプでも性格に差があるのはある意味驚く。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る