第2話 転校生


 意外な言葉が出てきた。


 その転校生という珍しい響きが悠馬には新鮮なものに感じたのだ。


 今はちょうど期末テストが終わった頃だ。


 たった十名の全校生徒がすぐ目の前の夏休みを楽しみに待っている。


 そんな中途半端な時期に転校生なんて来るのだろうか。




「転校生って、男? それとも、女?」


「それがなあ、男らしいんだ」


「へえ、そうなんだ。二年?」


 そういうと、宗佑は顔をはにかみさせながら、そうだよ、と言った。


 どうやら転校生は同学年だということはわかった。


「じゃあ、今日の朝礼にでも来るのかなあ」


「まあ、そうだろうな」


 宗佑とともに校門へくぐると随分と年季の入った校舎が苦しげに建っていた。


 校舎は何とか地上にしがみついているかのようにも見えた。


 だが、早々は壊れやしないことはわかっている。


 このおんぼろ校舎は悠馬と宗佑の父や母も通った古の建物なのだ。


 この僻地の学校には似合わない大きな校舎は朝に来る生徒たちを黙って見つめていた。


 現在使われている教室は三つしかない。


 全校生徒がたったの十人なのだから当たり前といえば当たり前だ。


 でも、学校内には教室は六つもある。


 空き教室は夜になると幽霊が出るらしい。


 そんな怪談話も頷けるほどこの空き教室は閑散としていた。




「おはよう、海野君たち。ねえ、転校生が来るらしいよ」


 眠い朝に大声を上げるのは女子の戸高夕実だ。


 戸高さんは留学生でうわさによれば前の学校でいじめられてこの鵜戸岬中に来たという。戸高さんはズケズケとした物言いをする女子だった。


 だから、いじめられたのかもしれない。


 今は悠馬の家のお隣さんの友輝じいちゃんの家に下宿させてもらっている。


「海野君たち、転校生って私立中からやって来るんだって!」


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