第581話 ナガクラファミリー拡大中

「きゅぴ、きゅぴ、きゅっぴぃ~♪」


「フレムちゃん落ちないでね」



どうやら子フェニックスのフレムは、カスミの頭の上、うさぎ耳の間を定位置として落ち着いたらしく、きゅぴきゅぴ鳴きながらご機嫌だ。


ただ見た目が赤い毛玉にしか見えないのがなんだかなぁ


まぁフェニックスに見えたら騒ぎになるから良いんだけどさ



「シン殿、ちょっと良いですか?」


「構いませんけど」



子フェニックスのフレムと戯れるカスミをみてホッコリしていると、少し困ったような表情のウェンディさんに声をかけられた。


最近すっかり影が薄いウェンディさんだけど、これは俺のせいでもあるんだよな。


出会った当初はグイグイ来てたウェンディさんだけど、それを俺が嫌がったから今では俺の5歩後ろを静かに歩いて付いてくるようになってしまった。


実際に5歩後ろを付いて来る訳では無いんだけど、あくまでもそういう心意気で俺と接するようになってしまい、とても申し訳無い気持ちではある。



「シン殿と一緒に帰って来た人、ビューティー・サワタリですよね?」


「仰る通りビューティー・サワタリさんですけど、ウェンディさんはビィさんに会った事があるんですか?」


「いえ、1度もありません。

サワタリ一族の事は出来るだけ情報を集めるようにしてますから、初代のヒーローから最近生まれたゴッドジュピター・サワタリまでの似顔絵もありますし、エレガント・サワタリが分家を作って今では直系派と分家派で対立してるのも知ってます。」



えっと、、、


ゴッドジュピター・サワタリのインパクトが強過ぎる!


凄く強い子に育ちそうではあるけれど


男なの?女なの?


俺の子供じゃないからどちらでもいいんだけど


昭和のロボットアニメ、『六神合体ゴッ○マーズ』をリスペクトした名前なのだろうか?




「ウェンディさんは、ヒーロー・サワタリが眠れる森でやらかしちゃった事件のせいで、ビィさんを受け入れられないですか?」


「サワタリ一族とは仲良く出来る気は全くしませんけど、いち個人としてのただのビューティーさんとなら仲良くなれる可能性は充分にあると思ってます。

ただミリアリア様が、、、」



結局そこに行き着いちゃうか


現在の眠れる森の族長であるフレデリカさんは、約200年前にヒーロー・サワタリから直接


『金髪でペチャパイじゃなきゃエルフと認めない!』って言われた被害者だ。


そしてフレデリカさんの娘がミリーさんだからなぁ


エルフ族の面目とか色々あるだろうから、ミリーさんの意思は関係無くサワタリ一族と仲良くは出来ないのかもしれない。



「うーむ、とりあえずミリーさんもビィさんもお互いに不干渉って事で収まりませんか?」


「ここは眠れる森では無いですし、エルフの友であるシン殿の連れて来た客人なら歓迎はしたいです。」



『エルフの友』、そう言えば眠れる森の皆さんに芋の食べ方を教えてそういうのになってたんだっけ?


すっかり忘れてたわ!


ただなぁ



「ウェンディさんのその言い方だと、やっぱり駄目ですか?」


「駄目では無いですけど、エルフの友では少し権限が弱いと言いますか、ビューティー・サワタリを客人として有無を言わさず歓迎するには、あのう、、そのですね、、、」



こんなに歯切れの悪いウェンディさんは珍しいな


よほど言い難い方法なのか?



「俺とウェンディさんの仲じゃないですか、はっきり言って下さいよ」


「わっ、分かりました!シン殿がエルフの家族になれば問題ありません!」


「それは、俺とエルフの誰かが結婚するって事で合ってますか?」


「誰か、では無くてですね、ミリアリア様か私のどちらかと結婚ですね」


「ちなみにウェンディさんとミリーさんの関係は?」


「えっと、族長のフレデリカは私の姉なんです。なので私はミリアリア様の、、、叔母?」



あちゃ~


長命種族故のややこしい血縁関係が出ちゃったよ


フレデリカさんはミリーさんの母親で、ミリーさんを生んだ後で、妹のウェンディさんが生まれたって事か


だからウェンディさんはミリーさんの年下の叔母になる、、、のか?


あかーん、ややこし過ぎる!


ようするに俺がフレデリカさんの家族にならないと駄目って事ですね、了解です。



「そしたらウェンディさんはおにいちゃんの第5夫人だね、おめでとう♪」


「メリルさん、ありがとうございます!」


「え?!ちょっ、メリル?」


「ウェンディさんだけ仲間外れは可哀想でしょ?」



えぇっ?!


そりゃあウェンディさんの性格を考えると、何十年でも俺の事を待ってそうだから放っておくと可哀想な事になるだろうなと思うし、そんな事にはしたくない。


長命種族のエルフなら俺の寿命が尽きた後でも再婚は可能だろうし


結婚から始まる恋があっても良いじゃない!



「あのう、ウェンディさん、俺には奥さんが6人になりますけど良いですか?」


「エルフは子供があまり生まれないので子沢山になったら凄く楽しそうですぅ♪」


「そっ、そうですね」




ウェンディさんが喜んでくれるなら俺に文句なんて何一つ無いけれど


やっぱり俺には一夫多妻とか一妻多夫の夫婦関係はよう分からん!


だがしかし、ちょっと待てよ



「あのメリルさん、ウェンディさんは第6夫人なのでは?」


「ウェンディさんは最初からおにいちゃんとの結婚を望んでたから、順番的には第4夫人でも良いくらいだよ。

ペトラ様は妾予定だったから第5夫人が妥当かなって」


「あっ、はい、了解です。」








新たな奥さんを迎え、ナガクラファミリーは順調に勢力を拡大中


この先何処に向かうのかは、それは神のみぞ知るところである。






つづく。

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