第580話 お漏ら火

「シンさんにヨウコさんありがとう。ここで大丈夫よ」


「これくらいお安いご用で、、、どわぁっ?!」



オリビエさんの引いてたリヤカーを、我が家の前までヨウコさんと一緒に押して来たまでは良かったんだけど、、、


わっ、我が家の玄関ロビーがコロコロカート組み立て工場になっとる!


一緒に住んでる池田屋商会の従業員が居るのはいいとして、こども園の年長組まで駆り出されて、流れ作業で大小様々なコロコロカートがどんどん組み立てられて行く。


むむっ?!


よく見たらアルテミスさんとペトラ様が設計図を片手に、次々指示を出して現場監督みたいになっているではないか!



「おにいちゃんお帰りなさい、随分早かったね」


「ただいまメリル、それっ!」


ぎゅぅぅ


すぅーはぁー、すぅーはぁー、、メリルは良い匂いがして、精神的疲労が消えて行くぅ~♪



「えーーーっと、、、、、、そろそろ離して欲しいかな(照)」


「だがことわーる!出発して数日しか経っていないはずなのに、随分久しぶりに帰って来たような気がするから、もう少しこのままで!」


「もう!しょうがないなぁ」



ふふっ


なんやかんやで優しいメリルが俺は世界で1番好きやで♪



「あっ?!ちょっとシンさん、メリルさんといちゃいちゃしてないでコロコロカートの組み立て手伝ってよ!

注文殺到で全然追い付かないんだから」


「待ちなさいよペトラ様、いちゃいちゃはしてないし!

あのメリルさん、コロコロカート販売って今どうなってるの?」


「アルテミスさんの仲介でタウラス子爵にコロコロカートのサンプルを送ったんだけど、、、」


「だけど?」


「その結果こうなりました。凄くて儲かってるから問題無いよね!アハハハ」



待て待て待て!


メリルが渇いた笑いをするとか、俺が留守の間にどんだけ注文があったんや(汗)



「オリビエさん、説明を求む!」


「説明って言われてもねぇ、コロコロカートの受注書を見ると商会名義が3割、個人名義が7割だから、馬車すら持ってない駆け出しの行商人がコロコロカートの噂を聞き付けたんじゃないかしら?」



なるほど


確かに馬車が無ければ商品を背負うしか無いから効率は凄く悪い。


コロコロカートなら背負う荷物の2~3倍くらいは運べるだろうから、そりゃあ買うか。



「ダンナお帰り~、早かったんだね」


「おう、ただいま。ケイトは何してるんだ?」



ケイトが、ニィナ・カスミ・スミレ・ウェンディさんの4人を乗せたキャリーカートを引いてやって来た。



「えっと、耐久試験?ってやつをやってるんだぁ」



貴族にも販売するなら耐久試験も必要になるか、これは耐久試験専門の人を雇うべきかもしれない。


要検討だな!



「そうそう!カスミこっちおいで」


「はい、なんですか?」


「ジャジャーン、カスミにはこの卵を託す」


「赤い卵?」



カスミに渡したのはビィさんが炎を纏う鳥から託された、燃えるような赤い色をした卵だ。


家族の中で誰に渡そうか迷ったけど、卵から子フェニックスが出て来るのであれば、カスミが1番良いような気がする。



「その卵からはフェニックスが、、、あれ?なんか卵にヒビが入ってるような」


「ごっ、ご主人様、生まれます!」



まぁ、卵だから既に生まれてはいるんだけどな。卵が孵る、もしくは孵化だな。


そんな事はどうでもいいんだよ


パリ、、パリパリ、、、バリッ、、



「きゅぴぃーーーー、ボゥッ!」


「「「「「生まれたっ!」」」」」



いやぁ~、カスミに渡した途端に卵が孵るとは、カスミの体内にある何かしらのエネルギーが切っ掛けになったんだろうけど、俺の勘に狂いは無かったか♪


真っ赤な毛に覆われたまん丸体系のヒナは、間違いなくフェニックスの子供だ。


きゅぴきゅぴ鳴きながら口から炎が出てるもの。


だがしかし、このままではいかん!



「おい子フェニックス」


「きゅぴ?ボゥッ」


「俺の言葉は理解してるな?」


「きゅぴ!ボゥッ」


「それは良かった。ならば今すぐお漏ら火を止めろ!」


「きゅぴぃ~?ボボゥッ」


「首をかしげながらお漏ら火を増やすんじゃあない!」


「あのご主人様、この子の口から出る火は全然熱く無いですよ」


「そうかもしれんけど、躾は大事!」


「あの、子フェニックスさん、火を漏らさないように出来ませんか?」


「きゅっ、きゅぴ、ボッ、、、きゅぴ、ボ、、、きゅぴ、ポス、、きゅぴ、プスン、、きゅぴ、、、、、きゅぴぃー♪」


「「「「「おおっ!」」」」」



ほっ


なんとかお漏ら火は出なくなったか


あのままお漏ら火が出続けたら、創造神様に文句を言う所だったよ。



「きゅぴきゅぴ!きゅぴぃー(汗)」



ふむふむ


生まれたばかりだというのに、子フェニックスは俺の考えている事を察したらしい。


いや、もしかしたら顔を青くしているシエーネさんかヨウコさんから注意を受けたのかな?



「ちゃんと火のコントロールをしてくれれば大丈夫だから。という事で、この子はカスミに任して良い?守護獣的な感じになると思うけど」


「はい、立派なフェニックスに育ててみせます!一緒に頑張ろうね、、、フレムちゃん」


「きゅぴぃー♪」



子フェニックスの名前はフレムに決定!






つづく。

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