第579話 帰宅

「ナガクラ君、そろそろキャラバンシティの上空だよ」


「了解です。それじゃあ皆さん馬車に乗って下さい。」


「「「「はーい」」」」



王都からここまで1時間くらいだったけど、ビィさんもソニアさんも馴染むのが早くて助かるよ。


もしかして2人とも、色々と諦めてるだけだったり、、、


おっと、余計な事は考えてはいけない!




「ヨウコさん、転移で我が家の庭にお願いしまーす。」


「行きまーす。それっ!」


ヒュッ、、パッ


無事に無駄に広い我が家の庭に到着っと



「ビィさんソニアさん、ようこそ我が家の庭へ」


「え?ここがナガクラ様のご自宅なのですか?領主様の屋敷では無くて?」


「元々は前領主の屋敷があったんですけどね、家族と商会の従業員と知り合いのドワーフと一緒に住む事にしたんで、前領主の屋敷は壊して新居を建てました。」


「たっ、確かに大きな家ですね」


「ビィ様、あれを大きな家と呼ぶと、普通の領主の屋敷は馬小屋になってしまいます。

そして王都の騎士団の宿舎はネズミ小屋ですね」



おーい、ソニアさーん


さすがに王都の騎士団の宿舎をネズミ小屋呼ばわりは酷いと思う。


せめて犬小屋にしてあげて欲しい。


もし王都の連中と敵対する事になった場合は、清潔な個室を対価に騎士団の団員を引き抜く事も考えておこう。


まぁシャワールームと温水洗浄付トイレを見せれば、女性団員の引き抜きは簡単そう、、、っていうか、今から女性団員の引き抜きはしても良いのかもしれない。


ある程度王都の情報も仕入れたいし、再就職先として、見廻組4番隊を設立して警備の仕事を用意すれば、2~3人は来てくれるだろ。





「2人はキャラバンシティに来てどうする予定だったんですか?」


「アストレア様に隠れて暮らせる場所を紹介して貰うつもりです。」


「なるほど、命を狙われるかもしれないんでしたね。じゃあしばらく我が家に泊まって下さい。

ここから見える通り大きな家で部屋も余ってますし、部外者は入れませんから安全ですよ。」


「しかしですね、関係無いナガクラ様をこれ以上巻き込む訳には」


「アストレア様は私の義母なんでガッツリ巻き込まれてるんですよねぇ~、アハハハハ」


「義母?!もしかしてナガクラ様はピスケス伯爵と側室の子なのですか?」



あぁ~


平民でアストレア様が義母になる人って、普通はそういう想像をしちゃうのか、なかなか勉強になる。



「いえいえ、ピスケス伯爵令嬢のアルテミスさんと結婚するんですよ。近々結婚式をするのでビィさんもソニアさんも出席して下さいね」


「、、、あっ、はい」


「そうか分かった!ピスケス伯爵はキャラバンシティを拠点にして、神獣と協力して国を興すつもりなんだ!だから活動資金を得る為にアルテミス様と池田屋商会会長との婚姻を」


ドスッ!


「ぐぇっ?!」


「ソニア、おかしな妄想は止めなさい」


「すっ、すみませんでした(泣)」



妄想が暴走したソニアさんのみぞおちに、ビィさんの抉るようなボディブローが決まって、鈍い音がしている(汗)



「えっと、王国十二家の中立派は何事も平和的解決を望んでいますので、そこんところよろしくお願いします。」


「はい、ソニアにもしっかり言い聞かせておきます。」


「さてと、庭で話してないで我が家に行きましょう。アストレア様も居るかもしれませんし」



「あら?シンさんじゃない、お帰りなさい。随分早かったのね」



振り向くと、何かの材料をたっぷり積んだリアカーを引いたオリビエさんが、外の通りから我が家の庭に入って来た所だった。



「オリビエさんただいま。色々あって予定変更して帰って来たんですけど、そのリヤカーの荷物は仕事用ですか?」


「ふふっ、実はメリルさんが試しに売ったコロコロカートの人気が凄くて生産が追い付かなくてね。工房でパーツだけを作って組み立てはこっちでしてるのよ」



そういえばステフ様の屋敷でメイドさん達にコロコロカートが大人気だったって話をメリルにしたら、オリビエさんと相談するって言ってたけど、キャラバンシティでもコロコロカートは人気だったか。



「という事は魔物のパイの素材でタイヤも作ったんですか?」


「勿論よ。衝撃吸収率が凄いから荷物を載せたままでも階段くらいは余裕で降りられるんだから♪今は馬車用のタイヤを研究中ね」



おおっ!


ついにゴムタイヤに代わるタイヤが誕生したか。


物流革命にまた1歩近付いたけど、コロコロカート販売に情熱を燃やしていると思われるメリルが、頑張り過ぎて人手不足になっていない事を心から願う。






つづく。

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