第576話 直系派と分家派

「私は聖女なんです。」


「えぇー?!」



なんとびっくり、ビィさんが聖女だったなんて。


そりゃあアストレア様も秘密にするはずだよ、ビィさんが聖女と知られると良からぬ考えの輩が集まって来ちゃうもの。



「えっと、ナガクラ様のリアクションを見ていると、聖女という存在を勘違いされておられる可能性があるので、一応説明させていただきますね。」


「はい、よろしくお願いします。」


「先ずは私が聖女になった出来事からお話します。


階段で滑って転んで頭を打った時に記憶が蘇ったのは既に話ましたけど、その直後に神託を受けたんです。

『池田屋商会と協力して食文化の発展を頑張って欲しいねん』という事でした。」


「あぁ~、その喋り方は間違いなくちーちゃんさんですね」


「当時は神託が来た衝撃で喋り方まで気にしている余裕が無かったですね。

神託が終わった後に私の体に聖属性の力が溢れ出して、ちょっとしたパニックでした。」


「なるほど、記憶が蘇った事がきっかけで神託を受ける才能が開花して、更に神託を受けた事で聖属性の力が目覚めたんですかね?」


「概ねその通りだと思います。聖属性の魔法を使える女性を『聖女』と呼ぶ訳ですが、最下級のアンデッドモンスター『スケルトン』を足止め出来る程度の力しかありません。」


「はっきり言ってかなり微妙な威力ですね。でも聖属性の真骨頂は回復魔法でしょう?」


「世間のイメージだとそうなのでしょう。しかし回復魔法を使えるのは『大聖女様』だけで、聖女は回復魔法が使えない、もしくは使えてもちょっとした切り傷を癒す程度ですね」


「魔法なら努力次第で修得や強化が可能なのでは?」


「今の研究結果では回復魔法は100%才能に起因するらしいです。ちなみに大聖女様が亡くなると、その才能を受け継いだ次代の大聖女様が誕生します。今の大聖女様は3代目ですね。」



うーむ


魔法を使うのに才能が必要なのは理解するけど、創造神様なら努力次第で回復魔法を修得したり強化出来るように設定してると思う。


もしかして国や神殿が回復魔法の修得方法を秘密にしてるのか?


その可能性はめちゃめちゃあるな!


魔力の強化については既に我が家のコニーとフラニーで実積があるから、聖属性魔法専用の強化方法もあるはずだ。


ただし面倒事に巻き込まれそうだから、これ以上回復魔法については触れないでおこう。



「実は聖女がそれほど凄い存在では無いのは分かりましたけど、ビィさんは命を狙われる可能性があるんですよね?」


「それは私が神託を受けられる聖女であり、ヒーロー・サワタリ直系の子孫だからですね。

『神託・聖女・直系子孫』の3つが重なると王国側も優遇しようとしますから、分家派が私を邪魔に思って暗殺者を寄越しても不思議ではありません。」


「分家派?」


「サワタリ一族は初代様の血を引く直系派と、エレガント・サワタリ様が興した分家派があります。既に察しが付くかと思いますが、直系派と分家派は仲が悪くて対立関係にあります。」


「エレガント・サワタリさんも初代様の直系子孫では無いんですか?」


「エレガント様は直系子孫ですが子供に恵まれ無かったので、初代様の奥様の親戚筋から養子を迎えて分家を設立されました。

現在の分家派筆頭はジャンヌ・サワタリ様で、神殿の神官長をされています。」


「えーーーっと、確認ですけど、神殿の神官長って言いましたか?」


「はい、ジャンヌ・サワタリ様は神殿の神官長です。申し訳ありません。」



ぐはぁっ!


関わったらあかん方のテンプレが迫って来てるぅー(汗)



「でもちょっと待って下さい、神殿って強引な方法は使わないって聞きましたよ?それでもビィさんは命を狙われるんですか?」


「神殿は領分さえ侵さなければ話の分かる組織です。しかし問題はジャンヌ派の人達ですね。」



ジャンヌ派だと?


直系派とか分家派とか更にジャンヌ派まで加わって、これは派閥多過ぎてわけわからんくなるやつぅー!



「よするにジャンヌ派は過激な集団なんですね?」


「アハハ、そういう事です。

ジャンヌ派は主に分家派の中から実力で成り上がった人達ですから厄介なんです。それに最近のジャンヌ様は乱心されているという噂もあります。」


「ふむふむ、ビィさんが聖女という事はジャンヌ派に知られてませんね?」


「はい、知られる前に旅に出て人生勉強をしてくると言って来ました。それに以前の私は本当に何も出来ませんでしたから、もしかしたら存在すら知られてないかもしれません」



そういう事ならさっさとキャラバンシティに戻って、創造神様に色々聞いた方が早いな。


となると浮島は何処にあるかなぁ~、、、あった!


ちゃんと俺達が乗る馬車に付いて来ている。



(シエーネさん、聞こえる?)


(ナガクラ君どうしたの?)


(ちょっと予定変更で浮島でさっさとキャラバンシティに帰る事にしたから)


(りょうかーい)



「という事でヨウコさん、馬車ごと浮島に転移をお願いします。」


「『という事』が何か全く分からないんですけど、まぁ良いです。

早く帰ってお藤お母さんの手料理を食べたいですし、スミレさんと一緒にお風呂にも入りたいですから。」


「あのナガクラ様、転移とは?」


「大丈夫です、危険はありませんから。ソニアさんもじっとしてて下さいねー!」


「え?そもそも私は御者をしてるので動けませんが、何かとんでもない事が起きる予感がします(汗)」


「ではそのままで!ヨウコさん、どうぞ」


「はーい、それっ!」


ヒュッ、、パッ


一瞬で浮島に到着♪



「なっ?!」「えっ?!」


「「ここは何処なのよぉーーー!!


なのよぉー、、、なのよぉー、、、なのよぉー、、、、、、のよぉー、、、、よぉー、、、、、」」





つづく。


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