第575話 ビィさんとの話し合い

実は本当の重要人物はビィさんで、護衛はソニアさんだった事が判明したから、ソニアさんが用意していた馬車に乗ってさっさとキャラバンシティに帰るぜ!


という訳で


馬車の中で改めて自己紹介した結果、ソニアさんの本名はソニア・ヘーゼル騎士爵。


幼馴染みであるビィさんの専属護衛となる為に、幼い頃から鍛練をして来た筋金入りの護衛だ。


そしてビィさんの本名は、、、



「私の本名は、、、ビュッ、、ビューティー・サワタリです。名前を聞いて分かるかと思いますが、勇者ヒーロー・サワタリ直系の子孫です。」


「あぁ~、、、改めてよろしくお願いします。これからもビィさんと呼んで構いませんか?」


「えっ?、、、本名を教えた後で私の事をビィと呼ぶ人は初めてです。」


「ええ、まぁ、心中お察しします。」



本名を名乗ったビィさんの反応を見て思う、こっちの世界でも名前に『ヒーロー』とか『ビューティー』と付けるのは一般的では無いのだと



「アハハハ、流石は創造神様に認められた御方ですね、これからもビィと呼んで下さい。

初代様は独特の感性の持ち主だったようで、子や孫の名前に『ジャスティス』『フリーダム』『レボリューション』『エレガント』『プリティー』等々の名前を付けています。私の名前も初代様の考えた名前の中から付けられました。」



うーむ


やはりヒーロー・サワタリは中二病を拗らせちゃってる人だったか


個人的には勇者の子孫って事であれば『ジャスティス・サワタリ』は有りだと思う。でも他がなぁ


特に『エレガント・サワタリ』は駄目だろ。名乗る時に自分で「エレガントです。」って言うのは辛いと思うよ。



「ビィさんが勇者の直系子孫なら神殿にでも保護して貰えば良いんじゃないですか?」


「普通はそう考えますよね。初代様は特殊なスキルや凄い魔法が使えたらしいんですけど、残念ながら初代様の能力を引き継いだ者の記録はありません。


それでも何時かは初代様の能力を引き継ぐ者が出る事を期待して国や神殿から優遇されていたのですが、それも初代様の築いた財産を使い果たすまでの話です。


多額の借金をした辺りで優遇措置は無くなりました。


それでも未だに初代様の能力を引き継ぐ者が現れるかもしれないからと、最低限の生活の保障はされています。


後はそれぞれ個人の才覚で成り上がる者は居ますけど、私も特別な能力も魔法も使えず冷遇されてますね。


ですが今から1ヶ月ほど前、神殿の階段で滑って盛大に後頭部をぶつけた時に蘇ったんです。前世の私は佐渡英雄の妹だった事に、と言っても妹だった事と遠い国の出身だろうという事しか覚えていませんけどね。


ただ初代様が残した日記に書かれている文字が『漢字・ひらがな・カタカナ』という文字であることを理解出来るようになりました。


前世の記憶が甦るまでは記号にしか見えなかったんですけど、何度も日記を読み返して初代様の名前が『佐渡英雄』である事や、簡単な意味の言葉を解読出来るようになりました。」


「ヒーロー・サワタリの日記があるんですか?」


「ええ、と言っても原本は神殿で厳重に保管されていますから、写本しか持っていませんけどね。よければ読んで見て下さい。どうぞ」



おおっ!


ビィさんが取り出した分厚い本はなんと、コク○のcampusノートを模写したであろう物だった。


写本だから表紙も全部手書きで模写したんだろうなぁ、『3年A組8番 佐渡英雄』の文字の模写に苦労した痕が滲んでいる。



「表紙まで模写しなくても良かった気はしますけど」


「表紙の文字も中身の解読に必要になるかもしれませんからね。

やはりナガクラ様は漢字を知っているんですよね?池田屋商会の求人募集に漢字が使われてましたから」



そういえばアストレア様に頼んで日本語で求人を出したんだっけ


元世界の専門知識を持った人を探す目的だったんだけど、俺の意図とは違った出会いに繋がったか。



とりあえずヒーロー・サワタリの日記を読んでみよう。ペラッと、、、ふむふむ、内容は普通の日記のようだ。


信号無視して横断歩道に突っ込んで来た車とぶつかる、と思ったら真っ白な空間に移動してて、女神様からこっちの世界で頑張れと言われたらしい。


あぁー


やっぱり創造神様とヒーロー・サワタリは出会っていたか。創造神様は全く覚えて無かったけどな。


その後は異世界での苦労が延々と綴られていて、冒険者ギルドで絡まれてムカついたとか、パーティーを組んだ女に金を持ち逃げされたとか


サワタリ君も大変だったんだなぁ。同情はしないけどな!


レベルが上がって高ランクモンスターを狩って稼げるようになると、旅に出てこの世界を満喫し出す感じかな?


ざっと読んだ限り重要な事は書いて無いな。



「ビィさん、よければこの日記コピーさせて貰えませんか?」


「構いませんよ、私達もしばらくキャラバンシティに滞在しますから、その間に写本して下さい。」


「便利な道具があるんで少々お待ち下さい。」



デジタルカメラを取り出して


カシャカシャ、カシャカシャ、カシャカシャ、カシャカシャ、カシャカシャ、カシャカシャ、カシャカシャ


はい完了!



「おおっ!もうコピーし終えたのですか?」


「はい、日記はお返しします。」


「便利な道具があるんですね、その道具があれば他の書物も写本して持って来れたのですが、残念です。」


「もしかして初代さんが書いた物が他にもあるんですか?」


「いえ、おそらく違うと思います。」


「おそらく?」


「ええ、私も漢字を理解して日が浅いので確かな事は言えませんが、日記と違い凄く整った字でしたから、手書きでは無いのでしょう。」



へぇー


ノートに3年A組って書いてあったから、高校の教科書かな?



「その書物の背表紙にタイトル書いてませんでしたか?」


「解読出来たのは『聖女』という漢字だけですね。初代様の日記の中にも度々聖女の漢字が出て来ますし、私も聖女なので内容が気になってたんです。」


「ビィさんって聖女なんですか?」


「あれ?言ってませんでしたか?申し訳ありませんでした。私は聖女なんです。」


「えぇー?!」





つづく。

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