第574話 降臨

アストレア様から依頼された『とある御方』と思われる2人の女性と一緒に教会にやって来た。


ここなら万が一の時は創造神様かちーちゃんさんが降臨してどうにかしてくれるはず!



「先ずは自己紹介しましょう。改めまして池田屋商会会長のシン・ナガクラです。隣に居るのは護衛のヨウコさんです。」


「私の名はビィ、隣に居るソニア様の専属護衛です。」


「わたくしがソニアよ。平民のあなたが直接わたくしと言葉を交わせる事、ありがたく思いなさい!」



外套のフードを取ったソニアさんは金髪の縦ロールで、漫画やアニメで見たことある分かりやすい貴族のお嬢様って感じの人だ。


ただし、ソニアさんは家名を名乗っていないし、アストレア様からも相手が貴族だと教えられていないから、普通の対応で構わないだろう。



「それでビィさん、色々と気になる事がお互いにあると思いますけど、聞いた方が良いんですか?面倒事に巻き込まれるなら何も聞きたくないんですけど」


「最初に謝っておきます。申し訳御座いません。今ここで聞かなくても池田屋商会は巻き込まれると思います。」



そりゃまぁ、もし目の前の2人がヒーロー・サワタリの関係者だとすれば、巻き込まれちゃうのは最早避ける事の出来ないテンプレ展開だよ。



「そういう事なら話せる事は全部聞きますよ。最初は『佐渡英雄 知る?』の意味を教えて下さい。」


「勿論全てをお話するつもりですが、我々にナガクラ殿を信用させて下さい。アストレア様が寄越した人ならそれだけで充分ですけど、念には念を入れておきたいので」


「ビィさんとソニアさんはもしかしなくても命を狙われてたりします?」


「アハハ(汗)今はまだ、としか言えません。」



うーむ、困った。


創造神様に何か美味しいお菓子でもお供えして降臨して貰えれば1発で解決だろうけど、ビィさんとソニアさんが『女神様至上主義』だった場合は凄く面倒な事になりそうだし、、、



「あ゛っ?!」「え?!」「ひぃっ(汗)」



突然ビィさんとソニアさんが何かに驚いてフリーズしちゃってるけど、早速暗殺者でも来たのか?


いや、これは違うな


ヨウコさんが急に土下座して微動だにしていないという事は、、、



(呼ばれて無いけど話進まなそうやから降臨したでぇ~)



おぅふ


まさかのちーちゃんさんが降臨しちゃったよ。



(せっかくウチが神託したってんから、さっさと腹割って話をしてくれんと困るで)


「ももも申し訳御座いませんでしたぁー!」



ちーちゃんさんが急に話しかけるから、ビィさんが土下座して謝っちゃってるよ、、、あれ?


ソニアさんが神託を受けられるような重要人物だから、ビィさんが護衛をしているんじゃないのか?


ソニアさんを見ると、口を開けてポカーンとしちゃってるから、ちーちゃんさんの声は聞こえてないっぽい。



(分かってくれたみたいやし、皆で仲良うやってや、ほな、ばいばーい)


「さようなら~」



ちーちゃんさんは『困る』、と言いつつも特に怒った様子もなくて本当に良かったよ。


これが創造神様だった場合、神の怒りが何処かに降り注ぐ所だよ(汗)



「ビィさんがさっきの御方に神託を受けたって事で間違い無いですか?ソニアさんでは無くて」


「はい、独特な話し方ですし間違い無いかと。まさか降臨して頂けるとは思いませんでしたけど。

そして、神託を受けた事を黙っていて申し訳ありませんでした。この事を神殿に知られると面倒な事になりましたから」


「あぁ~、神殿については色々と噂は聞いているので、心中お察しします。

ちなみにビィさんとソニアさんが祈りを捧げる神は決まってますか?」


「いえ、特に決めてはいません。

ポリマの教会では『神』に祈りますが、王都の教会では『女神様』に祈りを捧げています。」


「そうですか、ちなみに私は『創造神様』に祈りを捧げています。

では、さっきの御方は何の神様か、神託を受けたビィさんに教えて頂きたい」


「それは勿論『神』でしょう。ポリマの教会も『神』を祀っていますから。」


「ちなみにさっきの御方はちーちゃんさんって言うんですけどね、その辺りは私からよりもシスターさんに聞いた方が信じられると思いますから、どうぞ聞いて来て下さい」


「え?ちーちゃんさん?」



ビィさんは凄く戸惑いながらも近くに居たシスターさんに話を聞きに行ってくれた。


今回もちーちゃんさんの降臨にたまたま居合わせたシスターさんは、キラキラした棲んだ瞳で俺の事を見ているから、ビィさんの質問にも喜んで答えてくれるだろう。



「ねぇナガクラさん、あなたいったい何者なの?いえ、ビィ様と同じような素質を持った御方なのでしょうけど」



今までずっとポカーンとしてたソニアさんもようやく我にかえったらしい。


それにしても『ビィ様』ね、ソニアさんの話し方も変わっちゃったし


やはりビィさんの方がそれなりの立場の人で、本当の護衛はソニアさんって事なのだろう。



「ここでこれ以上話すより、さっさと出発してからゆっくり話しませんか?神殿に知られる前にキャラバンシティに行きたいのでしょう?」


「ええ、そうね。既に馬車は用意してあるから、、、ビィ様が戻って来たわ」


「ただ今戻りました。ふぅーー、情報量が多過ぎて頭がパンクしそうです(汗)」



アハハ


シスターさんに話を聞いたビィさんが頭を抱えてしまったよ。


神託をしたのが創造神様ならまた違っただろうけど、初めての神託がちーちゃんさんだもんな


お疲れ様です。


という訳で


ビィさんとソニアさんと一緒に、さっさとキャラバンシティに帰ろう!






つづく。

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