第573話 接触

「申し訳ございません。本日用意したテーナガエビカレーは完売しました。」


「「「「「なんてこったぁーーーー!」」」」」



はぁ~、疲れたよ。


用意していた100杯のテーナガエビカレーは1時間ほどで無事に完売した為に、テーナガエビカレーを買えなかった人達からは落胆の声が聞こえる。



「それではナガクラ様、カレーのレシピ販売開始日は26日後になります。当日は冒険者ギルドマスター、薬師ギルドマスター、露店組合長の3人が立会人となりますので御安心下さい。」


「あっ、はい、よろしくお願いします。」


「今後もナガクラ様がレシピ登録される時は登録料は無料ですので、ドンドン登録して下さいね♪では、失礼します。」



そう言うと商業ギルドの受け付けのお姉さんは、スキップしながらご機嫌に去って行った。


予定通り、コリアンダー・クミン・ターメリックの3種類のスパイスパウダーを使ったカレーのレシピは、販売開始日を指定して登録する事になった。


本人確認の為にギルドカードを提示して、俺が池田屋商会会長だと気付いた受け付けのお姉さんは


俺に向かって、それはもう素敵な笑顔をして来たさ


お姉さんの素敵な笑顔(圧力)に負けて、販売開始日を30日後にする所を26日後にさせられたけどな。


ちなみにカレーのレシピは販売開始日まで厳重に封印されて、販売当日に立会人が見てる前で開封するのだとか。


立会人も冒険者ギルドマスター、薬師ギルドマスター、露店組合長の3人で、利権がバリバリ絡んでいるから揉めて血の雨を降らせない措置らしいけど、難しい事は俺には分からん!



「ボルト君、今日はありがとう。報酬の大銀貨1枚ね、どうぞ」


「えっ?!ちょっと待ってよシンさん!確かにカレーを売るのを手伝ったけど、それだけで大銀貨1枚は多過ぎるから受け取れないよ!」



素直に受け取れば良いのにボルト君は真面目だねぇ。


そういう真面目な子供、俺は大好きだけどな♪



「受け取れ無いって言うんじゃ仕方ない。それじゃあ報酬は銀貨1枚と干し芋20枚で良い?」


「うん、それでも貰い過ぎだけど、テーナガエビ以外の食べ物は嬉しいよ♪」


「あと、中途半端に残ったスパイスパウダーはボルト君が処分しといてくれるかな」


「まだ半分以上残ってるけど処分しちゃうの?」


「俺は今日か明日には出発するから持ってても無駄になるんだよ。勿体無いと思うならボルト君が活用してくれれば良いよ」


「シンさん、、、

このスパイスパウダーは絶対に無駄にしないよ!飽きられないようにカレースープにしたり、他にも色々考えてみるから!」


「おう、頑張れよ!」




俺の意図を正しく理解してくれて嬉しいねぇ♪


ボルト君がカレースープを完成させたら、池田屋商会で作ってる『うどん』を売り込みに来るとしよう。


日本人に馴染みのある出汁の効いたカレーうどんじゃなくて、スパイスカレーうどんになるけど美味しそうだから問題無し!



さてと


早々に露店営業は終わってしまったんだけど、『とある御方』とやらには俺の事を見付けて貰えたのだろうか?


駄目だった場合は、また露店をしなきゃいけなくて凄く面倒なんだが、、、



「こんにちは、先程の露店の店主はあなたで良いだろうか?」


「はい、テーナガエビカレーを売ってたのは俺ですけど、露店は借りてただけなので店主とは少し違う?のかなと」



俺に声をかけて来たのは外套を羽織った冒険者風の女性。黒髪のショートヘアで身長は170㎝くらい、年齢は20代後半かな?


バスケットボールでポイントガードをさせたら凄く似合いそうな雰囲気の、バスケ女子だ。


そしてバスケ女子の後ろにもう1人、こちらは外套のフードを目深に被っているから確信は無いけど、身長160㎝くらいの小柄な女性?だと思う。



「とりあえずコレを見て欲しい」



バスケ女子が折り畳んだ紙を差し出して来たけど、受け取っても大丈夫なのか?


紙に強力な毒を染み込ませて紙に触れただけで相手を殺すっていう、暗殺者の映画を観た事があるから、すげぇ恐いんだよ(汗)


とりあえず隣に居るヨウコさんに念話で聞いてみよう。



(ねぇヨウコさん、あの紙は受け取っても大丈夫?毒とか染み込んでない?)


(普通の紙ですから受け取っても問題ありません。まぁ今のナガクラ様を毒ごときで暗殺するなど無理ですけどね♪)


(・・・そうですか)


俺にはいつの間にか創造神様の加護的な何かが与えられているらしいから、毒程度は問題無いようだ。



「では拝見します。ペラッと、、、っ?!」



バスケ女子から紙を受け取って開くとそこには


『佐渡英雄 知る?』


日本語で書いてあるではないか!


佐渡英雄の読みは『サド・ヒデオ』もしくは『サワタリ・ヒデオ』、このどちらかが一般的だと思う。


だがしかし


今このタイミングで俺にこんな紙を渡して来たという事は、『サワタリ・ヒーロー』と読む可能性大だ!



「その反応、やはりあなたは漢字が読めるのですね?」



なんと?!


漢字を知っているとはこの女、勇者ヒーロー・サワタリの関係者で間違いなさそうだ。


今さら誤魔化す意味も無いけどその前に



「答える前に確認をしたい。2人がアストレア様からの依頼の相手で間違いないですか?」


「はい、アストレア様にキャラバンシティまで行きたいとお願いしたら、信頼出来る人を寄越すからポリマで1番目立っている人を探せと言われました。

まさか池田屋商会の会長が来るとは思いませんでしたが」


「へぇー、どうして俺が池田屋商会の会長だって分かったんですか?」


「今やバルゴ王国で1番勢いのある池田屋商会ですから、会長を含めた幹部の人達については個人的にかなり詳細に調べました。」


「分かりました。教会に行って話ましょう。俺の知る限りポリマで1番安全な場所ですから」


「全てお任せします。」






つづく。

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