第572話 メインクエストを発動させる為に

「テーナガエビの唐揚げはいかがすかぁ~?1匹銅貨1枚だよ~、テーナガエビの唐揚げ美味しいよぉ~」



「なぁシンさん、いくらシンさんがテーナガエビの泥臭さを無くしたからって、街の皆はそんな事知らないから、テーナガエビは売れないと思うよ。」


「心配するなボルト君、ちゃんと対策は考えてある!」



浮島で1泊した俺とヨウコさんは夜明けと共にポリマに戻って来て、ボルト君にお願いしていたテーナガエビを受け取り、広場でテーナガエビの唐揚げを売っている。


しかし新たに露店を出すには色々と手続きが必要で面倒だったので、ボルト君がいつもテーナガエビを売っている場所を借り、ついでにボルト君にも報酬を払って手伝って貰っている。



今回はメインクエスト『とある御方の護衛』を進めないといけないので、俺も本気を出す!


テーナガエビが泥臭くて不味いせいで、孤児院の子供かスラム街に住んでる人しか積極的に食べないらしいので、テーナガエビの唐揚げは予想通り通行人に見向きもされない。


無料で試食を配ったり、宿や飲食店に持って行って売り込めばテーナガエビの人気も出るだろうけど、今はそんな悠長な事をしている時間は無い。


露店をやって『とある御方』に俺の事を見付けて貰う為には、短期決戦で勝負をかける!



先ずは


みじん切りしたタマネギ、ニンジンをフライパンで炒める。


野菜に火が通れば、クミン・コリアンダー・ターメリックの3種類のスパイスパウダーを各小さじ1杯ずつ、水200ml、テーナガエビの唐揚げをフライパンに入れて10分ほど煮込めば


超簡単、本格スパイステーナガエビカレーの完成♪


皿に盛り付けパンを1個添えて、1皿銅貨7枚で販売する。



ちなみスパイスパウダーは俺達と同じように露店で売っているのを見付けたから買っといた。


王都が近いからスパイスを薬として扱う行商人も居るだろうという予想が当たった結果だ。


スパイスパウダーの値段はどれも1㎏銀貨1枚で、安いのか高いのか俺にはさっぱりわからんけど、小さじ1杯ずつ使って2~3皿分くらいは作れたから、ボロ儲けの予感がするぅー♪


カレーの良い匂いがしているせいで、早くも人が集まり始めているけど、まだまだこれからだぜ!



「ヨウコさん、お願いしまーす。」


「はーい、それっ♪」



「「「「「ッ?!」」」」」



ふっふっふっ


ヨウコさんの風魔法によってカレーの匂いがかなり遠くまで行ったらしく、匂いの原因を探して街の人達がザワザワし始めた。



「さぁさぁ皆さん!テーナガエビを使ったカレーはいかがですかぁ~?

泥臭い事で有名なテーナガエビを、全く泥臭く無く食べられる新作料理だよぉ~。

おっ!そこの綺麗なお姉さん、もしかしてギルドの職員さじゃないですか?」


「えっ?!あっ、はい、商業ギルドの受付をしてますけど」



ビンゴ!


集まって来た野次馬の中に居たお姉さんの服装が、ギルドの受付嬢っぽかったから声をかけたけど、商業ギルドの受付とはちょうど良い♪



「商業ギルドのお姉さん、良ければ試食をしませんか?

全く人気の無いテーナガエビが美味しく食べられれば、ポリマの新たな名物になると思うんですよね」


「それはまぁ、最近はキャラバンシティで次から次に名物が出来るお陰で、ポリマの商業ギルドは肩身の狭い思いをしているので、テーナガエビが美味しく食べられるのなら大歓迎ですけど」


「ではおひとつどうぞ。当たり前ですが味の感想は正直にお願いしますよ?」


「ええ、商業ギルド職員として嘘偽り無く感想を言う事を誓います。では、いただきます。あーんっ、もぐもぐ、、なっ?!」


「ヘイヘイ、どうしたよギルドのねーちゃん、結局テーナガエビが泥臭くて不味いってオチですかぁ~?」


「「「「「ギャハハハハ!」」」」」



カレーがたっぷり絡んだテーナガエビを食べたお姉さんがフリーズしてしまい、それを見ていたチンピラ風の男達が馬鹿笑いをしているけれど、俺は全く笑えないぜ!


元世界だと、国民食と言われるくらい大人気のカレーだけど


カレーがお姉さんの好みに合わない可能性はあるんだよなぁ(汗)



「あのう、お姉さん、味はともかくテーナガエビは泥臭く無いでしょ?」


「・・・なっ、何コレ?ちょっ、ちょっと待って!泥臭いとか泥臭く無いとかどうでもいいわ!」



えぇっ?!


今回はテーナガエビが泥臭く無いのが1番のアピールポイントなのに、そりゃないよぉ~(悲)



「えーっと、味は美味しいって事で大丈夫ですか?」


「美味しいなんてもんじゃない!こんな美味しい料理は王都の飲食店でも無いわよ!!露店で売ってるって事はレシピ登録してくれるのよね!!!」



うぉい!


お姉さんの圧力ががががが(汗)



「レシピ登録すると儲けが減るので、今はちょーーっと無理かなぁ?」


「なんですって!確かにレシピが販売されると独占的に儲けるのは難しくなるのは理解するけれど、、、ぐぬぬぬ!」



俺だけの事ならレシピ登録しても良いけど、そうするとボルト君が稼げなくなってしまう。


レシピ登録するとしても、クミン・コリアンダー・ターメリックの3種類のスパイスを使ったカレーの作り方だけにして


テーナガエビの泥を吐かせる方法をレシピに書かなければ、ある程度の優位性は確保されるだろうけどな。


まぁレシピの販売開始日を30日後とかにして、その間にボルト君には稼ぎまくって貰うのが落としどころだろう。


さてさて


頑張ってテーナガエビカレーを売って


ガンガン稼ぎまっせ♪







つづく。

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