第569話 神 その2

創造神様にテーナガエビもお供えしたし、浮島に行って夕食の準備でもしようか、、、なっ?!


回れ右して教会の出口に向かおうとしたら、シスターさんや教会に来ていた人達が綺麗な心の汗を流して居るではないか!


しかも帰ろうとした俺の事を、全員キラキラした瞳で見つめている。


ぐはぁっ!


そんなにキラキラした瞳を向けられたら、煩悩だらけの俺は消滅してしまう(汗)



「あっ、あの!先程の神々しい光は神様が御降臨成されたという事なのでしょうか?」


「えっと、此の世界を創造って言ってましたから、そうなのかなぁ~?アハハハ」



くっ!


初めてアイドルの握手会に参加した人のような、キラキラした表情のシスターさんに質問されて、乾いた笑いしか出来ないよ。



「またテーナガエビをお供えすれば御降臨して頂けるのでしょうか?」


「そこは神のみぞ知るところでしょうから、私には分かりません。

ただ、お供えしたテーナガエビは泥臭さを無くしたテーナガエビだったので、テーナガエビをそのままお供えしても駄目なんじゃないかなぁ~?」


「そうですか、、、ちなみに、教会に祀っているのはこのまま『神』という事で宜しいのでしょうか?」


「呼び方にはあまり意味は無いと思うので、何でも良いと思います。

大切なのは気持ちですから、まぁどうしても気になるのであれば『創造神様』がお勧めです♪」


「はい、使徒様の仰せのままに。」


「ちょっ、シスターさん?!違いますからね!俺はただの商人ですから!」


「はい、承知しております♪」



あのねシスターさん、素敵な笑顔で言ってくれても、俺の言う事を全然信じてくれてないのは分かりますからね。


ここでシスターさんと押し問答をしても意味は無い。


ならばシスターさんには正直に話して、創造神様を信仰してくれる人を増やそう!



「シスターさん、創造神様は真剣に祈り、敬い、美味しい食べ物をお供えする者を『見て』おられます。

孤児院のボルト君には既に私から美味しいテーナガエビ料理を教えてますから、何か困っているようなら手助けをして頂けると、私も安心して旅立てます。」


「かしこまりました。」


「総ては創造神様の御心のままに」


「はい♪」



うーむ


恋する乙女のようにキラキラした表情のシスターさんに見つめられると、罪悪感が無い訳でも無いような、、、


とは言え


創造神様はちゃんと存在してる訳だし


真剣に祈り、敬い、美味しい食べ物をお供えする者を創造神様が『見て』いるのは事実だから問題は無いだろう。


まぁ創造神様が見ている理由は、お供えされた料理を持ち帰って食べる為だろうけど、誠心誠意祈れば、その祈りは創造神様にちゃんと届くし、宝くじで5万円が当たるくらいの確率で願いを聞き届けてくれるような気がする。


宝くじの種類によって全然違うけど独自の調査によると、1万~3万分の1くらいの確率かな?


この確率なら大きな街でも3人くらいはチャンスがあるはず。


実際にはどうか知らんけど、遠回しにそういう風にしてくれるように提案くらいはしてこう。



教会から出るまでにも、他の3人のシスターさんと、たまたま教会に来ていた人達からの、キラキラした視線が辛かった。


でも俺の隣に居るヨウコさんは胸を張って誇らしげなんだよなぁ。ヨウコさんは神獣で創造神様の使徒と言っても差し支え無い存在だから、当然の反応ではあるのか。



「ナガクラ様、そろそろ日暮れですけど、露店はどうされるのですか?」



あっ?!すっかり忘れてたぁー!


教会から出ると、ちょうど王城の向こうに綺麗な夕陽が沈んで行くところだった。



「よし、露店は明日頑張ろう!その前に、おーいボルトくーん!」



孤児院の前で薪割りをしていたボルト君に声をかける。



「どうしたのシンさん、またテーナガエビ食べるの?」


「食べないけど、ボルト君は仕事する気無い?」


「ちゃんと報酬をくれるなら何でもやるよ!」


「いいねぇ、報酬の確認も大事だけど、同時に仕事の内容も確認を怠らないようにな。じゃないと知らない間に鉱山で働く契約を交わしてたりするぞ」


「え゛っ(汗)」


「あははは、心配しなくても簡単な仕事だよ。今からテーナガエビ捕って来て欲しいんだよ。桶で10杯くらいは欲しいな」


「はぁ~、びっくりしたぁ。それだったらチビ達が夕食用に捕りに行ってるからもうすぐ戻るよ」


「なら桶に水入れて泥吐かしておいてよ、明日の朝受け取りに来るから。報酬は干し芋で良いかな?テーナガエビ1匹銅貨1枚で買い取っても良いよ」


「じゃあ半分は銅貨で貰うのでも良いの?」


「勿論。干し芋は今渡して、銅貨は明日テーナガエビと交換って事で商談成立?」


「うん♪」


「ありがとう。良い取り引きだったよ、前払いの干し芋100枚、よいしょっと、はいどうぞ♪」


「・・・え?」



収納から取り出した干し芋を見てボルト君がフリーズしてしまっているけれど、正当な対価だから遠慮せず受け取ってくれ。


そしたらヨウコさんに転移の魔法で浮島に連れて行って貰って、夕食の準備をしますかね♪






つづく。

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