第568話 神
テーナガエビの唐揚げを持ってさっそく教会にやって来た。
教会の中に入ると、なんと窓に赤とオレンジ色のステンドグラスが入っているではないか!
バルゴ王国だとガラスは高級なお酒の瓶に使うくらいしか無いと聞いていたのに、教会の窓にステンドグラスがあるとは驚いたなぁ。
広さもキャラバンシティの教会の2倍くらいの奥行きがあって、前方中央に設置された女神像が小さく見えるくらいだ。
やはり王都が近いだけあって、国から補助金等が出て、きちんと管理運営されているって事なのだろう。
その証拠に
シスターさんも4人ほど居て、掃除をしていたり、教会にお祈りに来た人達の案内等をしている。
あっ?!
忘れてたけどここは王都が直ぐ近くにある宿場町だ。
という事は祀られている神も、女神様至上主義団体の神殿が大好きな『女神様』という事になるのではないか?
そうだった場合は創造神様宛にお供えをすると、異端者とか言われて魔女裁判的な事になるとかならないとか、、、それは無いか
1年以上バルゴ王国に住んでるけど、信仰の自由はきちんと保証されているように思う。
自由というよりは不干渉と言った方が合ってそうだけど
なんにしても、この教会に居るシスターさん達が『女神様至上主義』だと流石に心証が悪いから、確認はしておこう。
入り口の近くに居た30歳くらいのシスターさんに声をかける。
「すいませーん、ちょっとお聞きしたいのですが」
「はい、なんでしょうか?」
「この教会に祀られているのは女神様ですか?」
「いえ、ここには『神』が祀られております。」
「ん?その祀られている『神』が『女神様』という事ですか?」
「よく勘違いをされるのですけどね、そもそも『神』に性別があるのかどうか分かっていないんです。
ですが初代勇者ヒーロー・サワタリ様が、受勲式の演説で『女神様に感謝を!』と言った事で、教会にある像は女神様という事になってしまったんです」
「へぇー、でもあの像はどう見ても女性ですけど」
「例えば、男性でも女性のような容姿の人は居ますよね?その逆もまた然り。
教会に設置されている像も元々は、男性でもあり女性でもある、性別を越えた存在を表した像なんです。」
そう言われて見ると、中性的な容姿の男性に見えなくも無い、、、のかな?
女神像は両手を胸の前で組んで祈るようなポーズをしているから、胸の膨らみが見えないのも性別を感じさせないようにする工夫なのかもしれない。
「そうそう、ヒーロー・サワタリ様と言えば、教会の隣にある孤児院はサワタリ様から寄贈されたんですよ」
なんと?!
ここでヒーロー・サワタリの名前が出て来るとは思わなかった。
受勲されたって事は何かしら国に貢献したんだろうし、ヒーロー・サワタリが日本家屋のような孤児院を寄贈したのなら、建築スキルでも持ってたのかな?
眠れる森のエルフに『金髪のロン毛でペチャパイじゃなきゃエルフと認めない!』と言った件があって、ミリーさんがめっちゃ怒ってたから
ヒーロー・サワタリの印象は最悪だったけど、中二病を拗らせた失礼なだけの奴では無かったか。
「確認ですけど、女神様を信仰している神殿とポリマの教会は関係が無いという認識で合ってますか?」
「はい、その認識で間違いありません。ポリマの教会はバルゴ公爵家の比護下にありますので」
ほっ
神殿と関係無いなら何処が管理してようともどうぞご自由にだ。
「貴重なお話ありがとうございました。神様にお祈りさせて頂いても良いですか?それとお供えも」
「勿論です。教会は何時でも門を開けておりますから、、、もしかしてお供えはテーナガエビを?」
おっと
シスターさんがお皿の上のテーナガエビの唐揚げを見て、めちゃめちゃ顔をしかめているよ(笑)
「御心配無く。私も神を怒らせるつもりはありません。テーナガエビの泥臭ささを取り除く事が出来たので、感謝のお供えをと思いまして」
「そうですか、、、真剣に祈りを捧げる者に、神が罰を御与えになる事はありません。大丈夫ですよ、私も一緒にお祈りしますから」
おぅふ(悲)
シスターさんは全然俺の事を信用してませんやん。俺の事を見て微笑むシスターさんの優しい表情が辛いです。
「アハハ、どうもありがとうございます。」
女神像、、、じゃなくて神様の像の前に行くと、「どうか神の御慈悲を」とかブツブツ言いながら真剣に祈り始めたシスターさんは放っておくとして
テーナガエビを像の前に置いて、心の中で創造神様に話かける。
(あー、あー、創造神様、美味しいテーナガエビの唐揚げが出来たのでお供えに来ました。)
ビカッーーーーーー、、まっ、眩しい!
「我ハ此ノ世界ヲ創造セシ神ナリ、素晴らしいテーナガエビのお供えに感謝スル」
えぇっ?!
ちょっと創造神さまぁ~、目が開けられないくらいビッカビカに輝きながら降臨するのも、教会の人達に聞こえるように喋るのも全然構わないんですけどね
その喋り方よ
違和感しか無いわぁ~
(やっほぉー、祈りに応えて降臨しましたよぉ~♪)
(えーーーっと、さっきの喋り方は?)
(ふっふっふっ、私は常に学びを忘れない神なのです。ああいう喋りの方が私に祈りを捧げる人が増えると勉強したのです。)
それはいったい何処で勉強した、、、まぁいつものようにちーちゃんさんから聞いたか、地球のアニメかライトノベル小説からなんだろうなぁ~
とにもかくにも、今後は神様に降臨して欲しい人達の手によって、美味しいテーナガエビ料理の研究もされるだろう。
(色々と話したい事もあるので夕食は浮島で一緒に食べましょう♪
私もちーちゃんも浮島なら自由に行き来出来ますから。ではさようなら~)
(あっ、はい、さようなら~)
うーむ、創造神様がどんどん友達化して来てるのが、なんだかなぁ
ただし、俺の隣に居るヨウコさんは、創造神様が降臨している間は相変わらず頭を下げたまま微動だにしていなかったけどな
ヨウコさんと創造神様の心の距離は簡単には縮まるものでは無かったか。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。