第562話 似たもの夫婦と似たもの夫婦(仮)

朝、目が覚めると


おわっ?!


びっくりしたぁ~(汗)


何故か俺の隣でアストレア様が寝ているんだもの、そりゃ驚くって!


昨夜はちゃんと布団を4組敷いてそれぞれで寝たはずなのに、どうして俺の布団に入って来るかなぁ?


こういうのは夫婦でお願いしますよ。


ただ、こうしてアストレア様の寝顔を見ている分には、まさに天使のようで癒されるけどな♪



(おーい、ナガクラさまぁ~、起きてますかぁ~?)



むむっ!


頭の中に直接聞こえるこの声は、ヨウコさんの念話だ。



(ヨウコさん、おはよう。それにしても早くない?)


(いいえ、本日は王都の近くまで行かなあかんのですから、これでも遅いくらいです。という訳で朝食を作って持って来たので開けて下さい)



まだ寝ているアストレア様達を起こさないように布団から抜け出し、リビングに移動して、掃き出し窓のカーテンをシャッと開けると


大きな土鍋を2つ持ったヨウコさんと、ポットと片手鍋を持った料理長のグロリアさんが居た。


掃き出し窓を開けて2人を中に入れてあげると、アストレア様、レヴァティ様、アルテミスさんも目が覚めたらしく、リビングにやって来るところだった。



「土鍋を持ってるって事は炊き込みご飯ですか?」


「ふっふっふっ、ナガクラ様にも喜んで頂ける料理をお持ちしました。ご覧あれ!」


パカッ


ヨウコさんが土鍋の蓋を取ると、中に入っていたのは、、、


「鰻重?!」


「いえ、うなぎのひつまぶしです。朝食ですから出汁をかけて『うな茶漬け』にして食べて頂こうかと」


「おおっ!それは美味しそうだ♪」


「ねぇシンさん、ひつまぶしと言うとグロリアと料理対決をした時に、お藤さんが作ってくれた『ひつまぶしおにぎり』かしら?」


「本来はおにぎりでは無くて、ひつまぶしを4等分にしてから


1膳目はそのまま


2膳目は薬味を使って


3膳目は出汁をかけて


最後は好きな食べ方で


という食べ方をする料理ですね。」


「あらまぁ♪1つの料理で4回も楽しめるのねぇ、、、ところで、グロリアの持ってるポットの中身は出汁でしょうけど、鍋は何かしら?」


「はっ!ヨウコ様に教えて頂き『肝吸い』というスープを作りました。アルテミス様の結婚式の料理候補として持って参りましたので、感想を頂けると幸いに御座います!」



うーむ


初対面の時からグロリアさんの印象がかなり変わったけど、伯爵家の料理長だし色々あるのだろう。



「なぁシン、ひつまぶしというとクムクムを使った料理なのだろう?朝からクムクムはちょっと、、、」



やはりレヴァティ様もクムクム(うなぎ)は苦手だったか。


ほぼ下処理をしてないクムクムを、骨ごとぶつ切りにしてそのまま煮込んだ『クムクムのゼリー寄せ』が、食感も含めて最悪だったからしょうがない。


それに料理対決の時に『ひつまぶしおにぎり』を食べたのが、グロリアさんだけだから、クムクムの味の評価は低いままだ。



「以前までのクムクムは下処理が出来てませんでしたから、今はほぼ別の魚と思って食べるくらいでちょうど良いですね。」


「ヨウコさんが作ったのなら大丈夫とは思うが、今までのイメージがなぁ。アルテミスはどう思う?」


「お父様、嫌なら無理に食べなくても構いませんよ」


「たっ、食べないとは言ってないぞ」



ふふっ


レヴァティ様はよっぽどクムクムを食べたくないんだろうなぁ。


アルテミスさんに同意を求めたけど、あっさり受け流されて、レヴァティ様が少し落ち込んじゃったよ。



「おとうさんもとりあえずひと口食べて判断してください。いただきます。」


「「「「いただきます。」」」」



よし


先ずはうなぎだけを、あーんっ、もぐもぐもぐもぐ、、うっ、旨い!


肉厚なのにふっくらしてて皮もパリッと焼かれてるしで、めちゃめちゃ旨いな♪


恐るべし天然うなぎのポテンシャル!


あっ?!


いかん、旨過ぎてほぼ無意識で完食してしまった。


いったんグロリアさんの作った肝吸いで落ち着こう。ズズッ、、、普通のお吸い物の味だな。


続いて肝をパクッと、、、うん、苦手だ!


うなぎに限らず内臓系はだいたい苦手だから予想通りではある。


ただここではっきり苦手って言っちゃうとグロリアさんが可哀相だよなぁ



「アルテミスさんは肝吸いの味はどうですか?」


「シンさん、耳をこちらに」


「あっ、はい」


「グロリア料理長には申し訳無いのですが、うなぎの肝は苦手かもしれません」



あちゃ~


マジで夫婦揃って申し訳無い。




「これは旨い、グロリアおかわりを頼む!」


「はい!」


「ズズッ、、肝吸いはなんとも落ち着く味が良い!肝も苦味があって旨いし、結婚式に相応しい料理だ。アストレアもそう思うだろう?」


「ええ、これなら問題無いわ♪」


「「・・・」」



レヴァティ様もアストレア様も、うなぎを気に入ってくれたのは良いけれど


『肝吸い』は結婚式に出す料理としてほぼ決定してしまった。


隣に居るアルテミスさんを見ると、『今さら苦手と言えません』という感じで、なんとも言えない表情をしている。


まぁ結婚式当日は、ケイトにでも肝を食べて貰う、、、駄目だな


こんな大人な食べ物はケイトは苦手だろう。


とにかくだ


結婚式当日までに、うなぎの肝が大好きな人を探しておかなくっちゃ!






つづく。

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