第553話 休憩は適度に
「あーんっ、モグモグモグモグ、ズズッ、、はぁ~♪シンさんが居るだけで、ただの野営地も我が家の庭のようね♪」
「当然です。だって私の旦那様なんですから♪」
現在俺達は街道脇にある野営地にトゥクトゥク自転車を停車させて休憩中。
日除けのタープを張り、椅子とテーブルを出して、おやつのカステラと紅茶でティータイムを堪能している。
今回は護衛とメイドの皆さんを含めて全部で20人居るから
スキルの「店」で売っている個室トイレを男性用と女性用でそれぞれ2個ずつと、目隠しのパーテーションも設置してみたら
あっという間に大行列!
護衛とメイドの皆さんは道中全く飲食をしていないから、目的地まで我慢しようと思えば出来るんだろうけど
目の前にトイレがあれば、とりあえず用を足しておこうと思うのは世界が違っても同じらしい。
とくにメイドの皆さんは、草むらで用を足さなくて済むから凄く喜んでいて、もう少し早く気付いてあげれば良かったなと思う。
まぁ気付いた所でどうやってトイレを運ぶんだって事になるんだけど、今ならマジックバッグがあるからそれも解決出来る。
「アストレア様、マジックバッグを差し上げるので、移動の際にはトイレを持ち運んで下さい」
「うーん、今の状況を見るとトイレの重要性は理解するけど、自分で持ち運ぶのは抵抗があるわね」
スキルの「店」で買ったトイレは、使用したら自動で分解して大地の栄養にしてくれる仕組っぽいし、毎回メイドさん達が綺麗に掃除してくれるからとても清潔とは言え、トイレを持ち運ぶのに抵抗があるのは致し方無い。
「不特定多数が使用するトイレですから気持ちは理解します。シンシアさんにマジックバッグを渡して持ち運んで貰うのが1番ですかね?」
「そうね、私からもシンシアにお願いしておくわ」
「せっかくピスケス領に来たんですから近くの街を見て行きたいですね」
「あらあら♪新しく名物になるような物を作ってくれるのかしら?」
「ピスケス領には既に『味噌・醤油・ピスケ酒』があるんで、期待されても困りますよ(汗)」
俺もピスケス領発展の為に、名物になるような料理の1つや2つ作りたいとは思っている
ピスケス領は米と餅米の栽培が盛んだから『煎餅』や『おかき』は必須だろ!
って事でアルテミスさんに相談してみたら、既に似たような物はあるらしい。
しかも『味噌味』と『醤油味』の両方がな!
我が家じゃ煎餅なんて普通におやつで出るし、アストレア様もバリバリ食べてたから領地で試作させて売り出すのは当然だよなぁ。
『炊き込みご飯』とか『焼きめし』なんかの料理も、そのうち誰かが作りそう、、、っていうか既にあるかもしれんから、俺が作るのは違う気がするし
名物作るって難しいなぁ
「シンさーん、そろそろ出発の準備をするわよぉ」
おっと!
色々考えてる間に休憩時間も終わって片付けが始まっているではないか
出発前にメイドのシンシアさんにマジックバッグを渡しておかないとな
「シンシアさーん」
「ナガクラ様、如何されました?」
「マジックバッグを渡しておくのでトイレを持ち運んで下さい。」
「あぁ~、そういう事ですか。アストレア様から『トイレを宜しく♪』とだけ言われて困惑していた所です。」
おーい、アストレア様ぁー!
いくらシンシアさんがアストレア様とずっと一緒に行動してるからって、言葉を省略し過ぎですから。
「それと、おやつのバウムクーヘンとお茶も入れといて下さい。今回は定期的に休憩を挟むんで、移動中でも遠慮無く水分補給はして下さいね」
「「「「「っ?!」」」」」
ムニッ♪フニッ♪ガシッ!
あぁ、うん
メイドと護衛の皆さんが、無言で俺に次々に感謝のハグをして行くって事は、いくらアストレア様が優しいとはいえ、今まで休憩したくても言えなかったんだろうなと思う
だから感謝のハグは喜んで受け取りますけれど、筋肉ムキムキの屈強な男からのハグは、全くテンションが上がらない事を再確認した
爽やかな冬晴れの日の出来事だったとさ。
つづく。
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