第552話 ピスケス伯爵領に行こう♪
「ピスケス伯爵領に向けて、しゅっぱーつ♪」
チリンチリン♪
アストレア様、アルテミスさん、ヨウコさんの3人と一緒にトゥクトゥク自転車に乗り込み、予定通りピスケス伯爵領に向けて出発したものの
やけにスピードが遅くないかな?
電動アシスト機能が付いてるから平坦な街道であれば時速20㎞くらいは余裕で出るはずだけど、自転車に取り付けたスピードメーターは時速13㎞を表示している。
このスピードはママチャリを少し頑張って漕いだら出るスピードだ。
ちなみに自転車の運転手は、アストレア様が連れて来た自転車を漕ぐ専門の人で、競輪選手のような厳つい太股をしたデイブさんという名の18歳の男性だ。
あんな立派な筋肉をしていてパワー不足なんて事は無いはず。
とりあえず俺の目の前に座っているアストレア様に聞いてみよう。
ちなみに今回トゥクトゥク自転車の座席は、新幹線の座席のように2人ずつ向かい合って座るように設置している。
俺の隣はアルテミスさんで、向かい側にはアストレア様とヨウコさんなんだけど、、、
ヨウコさんは出発早々にもふもふキツネ姿になって座席の上で丸くなって寝てしまった。
まぁヨウコさんが神獣って事はアストレア様もアルテミスさんも知ってるし、やる事も無く暇だからしょうがないか。
「あのう、アストレア様って領地に帰る時はいつもこんな感じですか?」
「ええそうよ。運転手のデイブは自転車の運転をする為に専門の訓練をしたから、パワーもスタミナも充分よ。」
「それは安心ですね、アハハハ」
そっかぁ
電動アシストがあるとは言え、大人4人も乗せたら出せるスピードってこれくらいが普通だよなぁ
改めてケイトとニィナが特別だという事が分かったよ。
「おかあさんもアルテミスさんも何か食べますか?紅茶も熱いのと冷たいの両方収納に入れて来たんで、停車せずにティータイムを楽しめますよ♪」
「あらあらあら♪さすが私の息子だわ、権力を撒き散らしてるだけの馬鹿な貴族の子息とはドラゴンとゴブリン以上の差ね」
「おかあさんに改めて言っておきますけど、シンさんは私の旦那様なんですからね!気安く息子などと呼ばないで下さい!」
「ふふっ、アルテミスに怒られちゃったわ♪」
怒られたにしてはアストレア様はめっちゃ嬉しそうなんだよ
アルテミスさんから自然に『おかあさん』と言われた事が嬉しいんだろうな。
最初の頃は『おかあさん』って呼ぶ事に抵抗があったのか凄くぎこちない呼び方だったけど、最近になって自然に言えるようになったんだ。
「あの、私は熱い紅茶が飲みたいんですけど良いですか?」
「勿論ですよアルテミスさん。おかあさんも熱い紅茶で良いですか?」
「ええ、頂くわ」
「はい、どうぞ」
「「んー?」」
俺が渡した物を、アストレア様とアルテミスさんが不思議そうに仲良く首をかしげている姿は見事にソックリだ。
こういう姿を見ると親子なんだなぁと実感する。
俺が2人に渡したのは、今日の為にスキルの「店」で購入しておいた新アイテム『真空断熱ステンレスタンブラー』
付属の蓋にはストローを挿す穴があって、直飲みとストローの2パターンで飲む事が可能だ。
しかも保温も保冷も持続時間は驚異の12時間!
真空断熱ステンレスタンブラー1個1980円。今なら2個セットで3960円!
スキルの「店」に割り引きは無かったよ(悲)
キャラバンシティ周辺の街道はそれなりに整備されているとはいえ、アスファルトの道路とは比べ物にならないくらいにガタガタしているから、熱い飲み物を飲むなんて危険行為は厳禁だ。
このタンブラーなら、一瞬尻が宙に浮くような激しい振動でも簡単に中身が零れるような事は無い。
「2人に渡したのは長時間保温保冷可能なカップです。熱々の紅茶が入っていますから、火傷しないように気を付けて下さい。」
「保温?そういうアイテムもあるのねぇ、いただきます。ズズッ、、なるほど、これなら馬車で移動の時も熱い飲み物が飲めるのね♪」
「はい、お茶を飲むためだけにいちいち停車しなくてもよくなります。あぁ~、メイドさんや護衛の人達にも事前に配っておけば良かったですね」
「あの子達は移動中に飲み食いしないから大丈夫でしょ」
たぶんだけど、メイドさんや護衛の人達が飲み食いしないのは、トイレに行かないようにする為じゃないかな?
俺やアルテミスさんが言えば直ぐにトイレ休憩になるけど、メイドさんや護衛の人達がアストレア様に直接休憩が欲しいと言えるとは思えない。
ちなみに
メイドさんと護衛の人達は、俺達が乗っているトゥクトゥク自転車の前後2台に分乗していて、合計3台のトゥクトゥク自転車で移動している。
チラッと皆さんの表情を確認してみると、、、
なんとなく皆さんが俺に何かを訴えているような気がする。
詳しい事は分からないけど、いったん停車して休憩にした方が良さそうだ。
つづく。
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