第550話 シン・ナガクラのお仕事 その３
「ちーちゃんとふーちゃんさんはどのケーキが良いですか？」
「ウチらも選んでええの？」
「勿論です。こういうのは皆で協力した方が楽しいですから」
「せやったらコレが食べたいなぁ♪」
「どれどれ、、、『カーディナルシュニッテン』ですか、作り方も意外とシンプルみたいですから良いですよ。」
「やったぁー♪ありがとうなぁ」
ちーちゃんさんが選んだ『カーディナルシュニッテン』とは
メレンゲとジェノワーズという２種類の生地を交互に並べるように絞り袋で出して、焼き上がった生地にコーヒー風味のクリームを挟んだ横に長い長方形のケーキで
２種類の生地を並べて焼く事で縞模様の生地になるのが特徴の、オーストリアではポピュラーなケーキだ。
「ちなみにカーディナルシュニッテンを選んだ理由ってあるんですか？」
「前に食べたザッハトルテが美味しかったから気になっててん」
なるほど
ザッハトルテもカーディナルシュニッテンも、オーストリアのケーキだから気になるのは当然か。
美味しく作る自信はあるけど、元日本人の俺には本場オーストリアの味は出せないのがなぁ
まぁ１個くらいスキルの「店」で買ったケーキがあっても良いよな。
「ふーちゃんはどのケーキにします？」
「私はお任せします。どんなケーキを作るのか待ってるのも楽しいですから」
「了解でーす。」
と言ってはみたものの
お任せが１番困ったりする(笑)
まだ作った事の無いケーキは沢山あるから、、、
『ニューヨークチーズケーキ』か『バスクチーズケーキ』にチャレンジしてみよう！
これで結婚式までに準備しなきゃいけない事は全部終わっ、、、てねぇーよ！
重要な事をすっかり忘れてたわ！
「ペトラ様の御家族っていつ頃こっちに来られるんですか？」
「うーん、数日前に出発してる筈だから、１７～２０日後くらいかしら？」
「結構かかるんですね」
「シンさんみたいに気軽に他の貴族が治める領地に行って帰ってくるとか無理だからね？これが普通だから！」
最近はパラシュートを使って一気に飛んで移動してたからすっかり忘れてたけど、馬車の移動距離は１日で約２０㎞なんだよな。
スコーピオン公爵領はバルゴ王国の西部に位置していて、王都ベルチカを通ってキャラバンシティのある東部地方に来ないと行けないから、かなりの長旅になる。
普通に街道を通って来るなら約４００㎞、東京→大阪くらいの距離があるから、そんな距離を馬車に乗って来るとかマジで大変だなと思う。
ペトラ様もお見合いの後に１度領地に帰って、またキャラバンシティに戻って来たけど、冷静に考えたらなかなかハードな旅をさせてしまっている。
ペトラ様の御家族がどのような人達かにもよるけど、帰りは俺のチート能力を使うか、ヨウコさんかシエーネさんに協力して貰うかして、スコーピオン公爵領まで送り届けるのも検討しておこう。
そして
スコーピオン公爵御一家の到着予定が結婚式の５日程前
アストレア様に頼まれた、とある御方をキャラバンシティまで護衛して来る依頼も、キャラバンシティ到着予定が結婚式の５日程前
結婚式の準備と同時に年末年始の準備もしなきゃいけないし、アルテミスさんと一緒にピスケス伯爵領に里帰りもしたい。
くっ！
毎度の事ながら、その時のノリと勢いで色々予定を決めてるせいで、スケジュールが一気にギチギチに詰まってしまった（汗）
だがしかし
俺がピンチの時にはいつだってアイツが何とかしてくれて来たじゃないか♪
１番頼りにしていて信頼できるアイツ
そう！
未来の俺！
頑張れ未来の俺！
負けるな未来の俺！
現在の俺は未来の俺を信じているぞ！
ファイッ、オー！
つづく。
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