第549話 シン・ナガクラのお仕事 その2
「あのう、ふーちゃんとちーちゃんさんに話があるんですけど」
「お願いやのうて話があるのは珍しいやん。遠慮せんとなんでも話したってや♪」
「そうですよ。人々の話を聞くのは我々神の、、、今はただの常連客ですが、遠慮せずどうぞ!」
「話というのは、年末にここに居るアルテミスさんとペトラ様と結婚式をするので、ウェディングケーキをどうしようかと悩んでいて、2人の意見を聞きたいなと」
「この前のウェディングケーキは大きくて色んな種類のケーキが食べられて最高やったで♪
ケーキの種類を変えた同じようなん作ればええと思うけど」
「さすがにあのケーキはやり過ぎましたね。全く後悔はしてないですけど、大きさは常識的な範囲にしたいです。」
「ふふっ、ケーキが自重で崩れるからって回復魔法を使っていたものね。」
むむっ!
ふーちゃんまであきれたように笑っている。
あの時は、一世一代の大勝負!って感じで、気合いを入れて三段重ねのでっかいウェディングケーキを作った訳だけど
回復魔法で形を維持しないといけないくらいの大きさは、創造神様でさえあきれる事だったか。
「という訳で、ウェディングケーキのリクエストがあれば教えて下さい。
勿論アルテミスさんとペトラ様も、結婚式で食べたいケーキがあれば遠慮せずどうぞ。お菓子の本も用意したので参考にして下さい。」
「こっ、これは、お宝本や!お宝本がここにある!」
おーい、ちーちゃーん
誤解を招くから、色んなお菓子の写真が載ってるだけの本を『お宝本』って言わないで欲しい。
ーー30分後ーー
「なぁなぁ、アッちゃんはどれが食べたいん?」
「そうですねぇ、コレなんか美味しそうです♪」
「へぇー、変わったロールケーキだけど美味しそうだわ♪ウェディングケーキの候補に入れておきましょう。」
「トラちゃんはとれがええの?」
「、、、ん?」
「ペトラさん、ちーちゃんが食べたいケーキを聞いてますよ」
「あっ、はい!私は、、、コレが食べたいです。」
「どれどれ、、、なんやごっついカラフルなケーキやん。このケーキも候補に入れとこう♪」
お菓子の写真が載ってる本を渡して30分ほど経ったけど、とても楽しそうな4人はいつまで見てても飽きないなぁ♪
そしてアルテミスさんは『アッちゃん』、ペトラ様は『トラちゃん』というあだ名を付けられて呼ばれるくらいには、ふーちゃんとちーちゃんさん仲良くなっている。
ただしペトラ様は素質不足で、ちーちゃんさんから『トラちゃん』と呼ばれても言葉の意味を理解出来て無くて、アルテミスさんが通訳のような事をしている。
ペトラ様の素質も成長させてあげたいけど、いったい何をすれば素質が成長するのかさっぱり分からん。
魔法が使えないメリルが素質ランク第4位で、しかも成長途中らしいから魔法が関係無い事は分かっている。
スキルの「店」で買った食べ物を食べていれば成長するだろうか?
まぁ素質なんてオマケみたいなもんだから、焦って何かをする意味は無い。
「あの、シンさん、ウェディングケーキの候補は選び終わりました。」
「はーい、どれを選んだんですか?」
「私はコレが良いんですけど」
「ふむふむ、、、アルテミスさんは『ブッシュ・ド・ノエル』ですか」
「木に見えますけど外側はチョコクリームなんですよね?」
「そうですね。切り株を模したロールケーキなので作るのも簡単ですし、良いと思います。ペトラ様はどれですか?」
「私はコレ!」
「どれどれ、、、あぁー、コレですか」
「ちょっとシンさん、もしかして駄目なの?」
ぐはぁっ!
ペトラ様が不安そうに目をウルウルさせながら俺を見つめているけれど、煩悩だらけのおっさんには致命傷になる一撃だよ(汗)
ペトラ様が選んだのは色とりどりのマカロンをタワーのように積み上げた『マカロンタワー』と命名されたカラフルなケーキだった。
ただその『マカロンタワー』って、流行に乗っかって写真映えの為だけに作られたケーキじゃないかな?
写真の横の説明書きには
溶かした飴を接着剤にしてマカロンをくっ付けてると書いてあって、ナイフで切るにしろマカロンを1個ずつ手で取りながら食べるにしろ、絶対食べにくいやつやん!
こういう『映え重視』の食べ物は、昭和生まれのおっさんには良さがイマイチ理解出来ないのよ(悲)
とはいえ、マカロンタワーを採用しない選択肢など俺には無い!
「見た目は凄く綺麗ですし、上手に作れるか分かりませんけどチャレンジしましょう。」
「やったぁー♪」
たとえ『映え重視』のケーキであろうとも、ペトラ様の素敵な笑顔が見れたから、俺のやる気も限界突破しちゃうんだぜ♪
つづく。
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