第548話 シン・ナガクラのお仕事

池田屋商会会長としての仕事も終わり我が家に帰って来た俺は、ナタリアさんとタコヤーさんを招待して中庭の屋台を開店している。


今宵のメニューは『博多風もつ鍋』


鶏ガラスープに、牛モツ・キャベツ・ニラ・木綿豆腐を入れて煮込んだ、シンプルかつ王道のモツ鍋だ。


味変用に用意した『おろしニンニク・柚子胡椒・七味唐辛子』は各自お好みでどうぞ♪



そして屋台には欠かせない看板娘は、アルテミスさんとペトラ様なのだが、、、



「さぁさぁ皆様!今宵は旦那様の屋台を楽しんで下さいませ!」


「「「「はーい♪」」」」



何故かペトラ様が凄くやる気を出して接客をしている。


やる気を出してくれるのはとても嬉しいけれど、どういう心境の変化だろう?


とりあえず訳知り顔で横に居るアルテミスさんに聞いてみよう。



「アルテミスさんに聞きたいんですけど、俺が居ない昼間にペトラ様に何かありました?」


「特別な事は何も無かったかと思います。ただ、屋敷の前の通りで子連れの女性を突き飛ばしたゴミを、ちーちゃんさんがズドォーンとゴミ箱に捨てたくらいでしょうか」


「あのねアルテミスさん、それはけっこう特別な事なのでは無いかと思うのですが(汗)」


「シンさんはゴミをゴミ箱に入れる事が特別だと?」


「いいえ!ゴミをゴミ箱に捨てるという行為は、幼い頃に教わる人として最低限守るべきマナーです!」


「ですよね♪」



アルテミスさんが笑顔でいらっしゃる。


それはもうアストレア様に負けないくらいに素敵な笑顔でいらっしゃる(汗)


アルテミスさんから笑顔が消えた時、それは多くの人(9割くらい俺)に、とても悲しい出来事が待っているのだろう。



「皆さんグラスは持ちましたね?では、かんぱい」


「「「「「「かんぱーい♪」」」」」」



ゴクッ、ゴクッ、、ぷはぁっ!


キンキンに冷えたビールで疲れも吹き飛ぶよ♪


だがしかし


今宵の屋台には常連客のふーちゃんとちーちゃんさんも居るというのに、ナタリアさんとタコヤーさんは全く気にする事無く楽しげにお酒を飲んでいるのは何故だ?



「ナタリアさんとタコヤーさんは、ふーちゃんとちーちゃんさんには驚かないんですか?」


「驚かないけど、それがどうしたの?」


「ナタリアさんと同じく、驚くような事では無いと思いますけど」



えぇー?!


いや、驚いて欲しい訳では無いけれど、うっすら光輝いてる人が2人も居たら、普通は驚くよな?



「ナガクラ君がどう思っているのかは知らないけど、君と付き合うのに体がうっすら光っている程度で驚いてたら、やってられないからね」


「隣にドラゴンが座っていたら流石に驚きますけど、体がうっすら光っている程度では驚きようがありませんよ」



まさか神様2人よりドラゴンの方が驚くなんて


そのドラゴンも、今は我が家のみんなと中庭でモツ鍋を食べているんだけどなぁ



「あはははは♪ええやんええやん、この屋台に来る人はおもろい人が多くて楽しいで♪」



おぅふ


ちーちゃんさんに爆笑されてしまった。



「まぁ楽しんで頂けてるなら良いんですけどね。」


「楽しいから皆にウチからお酒を奢りや♪」


「ちょっとちーちゃん!そもそもこの屋台は無料なんだから奢るとか無いでしょ!」


「えぇ~、ふーちゃん、ここはノリが大事な所やん」


「ちーちゃんの言うノリが私にはさっぱり分からないからね」





「ねぇ、ちょっとシンさん!」


「ペトラ様どうしました?」


「どうしたも何も、ふーちゃん様とちーちゃん様が揉めているように見えるんだけど!」



ふむふむ


普通に接客してたから気にならなかったけど、ペトラ様は素質不足でふーちゃんとちーちゃんの会話は理解出来ないんだった。



「いつもの事なので気にしなくて大丈夫ですよ」


「あのねシンさん、ふーちゃん様とちーちゃん様が本気で揉めてるのかどうかは分からないけれど、こういう時はホスト側がさりげなく話しかけて話題を変えるのがマナーよ。

私の旦那様になるんだから、それくらいは覚えてよね。」



なんてこった。


ペトラ様から普通に叱られてしまったよ。


まぁペトラ様は公爵令嬢なだけあって、俺なんかより常識やマナーには詳しいから、教えてくれるのはとても助かる。


そしたらペトラ様のアドバイス通りに話題を変えてみますか。


わざわざペトラ様とアルテミスさんを看板娘にして屋台を開店しているのも、ふーちゃんとちーちゃんに大切な話があったからだし


いざ!






つづく。

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