第546話 会長のお仕事 その3

「カレンちゃん、クッキー食べる?」


「くっきぃ~?」


「サクサクしたお菓子なんだけど、甘い食べ物は嫌いなのかな?」


「んーーーー、木苺より甘いの?」



うーむ、困った。


木苺は食べた事が無いから、甘さ控えめのクッキーより甘いのかがさっぱり分からんぞ(汗)


木苺と言う名前から想像するに、甘酸っぱそうではある。


だがしかし、この世界の木苺が激甘品種の可能性もあるよなぁ


とりあえず同じくらいの甘さって事で大丈夫かな?



「木苺と同じくらいの甘さかな」


「じゃあたべるぅ~♪」


「そしたら、クッキーどうぞ」


「あーんっ、サクサク、もぐもぐ、、、おいちぃ♪サクサク、もぐもぐ、サクサク、もぐもぐ」



ほっ


カレンちゃんにクッキーを気に入って貰えて良かったけど、凄い勢いで食べてるからお腹減ってたんだろうな。


池田屋商会の本店にある食堂は、見習いは利用出来ない決まりになってるから、ダークエルフの皆さんには何か食べ物を差し入れしておこう。



俺は今、ニィナとダークエルフのカレンちゃんと3人で応接室に居る。


ダークエルフの皆さんはさっそく池田屋商会を見学したいと言うので、アルに案内を頼んだんだけど


部屋を出て行く時にカレンちゃんのお父さんが



「カレンよ、しばしここで待て。ダークエルフの未来の為に我らは役目がある。待っている間、カレンも精一杯励むのだぞ!」


「あい!」



というセリフを言ってカレンちゃんを置いて行ってしまった。


他のダークエルフの女性達も、全く心配する様子も無く出て行っちゃうし


2歳の女の子に何をさせたいのか知らんけど、ますますカレンちゃんの将来が心配になるわ!


という事で置いて行かれたカレンちゃんをニィナの膝の上に座らせて、クッキーを食べて貰っている。


ニィナもダークエルフだからなのかカレンちゃんも落ち着いていて、意外と俺の事もすんなり受け入れてくれて良かったよ。


応接室に入って来た時の怯えた目をされたら、俺は立ち直れない所だった。



コンコンコン


むむっ!


どうやら3組目の訪問者が来たらしい。



「はーい、どうぞー」


ガチャ


「「失礼します。」」


「あっ!タコヤーさんにナタリアさん、いらっしゃい♪」



3組目はなんと


エモンズ商会のタコヤーさんと、サウスビーチの薬師ギルドのギルドマスターであるナタリアさんだった。



「池田屋商会に魚貝を持って来たら、ちょうどシンさんもいらっしゃるという事でしたので挨拶に来ました。」


「私はタコヤーさんの自転車に乗せて貰って、ニィナさんに会いに来ただけだったけど、せっかくだし池田屋商会を見学しようと思って、、、出産祝いは後日で良いかな?」


「ちょっと待った!違いますからね、ニィナの膝の上に座ってるカレンちゃんは、新しく商会で雇うダークエルフの子供ですから。

妊娠をすっ飛ばして出産とか無理ですし、仮に最近出産したとしても成長し過ぎでしょうよ」


「いやぁ~、ナガクラ君なら創造神様から直接授かるとかしそうだから」


「確かにシンさんなら有り得る話ですね」



なんてこった。


タコヤーさんとナタリアさんは、俺の事を創造神様の使者とか思っているのだろうか?


あながち間違っていないから、全く反論出来ないのが辛い。



「子供の話はもういいです。

最近のサウスビーチはどうですか?と言ってもしょっちゅう行ってるんで、急に変わったりはしませんよね」


「あははは、シンさんは近所を散歩するようにサウスビーチに来てますからね。特に変わった事はありませんけど、海苔の人気がジワジワ出て来てますね」


「へぇ~、海苔の黒い色が敬遠されて、受け入れて貰えるまでもう少し時間がかかると思ってたんですけど」


「仰る通り、あの色に衝撃を受ける人は多いですよ。でも領主様御一家が好んで食べてますからね、魚のレアステーキを海苔で巻いた『ステーキ巻き寿司』が人気です。」



魚の生食が苦手な人が多いからイメージを変える為に、カツオの身の表面を火で炙った『カツオのたたき』を、サウスビーチでは『魚のレアステーキ』と名付けたんだよな。



「ネーミングはともかく、サウスビーチのオリジナル料理って事ですよね?」


「ええ、さっそくマリーナ様が創造神様にお供えをして、御墨付きを頂いたそうです。」



おおっ!


さすがマリーナ様、俺が居なくても創造神様を降臨させただけの事はある。


我が家に帰ったらさっそく創造神様とちーちゃんさんに、ステーキ巻き寿司の感想を聞かなくっちゃ♪






つづく。

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