第541話 ロマン武器

今俺達はダンジョンの第1階層を探索している訳だが、ここが上級ダンジョンなだけあって


やってくる冒険者もそれなりに経験豊富な人達ばかりらしく、第1階層を探索する人はほぼ居ない。


おそらく、稼げると言われている第3階層までは一気に行くんだろうな。



「旦那様、宝箱を探すにしても手掛りが無いのでは時間がいくらあっても足りないけど」


「心配無用だニィナ。実は俺には『鑑定』以外にも使えるスキルがある。使わなさ過ぎてすっかり忘れてたんだけどな(笑)」



そう!


俺のもう1つの宝の持ち腐れスキル、それは『地図』だ!


陸地の輪郭とか川とかしか書かれていない、ほぼ白紙状態の地図だけど


俺が実際に行った場所とその周辺が自動でマッピングされて、詳細な地図になって行くっていう仕様の地図だ。


本来はダンジョンの内部をマッピングするのに最適な地図なんだろうけど、俺がキャラバンシティからほとんど出ないせいで、完全に無駄になっていた物だ。


だから今さっき久しぶりに見たら、キャラバンシティとサウスビーチ周辺だけ、グー○ルマップに負けないくらい、異常なほどに詳細な地図になっていたよ。



「という訳でニィナ、そこの壁に苔が生えてるだろ?苔から握り拳3個分右の壁を、警棒で叩いて壊してみて」


「拳3個分右、、、っと、行きます。はっ!」



ドガッ!


ガラガラガラガラガラ


崩れた壁の向こうに空間があって小さな宝箱を発見した。


俺の地図に宝箱の表示は無いけど、壁の奥に謎の空間がある事は表示されていたからな。とても簡単なお仕事だよ♪


さっそく宝箱に『鑑定』をかけて危険が無いか調べる。


ふむふむ、普通の宝箱だな。一応ヨウコさんにも確かめておこう。



「ヨウコさん、この宝箱に危険は?」


「ありませんので遠慮無く開けて下さい。」


「それじゃあ開けます。パカッと」



おおっ!


中身は巾着型のマジックバッグだ♪


1発目の宝箱から狙い通りのアイテムが入っていたけど、これって攻略本が無いと完全に運ゲーじゃね?


いや、本物のゲームなら全部の壁を『調べる』くらいは苦も無くやってのけるプレイヤーは沢山居るだろうな。


ただし、ゲームなら1マス毎に壁を1回『調べる』だけで済むけど、現実のダンジョンの壁は地面から天井まで約2メートルある訳で


それらを全て叩いて確かめるとか気が遠くなるわ!


壁の中の宝箱を発見してマジックバッグを見付けた奴が居るかどうかは不明だけど、ダンジョン内でたま~に見かける冒険者の中に、ダンジョンの壁を気にしている奴は1人も居なかった。


まぁ軽く叩いたくらいで崩れるような壁でも無いから、偶然見つけるって事はほぼ無いだろうな。


壁の中以外の宝箱は、地面を這わないと行けないような狭い通路の突き当たりとか、岩の下とかにありそうな気配はある。


壁の中に宝箱があるっていう情報を一般公開した場合、第1階層は壁を叩く人達で大混雑するだろうなぁ


まっ、その辺はステフ様に丸投げだ!



◇ ◇ ◇



第1階層で2個目のマジックバッグを手に入れた俺達は、第2階層に移動してここでも壁の中の宝箱を見付けて順調にマジックバッグを手に入れている。



パシュパシュパシュパシュパシュ!パシュパシュパシュ!パシュパシュパシュパシュパシュ!パシュパシュ!



さっきから『パシュパシュ』音がしているのは、ニィナが第2階層の魔物のコボルトを倒しているからだ。


コボルトって2足歩行する犬のような見た目の魔物なんだけど、常に舌をベロ~ンと出しているせいで涎が凄いんだよ


とにかく近距離でコボルトを倒すと涎が飛んで来て酷い事になる。


そこで俺の作ったロマン武器第3弾の登場だ!



【第1弾】


『ゲパードM1対物ライフル』


遠距離から狙撃するには最高のロマン武器ではあったけど、とにかく大きくて近中距離では使いづらいのが難点だった。



【第2弾】


『コルトパイソン357マグナム(4インチ)』


ロマン武器の王道とも言えるリボルバー拳銃だ。


他にもロマン武器と言えば『ワルサーP38』『マテバ』等々と迷ったけど、女性の笑顔を守るなら『コルトパイソン357マグナム』が最適だろう♪



そしてニィナ専用武器として作ったのが


【第3弾】


『ベレッタm92F、ソード・カトラス』


グリップにある交差した剣とドクロがとても良い!


ニィナには勿論2挺持たせてトゥーハンドでコボルトを次々始末して貰っている。


ニィナの見た目だと『スチェッキン』とか『グロック17』の方が似合っていたかも?という気がしないでもない。



ちなみにロマン武器の弾丸は俺が魔法で作った氷の弾丸だから威力は全部一緒だし、有効射程距離も一律約500メートルとなっている。



「旦那様!これは素晴らしい武器です♪」



おおっ!


コボルトを全滅させて戻って来たニィナが、両手に持った銃を見て目をキラキラさせている。


ニィナは俺の奥さんだから、どんな理由であろうと喜ぶ顔が見れるなら、それは最高に嬉しいけど


武器を見て喜ぶ姿ってのは、他人から見ればけっこうヤバい絵面なのでは?


いや、自衛の為に武器を持つのは普通の世界だからそうでも無いか?



「ナガクラ様、マジックバッグは充分な数が手に入りましたから、そろそろ帰りませんか?」


「そうですね。あんまりのんびりしてると『ケイト・シェラさん・シエーネさん』の問題児トリオが心配だ!」


「あぁ~、普段のシエーネさんは問題など起こさないんですけど、ケイトさんとシェラさんが一緒だと、何故かハメを外すんですよね」


「問題と言っても、つまみ食いを要求するとか、お菓子を沢山食べたいとかだから、あまり気にする事では無いけど、スミレが真似すると困るから」


「スミレさんに影響するなら見過ごせません!」



ふふっ


俺がヨウコさんにスミレを守って欲しいと頼んだけれど、ヨウコさんって本当にスミレを大事にしてくれて感謝だよ。



「さっさと我が家に帰るぞ!」


「「おー!」」






つづく。

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