第539話 親友のなんやかんや
「朝食も食べ終わったし、そろそろ帰るよ。
おっと、言い忘れてたけど、ダンジョンの事で困った時はいつでも駆けつけるから遠慮すんなよ親友!」
「ナガクラ君の気持ちはすっごく嬉しいけど、そこまで甘えられないよ」
「今回のダンジョンに関しては俺が原因だし最後まで責任は持つって。それに、親友へのアフターサービスは無料なんだぜ♪」
「ナッ、ナガクラ君が輝いて見えるっ!もうこれ私がナガクラ君の嫁になる事が1番領民の為になるんじゃない?」
「待て待て!貴族でも無い善良な一般市民を頼りにし過ぎだからね?」
「ナガクラ君は既に一般市民では無いから」
「えぇー?!いや、まぁ、神様関連の事があるんで普通と言えない自覚はあるけど。
辺境伯のステフ様なら、俺より魅力的な相手からの縁談の1つや2つあるでしょ?」
「あぁ~、聞いちゃう?ナガクラ君、それ聞いちゃうの?」
うーむ
ステフ様の表情を見る限り、詳しく聞くと凄く面倒な事になるやつぅー!
「デリケートな問題に俺なんかが軽々しく聞いてごめんなさい。じゃっ、そういう事で帰りまーす。」
「わぁーーー、待って待って!お茶くらい出すから、飲みながら親友の絆を深めようよ!」
「くっ!俺に構わず幸せになれ、親友!」
「ちょっと待ぁーった!
負け戦で敗走する時に、敵の追撃を食い止める殿(しんがり)みたいに『俺に構わず先に行け!』って言われて、『すまん、先に行く!』とはならないからね!」
「チッ、バレたか。上手く行くと思ったんだけどなぁ(悲)
それで、ステフ様に来る縁談は地位や財産目当てで困ってるとかですか?」
「あぁ~、それもあるね。
遊んで暮らしたいだけなら全然構わないんだけど、権力を振りかざしたい人ばかりだから、結婚したら確実に領民に悪影響が出るんだよ」
権力を振りかざす奴が嫌なのは当然だけど、遊んで暮らすのは良いのかよ!
まぁ下手に口を出されるよりは、黙って遊んでくれてる方が面倒は少ないか。
「心中はお察しますけど、結婚は貴族の義務とか聞きますし、このまま独身って訳には行かないんじゃないの?」
「結婚が義務なんじゃなくて、後継ぎを残すのが義務だね。ちなみに私は結婚に興味は無い!」
「ええー?!いや、親族の中から養子を迎えて後継ぎにすれば良いのか?」
「そこが1番悩ましいんだよ。どうも私は歴代当主の中でもかなり優秀らしくて、私の後を継いでも領民に認められる気がしないんだってさ」
へぇー
ステフ様が歴代当主の中でも優秀とか信じられないな。
確かにステフ様の魔法の威力は凄かったけど。
俺が知ってるステフ様は、脳筋で食いしん坊で無邪気で、中学とか高校の時に出会っていたら確実に好きになっていただろうなと思う。
素敵女子ではあるけど、優秀かどうかは分からんな。
「後継ぎに関しては『頑張って』としか言えないけど、近々義父になる予定のスコーピオン公爵に誰か紹介して貰えないか聞いてみようか?」
「スコーピオン公爵とは直接会う機会も少ないから助かるけど、その前にナガクラ君にも頑張って欲しいなぁ」
「何を頑張るんです?」
「養子って事ならナガクラ君の子供が1番だと思うんだよ。創造神様からも祝福されるだろうし、ナガクラ君の才能を受け継いでいるなら領主になる素質は充分だよ♪」
「待て待て。我が子を貴族の養子に出しても幸せになれる気がしないんだが」
「私も無理矢理養子にする気は無いよ。だから奥さん達と子作りを頑張ってくれれば良い。
そしたら1人くらいは自分の意思で私の養子になりたいって子も出てくるって!私も親戚の叔母さんとして子育て頑張るからさ♪」
「親戚じゃねぇーし、そういう頑張りじゃなくて、親族の誰かを後継ぎに相応しく育てる方向で頑張れよ!」
「えぇー!そっちは期待薄なんだもん、無理矢理はしないから良いじゃんかぁー。
ニィナさんも子供は沢山欲しいでしょ?
だからもう少し積極的に攻めてみたらどうかと思うんだけど」
「はっ?、、えっ?、、いや、しかし、私としましては今の関係でも充分と言いますか、、どちらかと言うと旦那様の方から来て欲しいと言いますか、、、(照)」
ぐはぁっ!
ニィナさーん、こんな所で色々ぶっちゃけないでぇー(汗)
もし我が子が本気でステフ様の養子になりたいって言うなら、それを俺が無理矢理どうにかするつもりは無い。
だからこそ
我が子にはいかに貴族が面倒な存在か、きっちりと教えよう誓った、爽やかな冬晴れの朝の出来事だったとさ。
つづく。
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