第530話 友の為にアドバイスを その2
「ステフ様、ぼーっとしてる暇はありません『時は金なり』です!
領地を発展させるには金なんて幾らあっても足りないんですから。」
ステフ様は戦闘以外の事を考えるのがよっぽど苦手らしく、20年後の領地の事を考えていたら、頭がオーバーヒートして思考停止してしまっていたのだ。
「ナガクラ君。私には文官を力ずくで引き抜いて来る事しか出来ないよ(悲)」
「はいはい、泣き言は領地を発展させてからにして下さい。
それと、平和的に文官を引き抜いて来れるなら遠慮無くやっちゃって下さい♪」
「なんだろう、ナガクラ君が姉様に見えて来たんだけど」
「アストレア様は俺の義理の母であり、おかあさんですから、似てて当然でしょう♪」
「えっと、それは当然なのかな?」
「ステファニー様、アストレア様の事は深く考えてはいけません。ナガクラ様、続きをお願い致します。」
ケーニッヒさんは俺の話を一言一句聞き逃すまいと、ペンとメモ用紙を持って準備万端だ。
「今急ぎで必要なのは、卵と牛のミルクの量産体制を整える事ですね。
牛のミルクからはバターが作れるんですけど、卵もバターもお菓子には欠かせない材料なんです。」
「なるほど、しかし今までナガクラ様がレシピ登録された菓子には、バターは使われていなかったと記憶しています。」
ケーニッヒさんの言う通り、今までレシピ登録したお菓子にバターは使って無い。
そもそもバルゴ王国でバターが作られていないんだから、手に入らない材料をレシピに書いても誰も作れないからな。
「色々と事情があるんですけど、今までのレシピは入門編と考えて下さい。
そしてバターを使ったお菓子は、貴族向けの高級品として池田屋商会で売り出す予定ですから、卵とバターは料理人から引く手数多、幾らあっても困る事など無いでしょう。
牛のミルクは日持ちしないという欠点がありますけど、余ったミルクでチーズを作れば無駄も少なく出来ると思います。」
「なるほど、先行投資という訳ですな?」
「正解です♪
仮にバターが売れなくても池田屋商会で全て買い取りますから損はありません。
あとは、保存食のカッチカチパンが不良在庫として倉庫に眠ってるなら、国境の駐屯地に送って下さい。
向こうは当分の間カッチカチパンが人気になるでしょうから。」
「なんとっ?!あのカッチカチパンが人気に?」
「ええ、甘くないフレンチトーストを作ったら好評だったんです。なのでカッチカチパンを在庫として抱えているギルドなり商会なりがあれば、安く買い取って駐屯地に送れば経費削減になります。」
「これはさっそく手配しておきます。保存食のカッチカチパンは、最後の非常食としての需要しかありません。不良在庫として抱えている者も少なくないでしょう。」
「あっ、あのねナガクラ君」
「どうしたんですかステフ様」
「えっと、もうナガクラ君が私の代わりに領主をした方が良んじゃない?」
「ステフ様が求めるなら、アドバイスも支援も惜しみませんけど、領主は断固許否します。
それに俺が領主になるならピスケス領しか無いでしょ?
アストレア様とレヴァティ様の義理の両親と一緒に暮らしながらであれば、領主という面倒な仕事も楽しめる気がします♪」
「そっかぁ、じゃあ私もナガクラ君と結婚すればアストレア姉様が私の義母になるから、問題無くアリエス辺境伯領の領主になれるね♪」
「待て待て待て!その理論、こじつけにも程があるやろ!」
「えぇー?!」
いや、えぇーっ?!って言われましても、困るのはこっちやで。
俺がステフ様と結婚しても婿養子になるだろうし、そもそも俺は平民だから領主として認めてくれるはずが無い。
ステフ様にも幸せな人生を送って欲しいけど、、、
とりあえずアリエス辺境伯領を発展させよう!
そしたらステフ様に結婚を申し込んでくる人も増えるだろうから、いずれはステフ様が惚れるような人も現れるはず!
「あのケーニッヒさん、マジックバッグの入手方法が分かれば、領地発展に役立ちますか?」
「そういえばナガクラ様達は上級ダンジョンをクリアしたのでしたね。
マジックバッグを欲しがる貴族は沢山居ますから、マジックバッグが手に入るなら貴族から依頼を受けた冒険者が殺到するでしょう。
そうなれば冒険者相手の宿、飲食店、娼館等々が出来て自然と町の出来上がりです。
何もしなくとも勝手に領民が増えて町が出来る訳ですから、レアアイテムが出るダンジョンは幾らあっても困りません。
ですが領内にある上級ダンジョンからは、マジックバッグが出るという噂だけで正式な記録は無かったはずですが」
「冒険者に話を聞いたら、マジックバッグを持ってると強奪されるから誰も言わないらしいです。
そのせいでダンジョンを攻略しなくても宝箱からマジックバッグが出る事は知られてませんでしたね。
まぁその事を知ったのはダンジョンを攻略してからでしたけど(笑)」
「ねぇねぇナガクラ君、ダンジョンボスは何だったの?上級ダンジョンだから強かったでしょ?」
ステフ様ごめんなさい。
キラキラした目で聞いてくれたのに、ウォーキングシャークの見た目がキモくて、強いかどうかも分からぬ間に瞬殺しました。
「ダンジョンボスはウォーキングシャークでした。魔物には詳しく無いので強いかどうかはちょっと」
「へぇー、やっぱり上級ダンジョンだなぁ。ウォーキングシャークだと私なら苦戦してたよ」
「えっと、陸を歩くサメって強いんですか?」
「私とは相性が悪いのもあるけど、サメ肌が武器を削っちゃうし口が凄く大きかったでしょ?魔法も武器も丸飲みするから嫌な相手だよ。
ダンジョンの外なら広域殲滅魔法で灰に出来るんだけどねぇ」
二本足で歩くサメがそんなに強かったとは知らなんだ。
確かにサメの皮を使ってワサビをすりおろしたりするけどさぁ、それで武器が削れるとかなんなのよ。
まぁ俺の場合は完全にチート無双だっただけだけど。
ダンジョンの詳細な情報を書いたメモをケーニッヒさんに渡して、これで任務完了!
明日には我が家に帰るから、今夜は皆で打ち上げパーティーで盛り上がるぞぉー♪
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。