第529話 友の為にアドバイスを

コンコン、、ガチャッ



「ステファニー様、失礼致します。」


「ぐぬぬぬっ、、、」



ニィナとヨウコさんは夕食の準備の為に厨房に行ったので、俺は執事のケーニッヒさんと一緒にステフ様の執務室にやって来たのだが


ステフ様は頭を抱えながら書類とにらめっこしている。


机の上には山のように積まれた書類があるから、マジで事務仕事が苦手なのだろう。


まぁこれが本来の領主の仕事だから頑張って欲しい。



「おーい、ステフ様ぁ~」


「ん?ナガクラ君♪

ケーニッヒ、仕事はいったん休憩で良いよね?」


「まぁ良いでしょう。ナガクラ様から領地発展に関わる話もあるそうですから。」


「やったぁー!それでナガクラ君、随分時間がかかったんだね」


「ついでにダンジョンを攻略してたもんですから」


「ダンジョン攻略?!」


「ダンジョンの話は後回しにして貰って、先に話さないといけない事が盛り沢山なんですよ。

先ず最初に、食糧は駐屯地に無事届けました。

ですが、何なんですか駐屯地のあの惨状は!ステフ様は領地を灰にしたいんですか?」


「え?灰?ナガクラ君、ちょっと意味が分からないよ」


「食糧貯蔵室の清掃が杜撰過ぎます。

あれでは創造神様に食べ物を粗末に扱っていると判断されて、天から神の怒りが降り注いで駐屯地が灰になっても文句は言えません。」


「え゛っ(汗)」「なっ?!」



あぁ~


ケーニッヒさんも顔色を悪くして驚いているという事は、向こうに居る人達に丸投げしてたんだろうなぁ。



「そっ、そそそそれは駐屯地の責任者であるリリーボレア騎士爵の責任だから、、、」


「向こうは小麦粉に虫が入っていても気にせず食べる人達ばかりですから、きちんと指導しないと掃除なんてしないでしょうね。

まぁ、その辺はきっちり指導して来たんで大丈夫ですけど、定期的に視察をする必要はあります。」


「「ほっ」」



2人とも安心して額の汗を拭っているけど、今回はマジで危険だったから反省して欲しい。



「次、行きますよ!

駐屯地に居る犯罪奴隷の扱いをどうするかは領主であるステフ様の自由ですけど、犯罪奴隷に効率よく労役をさせたいなら、たまには褒美を出す事も必要だと思います。」


「今でも衣食住は充分に与えているはずだけど、駄目?」


「駄目では無いですけど、皆さん死んだ魚のような目をしてヤル気は完全にゼロでしたね。

まぁ命令には逆らえないから文句は言わないんでしょうけど、効率は最低でした。

国境防衛という重要な任務をヤル気ゼロの人達に任せるのは不安しかありませんよ。」


「くっ!ナガクラ様、この件に関しては私の落ち度で御座います。奴隷は命令に逆らえないからと、誤った認識でした。」


「いえいえ、ケーニッヒさんだけの責任ではありません。実際に直接話をしてみなければ分からない事ですし、リリーボレア騎士爵もヤル気が無いだけなら問題無しとしてましたから。

あとは事務仕事が出来る人を増やすべきですね。ステフ様の影響なのかリリーボレア騎士爵も苦手そうでしたから」




嘘か本当かは知らんけど、小学校4年生レベルの割り算を『こども園』の子供達に教えてただけで、「国を乗っ取る気なの?」ってペトラ様に言われた事があるんだよなぁ


そんな感じだから、事務を専門にする人のレベルも低いし人数も少ないんだと思う。


その証拠にアリエス辺境伯家で事務仕事をしてるのは、ステフ様を除くとケーニッヒさんくらいだ。



「ねぇナガクラ君、これ以上仕事が増えるとたぶん私の頭が爆発しちゃうよ(汗)」


「辺境伯なんだから仕事が多いのは当然です。なので人を増やして仕事を割り振って、負担を分散させて下さい。」


「ナガクラ様の仰る通りで御座います。

ステファニー様、だからあれほど文官を育成する為の予算を下さいと言ったではありませんか!」


「えぇー?!ケーニッヒだって街道整備を優先させるのに納得したじゃん」


「街道整備は確かに最優先事項でしたから、予算を回す事に賛成しました。

ですが、先々を見越して予算の使い道を考えるのが、本来の領主の仕事で御座います。

ステファニー様には10年後、20年後を見据えた領地運営を学んで頂く必要がありますね。」


「流石に10年後を見据えて予算を考えるとか無理です(泣)」



あちゃ~


ステフ様が泣いてしまった。



「色々と言いましたけど、何をするにも先ずは使える予算を増やしましょう。

ケーニッヒさん、マヨネーズとバターをレシピ登録しておいて下さい。

セルジオ料理長が作った『しば漬け』も同時に登録して、派生レシピでタルタルソースの登録もお願いします。」


「おおっ!我がアリエス辺境伯領にもついに、池田屋商会のレシピが登録されるのですな。

今後はアリエス辺境伯領に立ち寄る人も数倍になるでしょう♪」



バルゴ王国では、レシピ登録された地域をその食べ物の『発祥の地』とする考え方があるから、本場の味を求めて商人や冒険者が集まるらしい。


場合によっては大きな商会の支店が置かれる事もあるらしいから、街の発展にはレシピ登録が絶対に必要なのだとか


というような諸々の事を、最近領地運営を学んでいるカスミに教えて貰いました。


カスミが領地運営を学んでいる理由は聞いて無いから知らないけれど、単純にお金を稼げば良いという事では無いんだなぁと改めて考えさせられた


爽やかな冬の日の出来事だったとさ。






つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る