第528話 物流革命への第1歩

すぃーーーっとっと、アリエス辺境伯家の屋敷の中庭に無事着地♪


いやぁ~、疲れたなぁ。


当初は国境の駐屯地に食糧を運ぶだけの簡単なお仕事のはずだったのに、色々あってもうすっかり夕暮れ時だよ。



「おっ!ナガクラ君お帰り。」



ちょうど中庭で作業をしていたのか、両手で大量の草を抱えたヤン先生に声をかけられた。



「ヤン先生ただいま~。凄い量の草ですね」


「うん、冬に備えて中庭で薬草を乾燥させててね、今は回収作業中だよ」


「ほぉほぉ、それならちょうど良いアイテムがあります。食糧を運んだ帰りに上級ダンジョンをクリアして、マジックバッグを手に入れたんです。

容量が100㎏・500㎏・1000㎏の3種類あるんで好きなの1つプレゼントしますよ」


「えぇーーっと、上級ダンジョンって何かのついでに行くような所じゃないんだけど、ナガクラ君だからね。

ちなみにマジックバッグは売れば10年は遊んで暮らせる金額になるけど、知ってる?」


「ええ、荷馬車くらいの容量があれば一生遊べる値段で売れるらしいですね。

このマジックバッグの容量は重さで決まってるんで、軽くて嵩張る薬草を入れるのに便利じゃないですか?」


「そりゃあ薬師の仕事には便利な道具だけど、流石にそんなレアな物は貰えないよ」


「マジックバッグを売るだけなら手に入るのは金貨だけですけど、ヤン先生にプレゼントすればいずれは新たな薬草の発見とか、新薬の開発等で還元してくれるものと信じています。

金では買えない大事な物を手に入れられるなら、マジックバッグをプレゼントするくらい何でもありませんよ」


「ナッ、ナガクラくぅ~ん、あ゛り゛がと゛う゛(泣)」



えぇー?!


突然ヤン先生が号泣してるんですけどー(汗)



「あのヤン先生、泣くような事ってありました?」


「突然泣いたら困るよね。薬師の仕事は直ぐに結果が出るようなものじゃないから、不当に給金を安くされたりとか、ヒドい扱いをされる事も多いんだよ。


ステファニー様は薬師の仕事に理解があるから待遇に不満なんて無いけど、それでも結果は求められる。


薬師ギルドからの支援はあるけど微々たる物だから、薬師としてやっていくのって難しいんだ。


それがだよ!


薬師とは何の関係も無いナガクラ君が、薬師ギルドの幹部より薬師の仕事を理解してるのが嬉しくって、、、くっ!どうしてナガクラ君が薬師ギルドの幹部じゃないんだ(悲)」



組織の上層部と現場で働く人達の認識のズレって、昔からある根深い問題だよな。


俺も池田屋商会会長として、現場で働く人達の意見には真摯に向き合うようにしなければ!



「薬師が大変な仕事だという事は分かりました。100㎏入るマジックバッグをプレゼントするので、これからも頑張って下さい。」


「うん、頑張る!私はナガクラ君の為に死ぬ気で頑張るから!」


「いや、そこはアリエス辺境伯領の領民の為に頑張って下さいよ。俺はその次くらいで大丈夫ですから。

そんな事よりも、早くマジックバッグの所有者登録をして、薬草を入れてみて下さい。ヤン先生の血を1滴マジックバックの中に入れれば良いみたいなので」


「そうだね、ナイフで指先を少しだけプスッと、、、これでよし。ドンドン入れてくぞぉー!」



おおっ!


ヤン先生にプレゼントしたマジックバッグは手の平に乗るサイズの巾着袋で見た目はかなり小さい。


普通の巾着袋なら、二つ折りの携帯電話がすっぽり入るかな?程度の大きさだけど、薬草を巾着袋の入り口に近付けると吸い込まれるように次々に消えていく。



「ヤン先生、マジックバッグの使い勝手はどうです?」 


「ちょっと待ってね、、、んっ?、、、おおっ!適当に入れた薬草が種類別になって数も分かるようになってる!

これなら確かに大金出しても欲しい気持ちは分かるなぁ」



なるほど


これは定期的にダンジョンに行ってマジックバッグを仕入れて、プレゼント用にするのも良いかもしれない。


その前に


ダンジョンをクリアしなくても、宝箱からマジックバッグがドロップするという情報の公開が先かな。


今の荷馬車でチマチマ運ぶやり方は効率が悪過ぎる。マジックバッグの入手難易度が下がれば、物流革命が起きる日も近くなるだろう。



「ナガクラ様、ニィナ様、ヨウコ様、お帰りなさいませ。予想よりも帰りが遅く心配しておりました。」


「すいませんケーニッヒさん。食糧を運んだ帰りに上級ダンジョンに寄って攻略してたものですから。」


「ほぉほぉ、上級ダンジョンと言うとシェラタンの?」


「ええ、そうです。他にも色々とステフ様に話す事がありまして、今ステフ様は仕事中で忙しいですか?」


「いえいえ、ナガクラ様のお陰で当面の問題は解決されましたし、アリエス辺境伯領の更なる発展が見込める最重要案件と判断いたしました。

ステファニー様は執務室にいらっしゃるので参りましょう。」


「はい。」



はぁ~


ケーニッヒさんはマジで優秀だから話が早くて助かるぅー♪


待ってて下さいステフ様!


アリエス辺境伯領の発展の為にも、アドバイスを沢山しますからね♪






つづく。

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