第523話 情報収集

すぃーーっとっと、、無事着地♪


ヨウコさんがマジックバッグが手に入るダンジョンがあると言うので、アリエス辺境伯領の北部、シェラタンという街の近くまでパラシュートで一気に飛んで来た。


いつものように人の居ない森の中に着地してから徒歩でダンジョンに向かうと、5分ほどで崖にぽっかり空いた洞窟に辿り着いた。


この洞窟がダンジョンの入り口らしいのだが、入り口の両脇にはフルプレートアーマーを着た騎士が立っていて、ダンジョンに入る冒険者と思われる人達が長い列を作り、許可証のような物を取り出して騎士に見せてからどんどん中に入って行く。


これはひょっとして勝手に入っては駄目なやつなのでは?



「ヨウコさん、これはダンジョンに入れないんじゃない?」


「ぐぬぬっ!人の分際でダンジョンの出入りを勝手に管理しおって(怒)我の管理する地域で勝手な事は許さん!神獣の怒りを思い知るが」「わぁーー、ヨウコさん駄目だってぇー!」


「ナガクラ様、後生ですから止めないで下さい!」


「いやいやいや、止めるから!」


「しかしですね、本来ダンジョンというのは誰もが自由に出入り出来るものですので、このような事をされては神の御意思に反します。」


「いや、まぁ、これだけ人が列を作ってるって事は人気のダンジョンみたいだし、管理せずに放っておくとトラブルが頻繁に起きて誰も来なくなっちゃうから、それも神の御意思に反するんじゃない?」


「むぅ、、、」



神の怒りだけでなく神獣の怒りにも気を付けなくていけないなんて、トラブルが集まって来るのも『テンプレ展開』って事なのか(悲)



「旦那様、向こうにダンジョンの受け付けらしき場所があります。行ってみましょう。」



ニィナの言う通りダンジョンの入り口から少し離れた場所に簡素な丸太小屋があり、ここでも冒険者らしき人達が列を作っている。


丸太小屋の窓から中を覗くと窓口が3つあって役所のようだ。


それぞれの窓口に並ぶんじゃくて、空いた窓口にどんどん入って行く感じらしく、効率化されていて好印象♪


とりあえず、ここが本当にダンジョンの受け付けなのか列に並んでいるベテランの冒険者っぽいおじさんに聞いてみよう。



「こんにちは、ちょっと宜しいですか?」


「おうっ、どうしたあんちゃん」


「実は初めてダンジョンに来たので何も分からなくて、この列が何か教えてもらえますか?」


「この列はダンジョンに入るのに必要な許可証を発行して貰う為の列だが、あんちゃんそんな事も知らずにダンジョンに入る気かよ。

見たところ装備も無いし冒険者にも見えん、悪い事は言わねぇから帰んな」


「ご心配ありがとうございます。ただ、こっちにも事情がありまして帰る訳にも行かないんですよ。

装備と食料はちゃんと持ってますから安心して下さい。」


「ほぉほぉ、収納持ちか?羨ましいねぇ、それに良く見りゃ美人の姉さんを2人も連れてるじゃねぇか。

あんちゃんの事情に興味はねぇけど、ここのダンジョンはゴブリンやオークも出るから、女連れで入るのは止めといた方が良いと思うぞ」


「こう見えて2人ともオーク程度は軽く倒せますので」


「マジかよ?!それが本当なら俺のパーティーにスカウトしたいくらいだぜ!」


「パーティー?見たところ1人のようですけど」


「今日は許可証を貰うだけでダンジョンに入るのは明日の早朝からだから、他のメンバーは食料の買い出しに行ってるよ。出来るだけ保存食は食べたくないから、保存の効かない食べ物はギリギリに買うのがお勧めだな。」


「なるほどねぇ。ここのダンジョンは凄い人気みたいですけど、稼げるダンジョンって事ですか?」


「あんちゃんは本当に何も知らないんだな。ここは全10階層ある上級ダンジョンだ。

上級だけあって中のモンスターは通常の3倍強いんだが、その代わり質の良い魔石が出る。

まぁ充分に稼ぐ為には3階層から出てくるオークを倒す必要がある。勿論このオークも通常の3倍強い。

後はダンジョンボスを倒すとマジックバッグが出るって噂だ。」


「おおっ!マジックバッグが出るんですね♪でも噂?」


「ああ、マジックバッグは貴族が高値で買い取ってくれるのは知ってるな?

荷馬車くらいの容量のマジックバッグならそれこそ一生遊んで暮らせる大金でだ!


だからこそ一攫千金狙いで冒険者が集まる訳だが、マジックバッグを手に入れたと知られてみろ、奪い合いが始まって今頃この辺りは血の湖が出来てるだろうぜ。


だからマジックバッグを手に入れても誰も何も言わねぇから、このダンジョンでマジックバッグが出たなんて記録は無い筈だ。だから噂なのさ」



はぁ~


恐ろしいわぁ


これってマジックバッグを手に入れても、持ってるのを知られると強奪の危険があるから使えないんじゃない?



「そんな顔しなくても大丈夫だ。どうやらあんちゃんの目的はマジックバッグみたいだから教えてやるよ。」



どうやら不安が表情に出ていたらしく、冒険者のおじさんに慰められてしまった。



「はい、ありがとうございます。」


「気にすんな。それでマジックバッグについてだが所有者登録が出来る、それも1回こっきりのやつな。

1度所有者登録されたマジックバッグは本人以外には中身を取り出せねぇ仕様で、それは所有者が死んでも有効だ。

所有者登録されたマジックバッグは盗まれる心配が無いからこそ、貴族が大金払っても買うんだがな」



へぇ~


マジックバッグがそんな便利仕様になっていたとは知らなんだ。



「貴重な情報ありがとうございます。お礼に池田屋商会の干し芋と干し肉をどうぞ。甘いものが好きならドライフルーツもありますよ」


「あんちゃん、池田屋商会って言ったか?あそこの商品はどれも人気でなかなか買えないから、こんな誰でも知ってる事で貰うには気が引けるぞ」


「まぁ池田屋商会にはちょっとした縁がありましてね、アハハハハハ。それに情報の価値は人それぞれで変わります。

たまたま俺には価値のある情報だっただけですよ」


「ほぉほぉ、若いのに情報の価値を理解してるとは、あんちゃんは長生きするぜ。まっ、そういう事なら遠慮無く貰っておくか。

俺の名はハンス、ダンジョンで困った事があったら相談してくれ。こう見えて冒険者生活20年のベテランだからな♪」



あぁ、うん、ハンスさんがどういう風に他人から見られていると思ってるのかは分からないけど


普通にベテランのおじさんにしか見えないわぁ~


とにもかくにも


いざ


ダンジョンへ!






つづく。


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