第519話 駐屯地改善作戦! その2

「そしたら全員貯蔵室の掃除をしてくれるって事で良いですね?」



シュバッ!


ん?


綺麗に横1列に並んだ10人の奴隷の女性達、その中でリーダーっぽい人が挙手をしている。



「えっと、リアさん、こういう場合はどうすれば?」


「あれは発言の許可を求めてるんだ。許可するかい?」


「はい、許可します。」


「マーサ発言を許可する。」


「あざっす!掃除をしたらさっきの食いもんをまた貰えるって事で合ってるっすか?」


「同じ物を報酬にしても芸が無いんで、何か別の美味しい食べ物を報酬にする予定です。」


「別の?!」


「「「「「「「「「おぅふ(悲)」」」」」」」」」



あちゃ~


見事に全員が落ち込んでしまった。


まぁさっきの焼き栗は素朴な味だけど、甘さも充分あって美味しかったからな。



「オッケー!貯蔵室をピカピカにしたら追加報酬で焼き栗も付けます!」


「あんた達、全員平等にこんなに良い報酬を貰える労役なんてこの先死んでも無い!足の引っ張り合いはするんじゃないよ!」


「「「「「「「「「おうっ!!」」」」」」」」」



さっきまで死んだ魚のような目をしていたのに、皆さんヤル気に満ちた良い表情をしていらっしゃる。



「そしたら全員で、、、掃除するほど貯蔵室は大きく無いな。3人ほど別の仕事をして貰います。貯蔵室はヨウコさんに任せて良いかな?

虫を全部外に追い出して欲しいんだけど」


「お任せあれ!」


「別の仕事をする3人はこっちに集合。」


「「「うっす!」」」



こっちに来たのはマーサと呼ばれていた人族の女性と、熊耳と狼耳の獣人の女性だ。



「では仕事を手伝って貰う前に、リアさーん、貯蔵室にあるアホウ鳥の卵使って良いですか?」



この世界のアホウ鳥はボウリングの球みたいな大きい卵を産む巨大な鳥だ。


駐屯地にはちゃんとした料理人は居ないみたいだし、卵はスクランブルエッグにするかスープに入れるかくらいだろう。


そして貯蔵室にはアホウ鳥の卵が無造作に何個も転がってたから、駐屯地の人達には食べ飽きた不人気食材と俺は予想している。



「1個くらいなら構わんが、飯でも作る気か?」


「お手軽に食事の改善でもしようかと思いまして。どうせ食事は焼いた肉と、野菜をぶち込んだスープくらいなんでしょ?

後は干し芋を食べて空腹を満たすくらい?」


「ふっふっふっ、スープには山で採ったキノコも入れるし、毎朝トウモロコシ粉で薄パンも焼いている。

焼き立て熱々の薄パンなんて、領都の騎士様でもなかなか食えないんだぞ♪」



『どうだ参ったか♪』


みたいにリアさんが胸を張って誇らし気だけど、我が家じゃほぼ毎日色んな種類の焼き立てパンが食卓に並ぶから凄さが全然分からん



「それはスゴイデスネー。とりあえず卵の殻を割って卵白と卵黄に分けましょう。」



ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!


ハンマーでアホウ鳥の卵を叩いて殻を割ると、ドゥルンと中身が出て来た。


卵黄を割らないようにお玉で卵白を掬って卵黄だけにしたら、ここからが本番だ。



「3人の中でパワーとスタミナに自信があるのは誰ですか?」



シュバッ!


ヒグマっぽいふさふさの耳をした女性が真っ先に挙手をしてめっちゃアピールしている。



「えっと、貴女の名前を教えて下さい。」


「・・・」



うーん


ヒグマさんは困ったようにリアさんと俺を無言で交互に見ているけれど、これって発言するのに毎回許可が必要なやつか?



「リアさん、毎回このやり取りするの面倒なんですけど」


「だろうな。私も面倒だと思うが、こいつらに少しでも自由を与えると争いしか産まん。

犯罪奴隷になって強制労働をさせられてるのはそういう奴等なんだ。」


「犯罪奴隷の扱いについて文句を言うつもりはありませんけど、今だけ自由に質問に答える事は出来ませんか?」


「ナガクラさんがそう言うなら構わんが、、、お前達、ナガクラさんの機嫌を損ねると報酬が出ないんだから、発言には気を使えよ?」


「「「うんうん!」」」



奴隷の3人が揃って顔を縦にブンブン振ってるけど、見てるこっちが貧血になりそうだから止めて欲しい。



「許可も出た所で名前を教えて下さい。」


「マーサっす!」


「プゥだ、、です。」


「シーラ」



奴隷のリーダーっぽい人族の女性がマーサさん


ヒグマっぽい耳の女性がプゥさん


狼耳の女性がシーラさん


3人とも長年の奴隷生活のせいか、苦労が顔に張り付いていて年齢不詳だ。


俺の予想は30歳以上、50歳未満って感じ?


笑うと可愛らしい感じはあるけど、基本的に死んだ魚のような目をしてるから判断が難しい。



「じゃあ、プゥさんにはホイッパーを持って貰って、ひたすら卵黄を混ぜて下さい。手を止めると上手く行かないんで頑張って下さい。」


「がっ、頑張る、、です!」


「シーラさんは卵黄に油をすこーしずつ入れて下さい。ちょろちょろって感じで少しずつです。」


「うん!」



2人とも余計な事を言わないようになのか言葉少なくとても簡潔だ。


今から作るマヨネーズを2人が食べた時に、どんな感想が出るか楽しみにしておこう。



「卵黄が白っぽくクリーム状になったら教えて下さい。次!

別にしておいた卵白に俺の手持ちの卵を追加で割り入れて、塩少々と牛のミルクを入れて混ぜる。

リアさん、カッチカチのパンはありますか?」


「カッチカチパンなら腐るほどあるぞ。まぁ腐らないからカッチカチパンなんだけどな、あははははは♪」



笑ってる場合とちゃいまっせ!


腐るほどあるって事は、きちんと食材が使えて無くて無駄にしてるって事になる。


それ即ち神の怒りを買うやつぅー(汗)


だがしかし


不良在庫のカッチカチパンも、今日から大人気食材にしてやるぜ!


ふわぁっはっはっはっはっ♪






つづく。

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