第518話 駐屯地改善作戦!
「リアさん、話があります。」
「私に賄賂を渡すつもりなら無駄だぞ。重要な情報は持って無いし、領主様どころか近くの街を治めてる男爵様にすら目通り出来ないからな。」
あぁ~
リアさんに何か勘違いさせてしまったみたいだけど、庶民派のリアさんは話しかけ易いから、食糧を運んで来る行商人が駄目元で賄賂を渡そうとしたりとかは頻繁にあるんだろうな。
「そういった話ではありません。今から貯蔵室を掃除させて貰いたいだけです。」
「掃除?構わんが、ナガクラさんに何か得でもあるのか?」
「得があるかと言われるとありません。強いて言うなら駐屯地の管理が出来て無いと、ステフ様に文句を言えるくらいですね」
「ステフ?もしかして領主様の事をステフと言ったのか?」
「おっと!ステファニー様と言うべきでしたね。個人的に知り合いなんでついうっかりしてましたよ。今のは聞かなかった事にしておいて下さい。」
「了解した。領主様直筆サイン入りの命令書を持ってるくらいだ、ただの商人で無いとは思ったが、、、ナガクラさんの事も詮索しない方が良さそうだ。アハハハ(汗)」
俺を見てなのか、俺の背後に居るヨウコさんとニィナを見てなのかは分からんけど、リアさんは細かい事を気にするのは止めたらしい。
渇いた笑いが痛々しいよ。
「ナガクラさんお待たせした。とりあえず命令には大人しく従う奴等を集めて来た。全員犯罪奴隷だから遠慮せず使ってくれ」
従者の2人が人を集めて戻ったか。
連れて来られた人達は10人で、全員女性なのはやっぱり少しでもまともに掃除が出来る人を選んだ結果かな?
ムサ苦しい男を相手にしなくて良いのは素直に嬉しいから問題は無いんだけど、全員死んだ魚のような目をして『命令されたら従うしか無いんだから早くしろ』って感じで、やさぐれ感が半端無い。
そりゃあ奴隷は命令には逆らえないように魔法で奴隷紋を刻まれてるし、こんな山奥の駐屯地に連れて来られるんだから、本気でヤバい犯罪を犯した罰で、死ぬまで強制労働をさせられるんだろう。
それを考えたら色々と諦めちゃってやさぐれもするよな。
「えーと、初めまして、皆さんに貯蔵室の掃除を依頼したシンと申します。依頼を受けてくれれば報酬を払いますので、希望者は申し出て貰えますか?」
「ちょっ、ちょっと待ってくれナガクラさん!依頼ってどういう事だ?こいつらは犯罪奴隷だから命令すれば済む」
リアさんと従者の2人が慌てて居るけれど、貯蔵室の掃除は俺が勝手に決めた事だから手伝ってくれるなら報酬を払う必要があるだろう。
「嫌々掃除しても今までと同じ事になりますから、それなら依頼として受けて貰って成果に応じた報酬を払うのが良いかなと」
「「「う゛っ、、、」」」
3人とも心当たりがあり過ぎて返す言葉が見付からない感じかな?
「あぁー、奴隷に金銭の報酬を渡すのって、、、駄目なやつ?」
「旦那様、奴隷に金銭を渡しても使い道が無いので無駄になるかと」
「ですよねー、となると収納に何か、、、コレで良いか♪えーと、今から皆さんに焼き栗を渡します。それを食べて貯蔵室の掃除をしても良いなぁって思ってくれたら依頼を受けて下さい。
そうそう、貯蔵室の綺麗度合によって焼き栗より良い報酬になりますからねぇ。はい、焼き栗どうぞ」
「えっ?!あっ、うん」
1番近くに居た奴隷の女性に焼き栗を渡したら凄く戸惑っているけれど、俺の事を変な奴が来たとでも思ってるのかな?
自分が変だという自覚はあるから気にせず焼き栗を配って行くぜ!
「隣の人もどうぞ、はい、はい、はい、はい、はい、はい、はい、ラストどうぞ。ニィナとヨウコさんもどうぞ。
リアさんと従者の2人はオマケで焼き栗どうぞ」
「おっ、おう」
「「ありがとうございます。」」
「いただきまーす。あーんっ」
焼き栗って美味しいよね♪
秋になったら毎年絶対に天津甘栗を買うくらいには栗好きなんだよ。
しかも今回配った焼き栗は、シエーネさんが浮き島から持って来た栗だから世界最高品質だし
大きさもミカンくらいある巨大な栗だから食べ応えも充分だろう。
「皆さん焼き栗はどうです、、、か?!リアさん、彼女達は何してるんです?」
「あはははは、焼き栗が美味し過ぎたんだよ。人が集まるとどうしても派閥や序列が出来るもんだ。奴隷にゃそういうの禁止してるけど、無言の圧力までは無理だから、皆誰にも取られないようにしてんのさ。
奴隷も旨い食べ物には勝てんか(笑)」
集められた奴隷の皆さんは全員漏れなく焼き栗を一気に口に入れて、ハムスターのごとく頬を膨らましてモグモグしている。
ほへぇ~、っと顔の筋肉が緩んでだらしない顔をしてるから、焼き栗は美味しかったんだろうと思う。
まっ、これで掃除の依頼は受けてくれそうだし、頑張って掃除しますかね。
つづく。
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