第517話 我が心の友の為に

「リアさん、この貯蔵室は何なんですか!カビ臭いにも程がありますし、大きな蜘蛛の巣まであるじゃないですか!」


「換気が上手く出来てなくて少々カビ臭いのは認めるが、食材をカビさせるような事はしてないから安心してくれ。

それに蜘蛛は害虫を食べる益虫だから食材を守ってるとも言えるぞ♪」


「蜘蛛がガッツリ巣を作るくらい虫が大量に出るって事でしょうが!」



はぁ、はぁ、、、駄目だ。


リリーボレア騎士爵は細かい事が気にならない脳筋思考の持ち主だ(悲)



「ナガクラ様、一刻も早くこの状況を改善しないと恐ろしい事になる予感がします(汗)」


「うんうん!」


ヨウコさんとニィナの顔色が悪いという事は、2人も俺と同じく天から神の怒りが降り注ぐ事を危惧しているらしい。



「従者の2人集合!」


「「どうした?」」


「どうした?じゃありませんよ!貯蔵室のあの惨状は何なんですか?」


「何と言われても困るが、リリーボレア騎士爵が言ったように食材をカビさせた事は無いから、まぁ良いかと」


「では聞きますけど、貯蔵室には小麦粉やトウモロコシ粉も置いてありますが、その中に小さな虫が入っていた事はありませんか?季節によっては大量発生した事もあるんじゃないですか?

『粉ふるい』なんて道具も無さそうですから、虫が入ったまま調理してるのでは?」


「「う゛っ、、、(汗)」」



あちゃ~、これは完全にアウトォー!



「ナガクラさんが言うように小麦粉に虫は入ってるが、駐屯地のトップが問題無しと言ってる以上、我々に出来る事は無い。」


「それにきちんと火を通しさえすれば腹を壊した者も居ないしな」


「それって虫入りの小麦粉を使うのは嫌だけど我慢してるだけですよね?ちゃんと掃除してれば防げる事でしょうに」


「「はぁ~~(悲)」」



あらら


従者の2人がとんでもなく深いため息を吐いちゃったよ。



「ナガクラさんとお連れの女性2人には掃除なんて簡単なんだろうが、山奥の駐屯地に配属されるのは基本的に鈍感な奴が選ばれる、何故か分かるか?」


「貯蔵室の惨状を見る限り、神経質な人は1日だってここに居るのを我慢出来ないでしょうね。

私もさっさと帰りたいです!」


「そう言う事だよ。俺達だって掃除くらいするが、食材がカビなきゃまぁ良いかって面倒になっちまう。

そもそもちゃんとした料理や掃除なんて駐屯地に来て初めてやったって奴がほとんどだしな、そんな奴等が嫌々やってたら見ての通りの惨状になるのも当然だと思わないか?」


「言いたい事は分かりますけどね。そこで、現状を変える気はありますか?」


「そりゃあ、出来る事なら食事くらいは虫を気にせず心穏やかに食べたいさ」


「オッケー!池田屋商会会長シン・ナガクラが責任を持って駐屯地の環境を改善します!2人は人を集めて来て下さい!」


「「・・・はっ?」」



従者の2人が『何言ってんだコイツ』みたいな顔をしているけど、神の怒りが降り注いで得する人なんて居ないんだよ。



「ちょっと待ってくれ、ナガクラさん達は食糧を運んで来ただけだろ?」


「それは正しくありません。

私達は領主様が困っているから手伝いに来ただけです。駐屯地の現状は領主様が困る案件だと判断しました。2人は領主様を困らせたいのですか?」


「「いいえ!」」


「では掃除を手伝ってくれる人を集めて下さい。」


「「イエス・アイ・マム!!」」



俺はあなた達のマムでは無い!けれど、原因は俺の背後で殺気がだだ漏れしてるヨウコさんとニィナのせいだろうなぁ


食べ物の扱いが悪いのを許せないのは分かるけど、さっきから俺の背中も凄く寒いのよ(汗)


さてと


従者の2人が人を集めて来るまでにリアさんも説得しないとな。


食糧を運ぶだけの簡単なお仕事だと思っていたのに、とんだ大仕事になりそうだよ


だがしかし


我が心の友の為なら、全力出してやんよぉ!






つづく。


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