第516話 あかーん!
「お待たせした。私が駐屯地を任されている騎士爵のリリアナ・リリーボレアだ。領主様からの命令書を持って来たのは貴殿か?」
「はい。シン・ナガクラと申します。」
駐屯地の建物から出て来たのは、身長160㎝くらいの小柄な女性。
頭の両サイドを刈り上げたベリーショートの茶髪で、半袖シャツにズボンというシンプルな服装をしていて巨乳だ。
シンプルな服装故に胸の膨らみが強調されて目のやり場に困る程度には巨乳だ。
年齢は30歳くらい?
シャツの隙間からチラッと見えるお腹や腕には、軽量級のボクサーのような無駄を削ぎ落としたキレッキレの筋肉が付いていて、騎士と言うよりは歴戦の傭兵感が半端無い。
「ナガクラさんは家名持ちか、だが貴族って感じでも無さそうだな」
「はい、商会を経営しているただの平民です。詳しい事は領主様からの命令書で確認をして下さい。」
「・・・」
まただよ、リリーボレア騎士爵に命令書を渡そうと差し出したのに、無言で見てるだけだ。
「あの、リリーボレア騎士爵、命令書を受け取って頂かないと困ります。」
「あぁ、そうだな。うん!これは本物だ!本物の命令書で間違い無い!」
「待て待て待て!せめて中を読んで下さいよ」
「そんな面倒、、、いや!こんなに上等な紙なんだから本物で間違い無い!」
今はっきりと『面倒』って言ったよな?
リリーボレア騎士爵あんたもかよ
領主がステフ様だからなのかは知らんけど、目の前のリリーボレア騎士爵も含めて事務仕事が苦手な人が多過ぎやろ!
今回は命令書を受け取って中を確認するだけなんだから、それくらいはしてくれよぉー(泣)
「命令書を読まないのは問題になりませんか?」
「ナガクラさんは食糧を持って来たんだろう?それだけで命令書の確認なんか要らん。
しかもこんな辺鄙な駐屯地に命令書を偽造してまで来るメリットも無い、おかしな事をしないように私がナガクラさんを見張ってりゃ済む。」
「分かりました。私が命令書を広げるんでリリーボレア騎士爵は見るだけ見て下さい。」
「ふむ、ナガクラさんは平民なのに細かい事を気にする。それと私の事はリアと呼んでくれ。
数年前までは平民だったんでね、貴族扱いされるとどうにも足の裏がムズムズするんだ。」
はぁ、疲れる
貴族だからって偉そうにされるよりは全然良いけど、まともに相手をしてると時間がいくらあっても足りんから、さっさと食糧を渡して帰ろう!
命令書をバサッと広げて
「はいどうぞ」
「ほぉほぉ、領主様の直筆サインとは驚いた。それとナガクラさんは池田屋商会の会長なんだな。
おたくの商会が売ってる干し芋と干し肉には随分と助けられてるよ♪
ここじゃ食事は保存食がメインだからね、カッチカチのパンと塩辛い干し肉ばかりじゃさすがに士気が落ちる」
「そらそうでしょーね。今回はサービスでドライフルーツとジャムも持って来てるんで、褒美にするなり、リアさんが独占して食べるなり、好きにして下さい。」
「あははははは、賄賂でも無い物を私が独占して良いとか、ナガクラさんは面白い事を言う♪
ジャムが何かは知らんがドライフルーツと一緒に褒美に使わせて貰おう。」
うーむ
騎士爵のリアさんでも未だにジャムを知らないのかぁ
砂糖不使用のジャムはレシピ登録もしてるから、もっと普及してる予定だったんだけど、、、
そもそもの話、料理しない人は新しいレシピが登録されても確認なんてしないし、レシピを買うなんて事もしない
これは元世界のように各地の名産品を集めた『物産展』を開催する必要があるかもしれない。
少なくとも王国十二家の領地では開催したいから、我が家に帰ったら奥さん達に相談してみよう。
「ジャムはあくまでもサービス品なんでお好きにどうぞ。食糧は何処に置けば良いですか?」
「貯蔵室があるから案内しよう。ナガクラさんはもしかして収納持ちかい?」
「ええ、それなりの大きさの物を持っていますけど、他言しないようにお願いします。」
「領主様直筆のサインが入った命令書を持って来る御仁の秘密を喋るなんて恐ろしい事、どんな馬鹿でもやらないよ」
「それなら安心です。アハハハ」
改めて思う。
貴族なんて人種は、はっきり見えないくらいの遠くから眺めてるのがちょうど良いよ。
「着いたよ、ここが食材の貯蔵室だ。ちょっと散らかってるが空いてる場所に適当に置いてくれ」
ガチャッ
貯蔵室のドアを開けて中に入ると、、、
あかーん!
ドアを開けた瞬間からカビ臭いし、天井の隅には特大の蜘蛛の巣があるし、こんな場所に食材を置いとくとか絶対に、あかーん!
冗談抜きのマジであかんやつやでこれは!!
こんな食べ物を粗末に扱ってると受け取られるような場所は、天から神の怒りが降り注いで灰も残さず地上から消されかねん(汗)
俺の大切な心の友、ステフ様の領地の平和の為に
ここは俺がなんとかしてみせーる!
つづく。
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