第515話 仕事のお時間です。
ふぁ~、眠い
現在の時刻は、夜が明けたばかりで辺りもまだ薄暗い早朝
俺はニィナとヨウコさんと一緒にアリエス辺境伯家の庭でパラシュートの準備をしている。
理由としては隣国と接している国境の駐屯地に食糧を運ぶ為だ。
アリエス辺境伯領の領都ガーデンシティから国境までは、馬車で約7日かかる距離だからパラシュートとヨウコさんの風魔法を使ってもそれなりに時間がかかる。
面倒な事はさっさと終わらせてゆっくりしたいから、それなら早朝から行こうって事になった。
「それじゃあナガクラ君頼んだよ。駐屯地の責任者であるリリーボレア騎士爵に、私からの命令書を見せてくれれば問題無いから。
もし彼女がナガクラ君が平民だからって無礼な振る舞いをしたら、遠慮せず殴り飛ばしてくれて良いからね♪」
待て待て待て!
この脳筋辺境伯は相変わらず無邪気な笑顔で恐ろしい事を言ってくれる。
ただ今回は領主であるステフ様からの正式な命令で行くから、そこまで無礼な扱いはされないはず。
たとえ無礼な振る舞いをされたとしても、食糧を受け取ってさえくれれば基本的に無視する方向で大丈夫だろう。
「ゆっくり話しててもしょうがないんで行きますね。ヨウコさんお願いしまーす。」
「はーい」
ブワッ
「「「「「いってらっしゃいませー♪」」」」」
ヨウコさんの風魔法でパラシュートが一気に上昇して、ステフ様や見送りに来てくれたメイドさん達があっという間に豆粒サイズになる。
「さてと、面倒なお仕事は早く終わらせたいから、ヨウコさんちょっと本気出して貰える?」
「お任せ下さい♪せーのっ」
ドンッ!
「ちょっ、わぁーーーーーーーーーーーーーーーー(泣)」
ーー30分後ーー
ぜぇーはぁー、ぜぇーはぁー、、、
「旦那様、大丈夫?」
「うん、もう少しこのままでお願いします。」
「はい♪」
「ナガクラ様が本気と仰いましたので頑張ったんですけど」
「驚いただけだからお気になさらず」
少しでも早く到着する為に、軽い気持ちでヨウコさんに本気を出して貰ったら
まさか風魔法をジェットエンジンみたいに噴射して、雲の上をぶっ飛んで行くとは思わなかった。
お陰で早く到着出来たけど、俺は叫び過ぎて軽い貧血になったからニィナの柔らかい膝枕で休憩中だ。
まっ、貧血なんて物はとっくの昔に回復魔法で治したから元気いっぱいだけどな♪
ニィナの膝枕で休んで精神的にも元気になった所で、国境沿いの山中に建てられた駐屯地に食糧を持って行きますか。
駐屯地と言っているけれどコンビニくらいの大きさの建物が4棟あるだけだ。
大半の人員は国境沿いに建てられた見張り小屋に詰めていたり、巡回警備に出ているから、駐屯地に居るのは責任者のリリーボレア騎士爵と他数名、労役に就いてる犯罪奴隷が数十人らしい。
「そこの3人止まれ!」
むむっ!
ニィナとヨウコさんと一緒に歩いて駐屯地に向かうと、入口付近に立って居た金属鎧をガッチリ着込んだ騎士っぽい2人組の男に止められてしまった。
しかも2人の騎士は手に持った紙の束を高速でめくって何かを確認している。
「お前達は駐屯地に出入りを許された者では無いな。ここは国境防衛の為の駐屯地で部外者の立ち入りは禁止されている。
知らずに来たのならこのまま引き返してくれ。」
この短時間で確認を終えるとかこの2人、なかなかやりおるぞ!
「我々は領主様の命令で食糧を運んで来ました。命令書もあるので駐屯地の責任者であるリリーボレア騎士爵に渡して確認をお願いします。どうぞコレが命令書です。」
「「・・・」」
あれ?
ステフ様から渡された命令書を騎士の男性に渡そうとしたのに、2人とも命令書を見るだけで受け取ってくれないんだけど
「あのう、受け取って頂かないと困るんですが」
「すまん、確認だが君達はアリエス辺境伯家の命令で来たのか?」
「領主様からお願いされたんで、アリエス辺境伯家からって事になるのでしょうか?」
「度々すまない、今のは私の質問が悪かった。あなた達はステファニー・フォン・アリエス辺境伯から直接命令書を手渡されて来た。間違い無いか?」
「はい、その通りです。」
「分かった。直ぐにリリーボレア騎士爵を呼んで来るからしばしここで待っていて欲しい。」
「でしたら命令書を持って行って下さい」
「「無理無理無理無理!」」
「えぇっ?!」
2人揃って全力で首を横に振ってまで拒否する事なのか?
「俺達はリリーボレア騎士爵の従者でしか無いんだ。
王国十二家の一角を担うアリエス辺境伯家当主のステファニー様のような、雲の上の御人からの命令書を直接触るなんて勘弁してくれ(泣)」
あぁ~
騎士爵の従者って事は目の前の2人は平民なんだろうな。
俺はすっかり忘れてたけど、ステフ様って泣く子も黙る王国十二家アリエス辺境伯家の当主だもんなぁ
普通の平民なら、本来は目の前の2人のような反応が正しいのだろう。
だが待てよ
騎士爵って爵位の中じゃ1番下だったよな?
しかも名誉爵位的な位置付けで武勇に優れた平民にホイホイ与えてたとかなんとか、、、
まぁ俺の知識は元世界の、、、っていうかアニメとかライトノベル小説の物だから全然違うかもしれんけど
とにかくだ
リリーボレア騎士爵がステフ様からの命令書を畏れ多くて触れないとか言い出さない事を切に願う。
いやマジで!
つづく。
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